ふたつに分けるということ
~six と sex~
six と sex
意味が全く違っても、綴りや発音が似ている単語を調べてみると、語源が一緒であったり、同系であったりすることがあります。
暇なときに、ふと簡単な数字を調べてみようと思い、one の語源から見ていったのですが、six の語源を見て驚いてしまいました(゜o゜)!!
six の語源(研究社 新英和大辞典)[OE six, cog. Du. zes / G sechs / ON sex / L sex / Gk hex / Skr. shash]
ご覧のように six と sex はなんと同系語なのです。sex の語源を同じく「新英和大辞典」で見てみると、[ME, L sex-(us)(原義)division?, f. secare to cut]と書かれています。"division"は「分けること」なので、人間を「性別」で「男と女のふたつに分ける」というのが語源だったのでしょう。ここまではまだ分かるのですが、 さて数字の「6」と男女の性別の「2」はどのようなつながりがあるのでしょう。
6と2のつながり ~semester は 12÷2=6~
これを理解する鍵は "semester" 「セメスター、学期」にあります。"semester" は「(年二学期制度の大学などの)学期」のことですが、これも語源を見てみると、[G, L seme(n)stris six-monthly] とあります。つまり、12ヶ月を前半、後半の6ヶ月単位(six-monthly)で「2つに分ける」のが、"semester" という発想なのです。"seme-"は"semi-"と同じで「半分」を意味し、日本語でも「セミプロ(semiprofessional)」などに使われています。このように考えると、「6」を表す six と、「男と女2つの性別」を表す sex のつながりがはっきりし、同系の語であることが理解できます。
余談ですが、「ベッドのサイズ」に使われる「セミダブル(semidouble)」は和製英語です。semidouble という英語はありはするのですが、「(植)半八重の(外側雄しべだけが花弁状に変形した)」という私には全く理解できない意味で辞書に載っています。まあ、これはおいといて…
ここまで分かると、さらに多くの単語が理解できます。「半分」を表す semi- と「六」を表す sex- を見てみましょう。電子辞書ではなく、本の辞書があると、単語や語源がずらっと並んでいて比較しやすいと思います。難しく、日常使わない語が多くありますが、いくつか関連の語を紹介しておきます。
semi- 「半(half)」「半ば(partly)」「幾分」「やや」を表す
- semiannual 半年ごとの、年2回の - semimonthly 半月ごとの、月2回の
- semiweekly 週2回の - semiautomatic 半自動の
- semibarbarian 半野蛮の - semicircle 半円
- semicolon セミコロン(;)その機能は大体 comma と period との中間 など
sex-、sexi-「六(six)」の意の連結形
- sexagenarian 60歳代の(人) - sexagenary 60の、60ずつで数える
- Sexagesima (Sunday) 四旬節(Lent)前の第二日曜日[L sixtieth day]
- sexangle 六角形 - sexcentenary 600年の
- sexennial 6年に1回の、6年ごとの
- sexfoil 六葉の飾り、植物 - sexisyllabic 六音節の
- sext (カトリック)祈祷の第6時(昔のローマの計時法で正午)
(参照 “at the eleventh hour”とは何時か? ~始まりは朝6時~)
- sextan (熱などが)6日ごとに起こる
- sextant 六分儀 - sextet 六重奏、六人合奏、六つ組
- sextile (天文)互いに60度離れた
- sextuple 六重の、6倍の、(音楽)6拍子の
- sextuplet 六つ子のひとり、6個から成る一団、(音楽)六連音 など
ギリシャ語では hex-, hemi-
最初のに引用した語源をもう一度見てみましょう。次はギリシャ語源(Gk)に注目してみてください。
six の語源(研究社 新英和大辞典)[OE six, cog. Du. zes / G sechs / ON sex / L sex / Gk hex / Skr. shash]
これだけでは分かりづらいのですが、hexagon 「六角形(ヘキサゴン)」という語を見ると、ピンとくるのではないでしょうか。つまり、six、sex、semi-がラテン語源で、ギリシャ語源になると hex- や hemi- になるのです。これも辞書でぜひご覧ください。
hemi- 「半」の意の連結形 [Gk hemi- half; cf. semi-]
- hemialgia (病理)半側神経痛 - hemianopsia (病理)半盲(症)
- hemicrania (病理)偏頭痛 - hemicycle 半円、半円形
- hemihedral (結晶)半面儀の - hemihydrate (化)半水化物
- hemiparasite (生物)半寄生生物 - hemiplegia (病理)半身不随、半身まひ
- hemisphere 半球体(the Northern Hemisphere 北半球)
hex(a)-「六」の意の連結形(母音の前ではhex-)
- hexachord (音)六音音階(cf. heptachord, pentachord)
- hexad 六の数、六の群、六個の一組 - hexaglot 六ヶ国語で書いた、六ヶ国語の
- hexagon 六角形、六辺形 - hexagram 六角の星型
- hexahedron 六面体 - hexamerous 六つの部分から成る
- hexameter (詩学)六歩格 - hexangular 六角の
- hexapla 六ヶ国語対訳書(特に聖書) - hexapod 六本足の
- hexastich (詩学)六行詩、六連詩 - hexastyle 六柱(式)の
- Hexateuch (旧約聖書最初の)六書
その他、英語で"se" で始まる単語を見ていると、語源の中に「分ける」というニュアンスのあるものがあります。例えば、secret には[ME secrete, F secret, L secret-(us), p.p. of secrernere to separate (se- apart+cernere to shift)] という語源が記されています。このように、se- には "apart"「離れて、分かれて」という意味があることが分かります。おそらく、「知っている者」と「知らない者」を分けたのが、「秘密」になったのでしょう。その他、separate「分ける、隔てる」や section「セクション、区分」をはじめ、sever「切 りとる」などの語の se にも「分ける」という感覚があることは容易に想像できます。
「ワンセグ」は、one segment で「一区切り」の意味で、「地上デジタル放送の1チャンネル分放送波の帯域幅を13の領域(セグメント)に分割したうちの一つを利用する」ということのようなので、「ワンセグ(one segment)」の"セ(se)"にも「分ける」という意味が埋め込まれているのです。
こんなことを考えてみながら、辞書の se、semi、hex、hemi を含む単語の意味や語源に目を通してみると、「へ~」と思うことがたくさんあるものです。 ぜひお試しください。