The Great Vowel Shift

~大母音推移~

Great Vowel Shift ~大母音推移~

中学生に英語を教えていると、例えば、moon を「モーン」と発音したり、blind を「ブリンド」と発音したりするような生徒に出くわすことがあります。こうした読み間違いをして、他の生徒に笑われることが授業中に起こることもあるものです。そんなとき、こんなフォローをしてみてはどうでしょうか。「むかし、moon はモーンだったんだ」と。

“綴りの定着”と“音の変化”

印刷技術が導入される以前は、英語は手書きであったため、地域などによって綴りが異なりました。15世紀に入ると、Caxton という人物がロンドンに印刷技術を導入しました。ロンドンは人口が多く、すでに商業的にも中心的な地域でもあったので、このあたりの East Midland 方言が標準英語となり、“活字” として普及することになりました。こうして、綴り字が定着していきましたが、15世紀から17世紀にかけて皮肉にも音が変化していくという現象が起こりました。この発音の変化が、“The Great Vowel Shift ~大母音推移~”と呼ばれるものです。

どのように発音が変化したのか見てみましょう。まず、「ア→エ→イ」と発音してみてください。そうすると、舌が下から上に移動するのが分かると思います。そして、「オ→ウ」と発音すると舌が少し後ろに移動して、同じように舌が下から上に移動します。大母音推移というのは、簡単に言うと、「ア」が「エ」に、「エ」が「イ」に変わるように、本来の発音から一段階舌の位置が上がる現象のことを言います。「イ」や「ウ」のように、舌の位置が一番上にあったものは、二重母音になり、「アイ」や「アウ」のようになりました。

大雑把に発音の変化を見ていくと次のようになります。 (参照 The great vowel shift)

  • blind ブリーンド → ブラインド
  • sweet スウェート → スウィート
  • clean クレーン → クリーン
  • stone ストーン → ストウン
  • name ナーメ → ネーム → ネイム
  • moon モーン → ムーン

このように、長期間にわたって発音が徐々に変化したにもかかわらず、綴りは昔のままであったことが、「英語の発音」と「綴り」の不一致をもたらすことになりました。この現象の特徴を念頭に置いて、いろいろな単語を見ていってください。まず、"sweet" を「スウェート」のように綴り通りに発音して、次に「スウィート」と実際の発音をしてみて、舌の位置が上がれば、それは、大母音推移によって発音が変わったものだと理解してよいと思います。

The Great Vowel Shift の解説動画もネット上にたくさんあります。そのうちの一つを紹介しておきますので、参考にしてください。

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