焙煎の記録

土鍋焙煎した豆を紹介していきます。うまいのまずいの書いていきますが,私の焙煎技術と味覚の限界の下での評価なので,全く保証できません。ごめんなさい。

マラウイ ・ミスク農協 ゲイシャ・ニカ ナチュラル

マラウイ共和国は,アフリカ・タンザニアの南に位置する内陸国。同封されていた注文票には,品種名は,ゲイシャとニカと書かれていますが,これがそうとは明記されていません。田口さんの本の系統図のゲイシャには産地としてマラウイが載っているのでそうかもしれませんし,heirloom(在来種いろいろ)かもしれません。

マラウイの話を聞く機会があったので,話ついでに買ってみました。500gで1450円と,うちが買う生豆としてはちょっと高め。豆は比較的きれいで,一部はねましたが,そこそこの歩留まりでした。(焙煎後の重さを測るのを忘れてました。)

購入した業者さんの焙煎済みの豆は中深煎りで提供されているようなので,私も中深煎りで焙煎してみました。30分で180度,10分そのままキープで焙煎止め。ふっくら仕上がりました。丸々っとした豆で良い色です。

やや苦みが強いような気もしますが,酸味もしっかりして深い味がします。渋みや雑味が少なくすっきりです。2022.5.1

ICOデータ: マラウイは東アフリカのアラビカ種産地。1990年ごろは生豆換算で6000~8000トンぐらいの生産量でしたが,2000年代に入ってから急激に生産量を減らし,2000年代後半には1000トンを少し超えるぐらいまで減産。2000年代初頭の第二次コーヒー危機のせいかもしれません。生産量と輸出量がほぼ同じなので,生産量のほぼすべてを生産年内に輸出していると思われます。


ELSaNsプロジェクト

※現在,地球環境学堂の真常先生に引っ張り出されて,マラウイのトイレ建設のプロジェクトに顔を出しています(私が貢献できることはとんどありませんが)。Webサイトができましたので,関心のある方はこちらもどうぞ。

ELSaNsプロジェクト ー 日々の暮らしで肥料をつくり豊かできれいな未来を!

グァテマラ アンティグア ブルボンアラビゴ(ティピカ)カツアイ ウォッシュド

定番のグァテマラ。グァテマラの主産地は8つほどに分かれますが,アンテグアは,その中で最も古くからの産地。標高は1500m~1850mなのでSHB*。そこで2017年から行われているカッピングによる品質統制プロジェクト「ジャスミン」による限定ロット...ということですが,1,821円/kgで売ってくれていました。

グァテマラらしい深い緑の小ぶりの豆です。やや急ぎ気味,20分で180度,8分キープで中深煎りの色づきで終了。固くてしわが伸びにくいと言われるグァテマラですが,ぷくっとかわいらしく煎りあがりました。

今回は欠点豆も少なく,335gから275gができました。

グァテマラの特徴は,一言で言えば,やっぱりバランスだと思います。ブラジルやコロンビアのようにコーヒーコーヒーしてなくて(日本の喫茶店,日本の外食コーヒーの第一波的な味ではなくて?),東南アジアみたいに癖が強くなくて,エチオピアよりも大人しめの味といったところでしょうか(って,わかったような口をきいていますが,今後180度変わる可能性アリ)

私は,初めて行ったロースタリーカフェでは,とりあえずグァテマラを飲んでみます。グァテマラをどう焙煎するかで,そのお店のポリシーが一番よくわかるような気がします。エチオピアとかは,豆の個性が強すぎて,それはそれですが,グァテマラの場合,浅煎りにするか中深にするか,焙煎時間もゆっくりめか早めか,焙煎香を強くつけるか,すっきり仕上げるか,等々,どっちにでも転びそうな気がするからです。

最近浅煎りのグァテマラが多い中で,珍しく中深煎りで,すっきり仕上げているお店がありました。これはと思って,上記のような珍説を語ってみました。ご主人の反応は,ん?という感じでした。ちょっと違うようです。...もうちょっと勉強します。

2022.5.11

ICOデータ:グァテマラは,中米のコーヒーでは最もブランド力の高い産地です。グァテマラも冷戦にもろに巻き込まれた国の1つです。冷戦の終結を受けてなのかどうかはわかりませんが,1990年代は輸出量が飛躍的に伸びます。1990/1991コーヒー年度に生豆換算で2,803千俵だった輸出量は,1999/2000年度には4,901千俵増加まで増加します。75%の伸びです。Cup of Excellence も2001年,ブラジルに次いで2番目に早く開催されました。しかしその年,第二次コーヒー危機へ。2001/2002コーヒー年度には3,330千俵まで減少します。そしてその後回復することなく,途中ハリケーンの被害なども受けながら3,000千俵台を維持しています。

*中米では標高1,200とか1,300メートル以上の豆をSHB(Strictly Hard Bean)といって品質の高さの指標とします。2000/2001コーヒー年度時点で,グァテマラのSHBの比率は45%でした。

ルワンダ ブシュケリWS スカイヒル ウォッシュト

はじめてのルワンダ。ルワンダは,1994年に生じた悲しい出来事から10年ののち米国の支援で第1号のウォッシングステーション(WS)を建設しました。世界では9番目,アフリカ大陸では最初の Cup of Excellence の開催国となっています。

1Kg 1800円ぐらいのものでしたが,キレイな豆でした。3回に分けて焙煎しましたが,中深から深煎りぐらいで本領を発揮するような気がします(たぶん)。ややとろみのある口当たりに,ふわーっとしたまろやかな苦み後口に少しだけ酸味が残る,といった感じでしょうか。1回は浅めに焙煎してみましたが,なんか,もうひとつ花開かない,といった感じでした。テイスティングの表現として,適切かは分かりませんが...

2022.6.18

ICOデータ:生産量・輸出量ともに300千俵前後で変動しています。1994年は生産量で22千俵,輸出量で30千俵まで落ち込みました。ルワンダは,第一次世界大戦後,ドイツからベルギーに統治が移り,そのコーヒー政策は良質のコーヒーの生産を奨励するようなものではなかったのですが,2000年初頭には,コーヒーは復興のシンボルとなり,世界の目がルワンダに集まったのだとか。

▼コーヒーの評価用語について

テイスティング用語はよくわかりませんが,World Coffee Research が Sensory Lexicon という用語辞典を出しています。図案化したものもありますが,こいつは$20で売っています。英語はちょっと…なので,日本語で...と思ったら,日本コーヒー協会がコーヒーの評価用語一覧をちゃんと準備してくれていました。

コスタリカ タラス地区 カトゥーラ・カトゥアイ ハニープロセス

2022年11月のサッカーのワールドカップの1次リーグで日本と対戦すると聞いてコスタリカを買ってみました。1kgで1500円台で安かったのですが,欠点豆が多かったですね。豆も少し小さめ。いつもなら1kgを3回に分けて焙煎しますが,生豆をハンドピックしていたら,あまりに少なくなったので,今回は1回に500gを使いました。焙煎後重量を測ったら311g。う~ん,なかなかです。

コスタリカは,パルプトナチュラル製法で有名です。コーヒー豆は,チェリーと呼ばれる赤い果肉に覆われ,さらにパーチメントというヌメリがあって,それら取り除く必要があるようです。果肉をつけたまま乾燥させるのが「ナチュラル」,すぐに器具で果肉を取り除いて発酵させてパーチメントを洗い流すのが「ウォッシュト」。ナチュラルは,エチオピアなどで古くからおこなわれている方法で風味がよいのですが,欠点豆が入り込みやすく品質管理がたいへんなのだとか。ウォッシュトは品質管理はやりやすいですが,パーチメントの発酵が行き過ぎるといやな風味になる場合もあったりするそうです。しかも,水をやたらと使うので水が豊富でないとダメだし,洗浄液の環境負荷もあるみたいです。パルプトナチュラルは,セミ・ウォッシュトとも呼ばれ,最初はウォッシュトと同じように果肉を取り除きますが,パーチメントは取り除かずに乾燥させるようです。これだと水もそんなに使わないし,品質管理もできます。ブラジルもパルプトナチュラルをやりますが,コスタリカは,パーチメントをどれだけ残すかで特徴があるようで,このやり方が甘い風味を残すというのでハニープロセスと呼ばれたりしています。

生豆にはうっすら膜が張っているような感じがしました。そのまま焙煎すべきなのでしょうが,やはりチャフの飛び散りが怖いので,いつものように洗いました。パルプトナチュラルを洗ってしまったらどうなんだとも思いましたが,風味はすでに豆に移っているだろうと踏んでのじゃぶじゃぶです。最近は,田口氏の言う「ダブル焙煎」をやるようになっていて,朝に水分を飛ばして乾かして,夕方しっかり焙煎しました。甘みを引き出したかったので,乾燥が25分ぐらい,本焙煎も30分ぐらいかけました。乾燥は110度台,本焙煎も185度ぐらいで焙煎。今回はちょっとはぜる音が聞こえました。

そこまで個性は強く出ませんでしたが,すっきりとしたほのかな甘みが感じられました。

ICOデータ:かつては2,000千俵をこえる輸出量を誇っていましたが,2000年代に入ると漸減し,現在は1,000千俵を少し上回るところで落ち着いています。20世紀後半は,多収性品種に傾いたそうですが,近年は品質の良いコーヒーに関心が向くようになったとのこと。かつては,ベネフィッシオという大規模調整工場のブランドで販売されることが多く,コスタリカの個性がわかりにくくなっていたけれど,20世紀半ばから小規模調整工場であるマイクロミルが増加し,コスタリカの魅力を高めているそうです。


エルサルバドル アパネカ=イラマテペク(サン・ホセ農園)パカマラ ウォッシュト

京都のロースタリー COYOTE(コヨーテ)のパーカスがやたらとおいしかったので,自分でも焙煎してみようと生豆を探しましたが,安いのが見つからず,パカマラを買ってみました。

ブルボン系のパーカスとティピカ系のマラゴジッペの交配。マラゴジッペの性質を受け継いだのか大粒で(ハンドピックしたら)きれいです。

最近,やっと低温域での加熱のコツみたいなのがつかめてきました。ネットで焙煎のコツを調べてると,低温で時間をかけて焙煎するとすっきり仕上がるが香りは抜けやすい,高温で短時間でやると香りは残るが雑味やえぐみが出やすい的な意見が多いです。最初は低温でゆっくり,仕上げは高温で短時間がよいと言う人もいる。

しかし,要は豆の中心部の水分を抜くことが肝心のようです。豆の中心部に水分が残っていると,外側ばかり焙煎が進み,中心部分は焙煎が不十分となるそうな。そうなると,外側は苦い,内側は酸っぱエグイ,,,という感じに。う~ん,その感じは今まで何度か味わったような。

生豆の段階でしっかり乾燥していくれたらよいのだが,私の場合,豆を洗っちゃうので,水分含有もへったくれもない。とにかく焙煎前に水を抜かないといけない。これまでは,早く焙煎しないと香りが抜けてしまう!と多少焦っていましたが,最近は,焙煎が進む手前ぐらい(100度ちょっと)ぐらいまでは,弱火でゆっくりゆっくり加熱して,カラッカラにすることにしました。

それから一旦火から下ろし,チャフを振り落としてから,しばらく休ませます。天気が良ければ,外干しすることもあります。鳥に狙われそうでヒヤヒヤしたりしますが...

その後本焙煎。と言ってもやはり最初はゆっくり加熱します。水分をかなり飛ばしたはずですが,土鍋の蓋にはまだ蒸気が。それも出なくなったなと思ったら,だいたい140度ぐらいまで行っています。あとは蓋を開けずにひたすら振ります。

湯気というより煙が立ち上りだしたらハゼも始まります。これでだいたい180℃越え。豆の皺が伸びてなかったら,もう気持ち続けます。ぷくっと膨れていたら焙煎終了...という感じです。

パカマラもパーカス同様ちょとまったりとした感じがします。それでいてすっきりとしていて甘酸っぱくていい感じです。青臭さもえぐみも出ませんでしたね。もうちょっと香りが残らんかなと思いますが,ここらがさらに改善点です。

ICOデータ:グアテマラとホンジュラスに接するエルサルバドルは,1980年から内戦に入ります。不幸な時代ではあったのですが,Hoffman (2018) は内戦がエルサルバドルに「予期せぬ恩恵」をもたらしたと言います。このころ,ブラジルを中心とする世界のコーヒー産地は,風味に優れるブルボンやティピカではなく,病気に強く,多収の 改良品種に移行しようとしていました。内戦下にあったエルサルバドルはこの品種改良が進まず,今でも68%が在来種のブルボンで占められているそうです。

1992年,長く続いた内戦は国連の仲介で終結しますが,コーヒー産業は第一次コーヒー危機の真っ只中。1998年にはハリケーン・ミッチの大規模被害,2000年をピークに第二次コーヒー危機,そして2005年にはサンタ・アナ火山噴火の被害。一時期3,000俵に迫る輸出量がありましたが,現在は500俵前後の輸出量に留まっています。

ベトナム Trịnh Xưa カティモール たぶんウォシュト

ベトナム産の生豆をいただきました。ベトナムと言えば,ロブスタの大産地なので,もしかしてロブスタか?と思いましたが,袋には「100%アラビカ」とあります。よくよく聞けば,カティモールだとか。

カティモールは,カトゥーラとティモール・ハイブリッドの交配種。このうち,ティモール・ハイブリッドは,ロブスタ種とアラビカ種との自然交配です。ロブスタ種(正確にはカネフォラ種)は二倍体でアラビカ種は 四倍体なのだそうで,そのままでは交配はしないはずなのですが,カネフォラ種の四倍体変異種がアラビカ種と交配してしまったのだとか。ティーモール島で発見された交雑種なので「ティモール・ハイブリッド」ということでしょうね。

ティモール・ハイブリッドは,ロブスタ種の性質を受け継ぎ,さび病に強いようですが,いまひとつ美味しくない。そこでアラビカ種のカトゥーラと掛け合わせたということだそうです。

いただいたのは Trịnh Xưa (なんて読むんだ?)というところのカティモール。フエの北西あたりにあり,標高は500~600mぐらいで高くても1000mぐらいのようです。

マラウイ Chitete Misku/Mubula Kasumb Makakege Gesha

ELSaN プロジェクトでマラウイに行っておられた真常先生から今年できた生豆をいただきました。生産者から直接もらったゲイシャだそうで,たぶんウォッシュト。右半分が日なた栽培,左半分が日陰栽培。日陰栽培の方が,環境にはよいのですが,病虫害の管理がたいへんだと聞きました。

新豆だからなのか両方とも水分が多く,水抜きがたいへんでした。特に日陰栽培の方の水分が多く,焙煎で日なた栽培は13%の重量減に対して,日陰栽培は15%の重量減でした。

日なた栽培の方から焙煎してみたのですが,ゲイシャは浅煎りということで,浅煎りを狙ったのですがやや焙煎しすぎた感がありました。日陰は狙ったところで煎り止めできました。

焙煎の程度が違うので単純比較はできないですが,焙煎している最中から明らかに日陰栽培の方の香りがいいなと思いました。評価の高いコーヒーとはのところで,Rainforest Alliance 認証のカップテストの成績がよいという分析結果を紹介しましたが,なんとなく肯ける結果のように思いました.

焙煎はいまいちでした.ゲイシャなので浅煎りしてけど,もしかして深煎りの方が美味しい豆かもしれませn.

それはそうと,やはり水抜きが難しい...,と悩みながら考えました.そうだ!焙煎で水抜かなくても,食品乾燥機で乾燥させてから焙煎させたらどうなんだ! ということで,私の土鍋焙煎も次のステージへ!(笑)

2022.10.30