四ツ谷(第一四ツ谷)

血統不明の牝馬。栃木に送られたが出戻りとなった。

馬名:四ツ谷よつや

別名:第一四ツ谷(だいいちよつや)

性別:牝

父:不明

母:不明

毛色:不明

生年:不明(明治年頃と推定)

死年:不明

産地:内藤新宿試験場(推定)

 ■解説

・情報が少なすぎる正体不明の洋種牝馬。

推察出来る事は「名前からして内藤新宿試験場の生まれだろう」という事と、馬籍原簿の「仏蘭西サラブレッド種」の記載からナポレオン三世の馬が両親である可能性が高い、という事だろうか。

第二四ツ谷の両親は「父:武蔵野、母:雉子橋」であるためこの馬とは血縁関係は無い。産まれた場所を名前にしたらダブってしまったので第一と第二にしただけだと思われる。第一東京と第二東京もそんな感じなのだろう。

・明治11年に洋種牡馬のブルドーサー号とともに栃木に送られて繁殖に供されたが、多くの資料で「繁殖はうまく行かなかった」とされている。しかしながら【資料3】では「洋馬3頭を輩出」と記載されており「洋馬の牡牝が各1頭」という環境でこの成果はすこぶる良好な成績と言って良いだろう。よってこの記述には少々不可思議な齟齬を感じる。

・また送られたのは明治14年だという説もある【資料4】。この説では一緒に送られたのは米国産の孔雀号だとしている。よく知られているクジャク号はインド産なのでこの記述は全体的に良く分からないものだと判断せざるを得ない。

・明治15年にブルドーサー号が死亡し、栃木に洋種の牡馬がいなくなってしまった。いなくなってしまったという事は生まれた3頭の洋種産駒は全て牝馬であったという事になるだろう。

・洋種牡馬のいない地に洋種牝馬がいても意味が無いという判断になったのだろう。この時期に(4頭とも?)下総種畜場に引き上げたようだ。

・下総種畜場にて明治16年に「第二クジャク(牡)」を出産。父はクジャクは上記の通りインド産の種別不詳の馬である。

・明治19年の名簿には記載されていないのでそれまでには亡くなった模様。(あるいは再度地方に送られたか)

第二クジャクが血統をつないだため、四ツ谷の子孫もわりと近年まで残っていた。確認できる最後の子孫は「サンライトアトム

・netkeiba.comや血統表検索のサイトでは当該馬の名称は四ツ谷や四ッ谷ではなく「四谷」と書かれている。元となっている資料があると思うのだがそれが何なのかは分からない。

■遍歴

年代不明:日本のどこか(おそらく内藤新宿試験場)で産まれる

・1877(M10)頃:取香種畜場へ移送される。【資料

・1878(M11):栃木県に移送された。【資料2~3(明治14年とする説もある【資料4】)

・年代不明:成績不振に終わり、下総に戻された。(?)

・1883(M16):「第二クジャク(牡)」を出産。(父:クジャク)【資料

・その後は不詳(明治19年の下総の名簿には載っていない)

■資料

【資料】富里村史 史料集 2(近・現代編)

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/9641696/1/375

取香種畜場請求牛馬其他現在畜養頭数調(注:明治11年5月27日現在)

洋種牝馬14頭 米買い入れ7頭、第一四ツ谷、第二四ツ谷、雉子ばし、片見、ハリス、水沢、ヘリー


【資料栃木県史 第9巻

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1246398/1/213

明治11年牝馬四ッ谷号一頭を政府より下付せられ品種の改良を謀ったが飼育管理法とも不十分なので好成績を挙げなかった。明治14年印南丈作、矢板武等を相謀って斯業の拡張を謀る計画を立てたれど治績挙がらなかった。


【資料大田原市史 史料編

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/9643414/1/177

又県庁を経て政府に請願し、純粋洋種牡馬メケベン号(*)、洋牝馬四ツ谷号の2頭を拝借し、巡回交尾の法を設け、結社郡民所有の良牝馬をして交尾せしめ、以来経過すること6ヶ年にして洋馬3頭、二回雑種、一回雑種合計18頭を挙げたるも不幸にして本年度において右拝借のメケベン号は病のために斃れる。以来洋馬及び数頭の二回雑種同社中に飼養するといえども種馬にあたる純粋の洋馬なし。

*ブルドーサー号の事。(前所有者meggiben氏)


【資料馬匹世界 第5年(6月號)

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1552792/1/17

明治14年勧農局より内国産洋種牝馬四ッ谷号及び米国産孔雀号の貸与を受けしも、管理飼育に習わざりしをもって成績不良にして遂に見るべきの功を奏せずして終われり。


【資料明治3年度 馬籍原簿(下記宮内庁公文書サイトで検索)

https://shoryobu.kunaicho.go.jp/Kobunsho

[010/340] 26 

馬名:第二クジャク 

性別:

生年:明治16

父:クジャク

母:四ッ谷(仏蘭西サラブレッド種)

産地:三里塚区

摘要:明治31年10月1日 金指百之へ代金330円にて払い下げ