乾燥機+焙煎でどうだ?
水洗いからの食品乾燥機後に焙煎してみる
水洗いからの食品乾燥機後に焙煎してみる
私は焙煎前に生豆を一旦洗っています。それについては焙煎やってみたでその理由とともに紹介しました。焙煎すると香りが飛ぶという指摘もあって,それは実際そう思います。しかし,チャフをだいぶ落とせるのは大きいし,それ以上にやはり汚れを落としたい。生豆はよごれてなんかいないという人もいるかもしれませんが,私が買う安物の生豆を見るとあんまりキレイそうには見えないのです。私はそんなに潔癖症ではないし,床に落ちたものもキレイそうなら食べます。しかし,生豆はなんというか埃っぽいというか,カビっぽいというか,泥っぽいというか... 焙煎しても,なんかそれが味に出ているように思います。もっと言うと,洗ってない生豆を前にこれを洗わずに飲むのかとちょっと躊躇します。カップ・オブ・エクセレンスに出されるような豆であればきっとキレイなのでしょうが,私のようにカツカツの財布の中から生豆を買っている者にはそんな贅沢はできないのです。
ということで,いろいろ突っ込みはありますが,私は洗います,今日もジャブジャブと。
私は洗います
しかし,生豆を洗ってしまうとせっかく乾燥された豆がビチョビチョです。含水量の多い豆をそのまま焙煎すると,高温多湿が長く続き,渋酸っぱくて蒸れた臭いの味のないコーヒーとなってしまします。この理屈は焙煎の化学?から考えたに書きました。かといって短時間で煎り上げようと思うと,中心部分の水分が抜けずに生焼け必至です。こうなるとエグくて飲めません。
洗った後にザルかなんかに上げて一旦水を切ってもだいたい25%の含水量になってしまいます。プロでも含水量の多い豆は煎りにくいと言われますが,それでも高々15%でしょう。室温で25%だといきなりゴム状態からの焙煎スタートです。失敗は目に見えています。
洗って水を切った生豆。含水量25%ぐらい。膨らんでちょっとぶよぶよしています。色もちょっとどす黒い。
洗ってそのまま焙煎:ゴム状態が長くなってしまう.つまりこういうこと?
そこで,一旦低温で焙煎して乾燥させてから,再び焙煎するという方法が田口(2003)に紹介されています。ダブル焙煎というのだそうです。どの程度低温ならよいのかがわかりませんが,あまりに低温で煮豆にならないように,かといってあまり高めでクロロゲン酸を加水分解させてしまわないように,今回は120度ぐらいまで加熱して一旦止めてみました.湯気はかなり出ます.かき混ぜては土鍋の蓋を開け,かき混ぜては蓋を開け,...と水分を飛ばすことに集中します.
豆はうっすらと色づいてカラッとしています.冷ました豆は水洗い後のようにブヨブヨとはしておらず,カチカチになっています.つまり,ガラス状態ということでしょう.
その後再び焙煎を始め,1ハゼ後に焙煎を終了します.
まあまあの出来です.ただ,2回も焙煎するのはちょっと手間ですかね。
ダブル焙煎で一回目の加熱の後。うっすらと色づくまで焙煎して冷ました。冷めたらカラッとしている。
ダブル焙煎:加熱で水分をある程度飛ばして,一旦冷まして再び焙煎すると高温多湿にある時間が短く済む.つまりこういうこと?
要は豆の含水量を下げればいいのだろう,ならば乾燥機を使えばよいではないか... という単純な発想です。
加水分解が進む手前の温度で送風乾燥させて,カラカラにしてから乾燥させれば安心して豆の含水量を下げられる... 通常の11~12%よりもっと乾燥させれば,ゴム状態が極端に短い焙煎が可能となり,ゆっくり温度を上げても加水分解状態に長くいることはない。これは火を通しにくい土鍋焙煎に最適の方法ではないか!!! ...と考えたわけです。
誰もが思いつきそうな単純な発想です。なのですでにやっている人はいるだろうと探してみました。…が,見つかりません。田口(2011)に焙煎前に水分を抜く方法として,時間をかけて生豆を枯らすオールドコーヒーが紹介されていましたが,むりやり乾燥させるとはありません。なぜ乾燥機は使わないのか? なにか拙い理由があるのか? 全然わかりません。でも,とにかくやってみることにしました。
使った家庭用食品乾燥機。
乾燥機+焙煎:食品乾燥機で適度に豆を乾燥させてから焙煎するとうまく焙煎できるのではないか?
ということで洗った豆を家庭用の食品乾燥機にかけました。とりあえずどの温度で乾燥させたらよいか分からないので,食品乾燥機のデフォルトに設定されていた70℃で24時間乾燥させてみました。
カラッカラです。5%まで測れる手元の水分計で測ってみても"LOW"としか出ません。
焙煎してみました。水分が少ないので焦げやすいと思い,ゆっくり35分ほどかけて1ハゼあたりまで焙煎しました。当然ですがほとんど湯気が出ません.火はきれいに通りました.挽いてみたらサクサク挽けました。
淹れてみました。すっきり・・・
ん?すっきりだけど,ただそれだけ。深みも無ければ,香りもない,なんだこのペラペラ感は?笑えるぐらい味がありません.
限界まで乾燥させてしまった.
乾燥させすぎ:あまりにも乾燥させすぎると,雑味はないが,味も香りもありません.ちょっとは加水分解も必要かと思うわけです.
苦味はちゃんとあります。ただしその苦味が「コーヒーらしい苦み」ではありません。おそらくクロロゲン酸ラクトン(CQL)でもなく,ビニルカテコール・オリゴマー(VCO)でもなく,肉や野菜の焦げに近いコーヒーメラノイジンなのではないでしょうか。
香りはほとんどありません。コーヒーらしい香りである2-フルフリルチオール(FFT)もできなかったということ?
旦部(2016)の解説によるならば,水分が少ないので,加水分解が起こらず,渋酸っぱさを生むキナ酸やカフェー酸や,蒸れ臭であるアルデヒド類は生成しなかったものの,多糖類から単糖類,タンパク質からアミノ酸といった変化も生まれなかったため,CQLやFFTやその他香り成分が生み出されなかったということなのでしょうか。ちょっとはゴム状態を通らないといけない...ということですかね。
考えてみればタンパク質は60℃以上で変成するそうで,70℃というのは温度として高すぎるのではないか,そういえば,部屋中に生豆の匂いが立ち込めていた。あれってどういうことだろう?
...などと考えて,おもいきって40℃に下げてみました。これだとちょっと暑い時期の天日干しと変わらないですよね。部屋もあまり匂わない。ケニアのAAを,3日,72時間乾燥させたところ,水分計は5%未満に.35分で低温からゆっくり焙煎.
たまたま沖縄の豆ポレポレの仲村良行さんにお会いする機会があったので,おそれおおいことにカッピングしてもらいました.評価はカロリー不足.クロロゲン酸を焙煎しきれていない,つまり生焼けが残っているとのこと.自分で淹れていると気づきませんが,言われてみると確かにわずかにピリピリっとしたしびれ感を感じます.
そんなはずはない,しっかり乾燥させてから焙煎したのに...と思いながら,そういえば乾燥を終了した時点で,色味的にもうちょっと乾燥させたいと感じたことを思い出しました.しかし,手元の水分計が5%未満を示していたので,前回の乾燥させすぎが怖くてそれ以上の乾燥は避けました.もしかして,水分計が示す値は豆表面で,中心部まではしっかり乾燥していなかった,ということでしょうか.水分計を過信しすぎたミスです.40℃は天日干しぐらいですが,天日干しだと1週間ぐらい乾燥させるわけで3日は短いということですね.パカマラとか薄くて柔らかい豆ならよかったのでしょうが,ケニアAAのような大粒で厚くて堅い豆だったというのもあったかと思います.
あ~,せっかくワールドチャンピョンシップ2位の方にカッピングしてもらったのに,もうちょっとうまく出来たのをやってもらいたかった!!!
40℃で72時間乾燥させた豆。もうちょっと乾燥させたい感じ。
おそれおおいことに沖縄の豆ポレポレの仲村良行さんにカッピングしてもらいました.本当にありがとうございました.
それでは,50℃で3日間ではどうだろう? 70度で半日というのはどうだろう? ...と,乾燥機+焙煎の試行は続けました...
・・・いいと思ったのだが,どんな組み合わせをしてもダメでした。決定的にダメなのはどうやっても味が抜ける!これに尽きます。それも半端なく味が抜けます。洗うことで味が抜けるのは仕方ないとしても,やはり乾燥機で熱風を当てることに無理があるような気がしました。・・・ということで,最近はダブル焙煎に落ち着いています。(結局それかい!)
そのうちこの試行錯誤のまとめ記事をあげるつもりです。