nought vs zero

平成12年6月12日ごろからしばらくの間、某出版社の編集部と某大学の先生と私の間で以下のようなメールのやりとりをしていました。何はともあれご一読ください。

私→出版社

こんにちは。今日、Teacher's Manual (2年生用) P90の nought に関する説明を読んでいて気になることがありました。次の解説です。

「...の場合は、six [ou] six [ou] two と読みます。数字の0を [ou] と読むわけですが、アメリカでは zero または nought と読むほうがふつうです。...の場合は、three six four, nine seven five eight と読みます。03-364-9578と市外番号がついているようなときは、[ou] のあとにポーズを置いて three six four ... と続けます。この場合アメリカでは [ou] の変わりに zero または nought を使うことはいうまでもありません。」

このように堂々と断言されていますが、nought は、アメリカではなく、主にイギリスで使われているはずです。複数の辞書で確認しましたが、いずれも「主に英」という解説をしていますし、私の経験からしてもBBCなどのイギリス系の番組からよくこの nought を聞きます。ご確認ください。それでは。


出版社→私

お答が大変遅くなってしまい誠に申し訳ございません。著者に確認いたしましたところ先生ご指摘の見解通りでした。著者より以下のような訂正案がまいりました。

「この場合は,six[ou] six[ou] twoと読みます。数字の0を[ou]と読むわけですが,アメリカではzeroと読むのが普通です。

...この場合アメリカでは[ou]の代わりにzero と読むのが普通です。」

編集部といたしましては,増刷の際に上記記述に変更させていただきたいと存じます。

今後このような遺漏がないよう,期していきたいと存じます。今後ともご教授.ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


私→出版社

昨日はご返事いただきありがとうございます。以下のような回答をいただきましたが、訂正案も非常にmisleadingではないでしょうか。

『この場合は,six[ou] six[ou] twoと読みます。数字の0を[ou]と読むわけですが,アメリカではzeroと読むのが普通です。...この場合アメリカでは[ou]の代わりにzero と読むのが普通です。』

さて、このように「アメリカでは[ou]の代わりにzero と読むのが普通です」と述べる根拠は何でしょうか。アメリカなどで電話番号やホテルの部屋の番号などを言うときにかなり[ou]を使います。これは「普通」ではないのでしょうか。改めて、American Heritage、研究社の英和大辞典、OEDなど5種類くらいの辞書で "o" と "zero" を調べましたがどこにも「アメリカでは[ou]の代わりにzero と読むのが普通です」という内容の記述は見当たりません。

「[ou]とも読むし、[zero]とも読む」というふうに記述するほうがよろしいのではないでしょうか。よろしかったら、この記述の著者の方に「アメリカでは[ou]の代わりにzeroと読むのが普通」という根拠を教えていただきたいと思います。また「普通とは何か」明確にしておく必要があると思います。Formal、Informalの次元なのか、Speaking、Writingの次元なのか。

このように質問攻めにしているのは何も「困らせてやろう」とか思っているわけではありません。英語の教科書を出版している会社だからこそ、生徒や英語教師に正確な情報を提供する存在であってほしいと願っているだけです。それでは回答をお待ちしております。

PS ところで「著者」は、どなたなのですか?


出版社→私

お世話になっております。

「著者」の件ですが,小社*****の****大学教授****先生です。なにぶんお忙しい方ゆえ,連絡もあまりとれません。それゆえしばらくお時間をいただきたいと存じます。なにとぞご配慮のほどお願い申し上げます。

(翌日)

お世話になっております。**先生より以下のメールをいただきました。

私の舌足らずな説明でご迷惑をおかけしました。私が申し上げたかったのは,「zeroは[[ou]とも発音するが,アメリカではその代わりに(naughtではなく)zeroと発音する」ということでした。zeroを[ou]と発音しないという意味では決してありませんが,そう解釈されることは当然でした。従いまして,ご指摘のように,「[ou]またはzeroと読むのが普通です」と書くべきでした。

増刷の際には,誤解の生じないような記述にしたいと存じます。今後ともよろしくお願いもうし上げます。


ということで一件落着いたしました。