「見る」(see, watch, look)

「聞く」(listen, hear)

see と watch と lookの違い

「see と watch と look の違いは?」という質問をいただいたので、答えるためにいろいろ調べてみました。

辞書によっては、「watch(動くものを)じっくり見る see(自然と)見える、目に入る look(意識して)視線を向ける」という解説があるようです。一見よさそうですが、see が「(自然と)見える、目にはいる」という解説だけでとらえようとするには無理があると思います。see を使った表現で、「自然と目に入る」状況ではないものをあげてみます。

・Can you see the dog over there?

・I can see some little fish swimming about in the water.

↑「can couldとともに用いられると見ようとする努力が示される」(Bookshelf)

・Let me see your passport.

・See how I operate this machine.

・Go and see if the door is locked.

・I’m going to see a baseball game.

3つの動詞の違いについては、Bookshelfの解説が分かりやすかったので、引用しておきます。

look, see, watch は同じ「見る」でも次のように意味に違いがある. look は視線を対象の方へ向ける行為であるのに対し, see は視覚上の認知を意味して, 対象が「見える」こと. You look but see nothing. (見れども見えず)のような文に, look と see の違いが端的にうかがわれる. さらに, see は「目に見える」だけでなく「心でわかる」の意味でよく用いられる.殊にあとに節が続くときは必ず「わかる」「知る」の意である. He looked at the sky to see what the weather was like. (お天気はどうかと空を見た). watch は時間をかけて, 動いている対象や変化が期待される対象を「見ている」の意である. ウサギが逃げ込んだ穴を, ウサギがまた出てこないかと「見ている」は watch the hole (for the rabbit to come out) といえるが, 美術館で名画に見ほれて, どんなに熱心に長時間見つめていても, これは look at the picture であって, watch the picture とはいえない. なぜなら, 絵は動いていないし, 変化することもないからである。

「seeは視覚上の認知を意味して」というとらえ方は、的確であると思います。

listen と hearの違い

こんなことを考えていると、ふと listen と hearも気になりはじめました。

「listen は『耳を傾けて聞くこと』で、hearは『自然と耳に入ってくること』。だから、英語の聞き取りの問題は、ヒアリングじゃなくてリスニングなんだ」とよく言われます。

私も実は以前はそう信じていました。しかし、look watch see のように考えてみると、hearが、必ずしも、「自然に聞こえる」ときに使われるとは限らないことに気づきました。例えば、騒音のなかで “I can’t hear you.”と言っているときは、相手の言っていることを必死で聞こうとしている状態のはずですし、listen にしても、“I studied English while listening to some music.” の場合は、「軽く聞き流す」程度で、それほど集中して耳を傾けているわけではないかもしれません。

先ほどあげた例のように騒音の中で、“I’m trying to listen, but I can’t hear you!!” と叫ぶ場合、listen を、lookと同じように「対象の方へ意識を向ける」と考えて、hear を see と同じように、「音や相手の言っていることを認識する」と考えると、それぞれの意味が分かるような気がします。

listenやhearをあらためて辞書でひいて眺めてみると、“hear” には「よく聞く、耳を傾ける」という意味があり、“Let’s hear his explanation.”という例文があります。ただし「この意味では listen toが一般的」という解説もあります。

see や watch にしても、“see”の「<テレビ・映画を>見る」の意味には「この場合はwatchが一般的」という解説があります。このようになると、「対象の方へ意識を向ける」とか「認識する」といったことは関係なく、むしろ「“動詞”と“名詞”の結びつき」というCollocationsとして考えるほうがよいのかなとも思います。

まとめ

同じような意味の単語でも、意味が重なる部分もあれば、大きく異なる部分もあります。see には「見る」という意味はありますが、「わかる」「見物する」「面会する」などlookやwatchにはない意味もあります。hearにしても、「聞く」という意味の他に、「うわさに聞く」「便りがある」「審問する」のようにlistenにはない意味もあります。

「この語は~で、この語は…」と割り切れることもありますが、あまりそれに振り回されずに、文脈やコロケーション(語と語の結びつきの相性)でどの語が適切かを判断していくことが大切なような気がします。