■1.高砂の産駒
高砂は判明している限りでは下記の4頭を産んでいる。
・明治3年:吾妻(牝)
・明治8年:第二東京(牡)
・明治12年:第二高砂(牝)
・明治15年:第四ブラドレー(牡)
吾妻が特に有名だが、第二高砂も実は結構すごい。「メグミダイオー(2003年現役中死亡)」や「モナクラムセス(2008年引退)」など結構近年までその血脈は続いていた。 各馬の活躍状況は個別にページを作成してあるので参照していただきたい。
■2.子孫の活躍
さて、明治後期の競馬番組についてはあまり詳しく調べていないのだが「普通のレース」と「帝室御賞典」の2つに大別されていたと思う。「帝室御賞典」は今でいう「天皇賞」と言って良いだろう。各地7競馬場で行われ、一部の競馬場では年2回の開催。毎年10レースの「帝室御賞典」が行われていたのである。高砂の子孫は順調にこの賞で勝利を収めていた。特に東京開催の第4回~第6回(M41~M42)の勝馬3頭には全て高砂の血が流れている。(スイテン・フクゾノ・ウラカワ)
しかし純血サラブレッドが台頭し出すとアラブ種たる高砂の子孫はまともに戦って勝つことが難しくなる。戦前においてはそれなりに勝負にはなっていたが、戦後においての「八大競争」では高砂の子孫はこれらの勝利を得ることは出来なかった。最高位はセカイオーが獲得した1958年天皇賞(春)の2着。実に惜しい、あと一歩及ばなかった。その後グレード制が導入されるもやはりG3すら獲得が遠いものとなっていた。
なので基本的に活躍したのはアラブ馬限定での競走レースであった。アラブ大賞典優勝など順調な活躍を見せる子孫たちであったが、2009年ついにアラブ競馬自体が中止となる。流れるアラブの血はその需要を完全に失ってしまった。
現在は地方競馬の片隅にわずかに現存している状況にある。
■3.子孫で活躍した主な馬
戦前、戦後を含めた著名な子孫は主に下記の通り。
勝負できるレースが軒並み長距離であったり、とにかく出走記録の多さが目立ったりで、やはりアラブ馬はタフで頑丈なのが取り柄なのだなという事がよくわかるものとなっている。
(1)スイテン 1902(M35)生
父:スプーネー 母:第四エリース(母の父:第四ブラドレー)
安田記念でおなじみの安田伊左衛門が所有した馬。帝室御賞典に勝利し、その後ロシアに遠征。ウラジオストクで開かれた日露大競馬会でも目覚ましい活躍を見せた。
(2)ハセパーク 1933(S08)生
父:プライオリーパーク 母:ギーキング
第2回天皇賞で優勝した。第1回は「天皇賞(秋)」の事なのでこの第2回というのは第1回「天皇賞(春)」の事である。
(3)サシカタ 1946(S21)生
父:万賀 母:第二雲晴
159戦0勝の未勝利馬。とにかく走らされた。激戦の後にさらに繁殖に供されたがそちらはわりと成功した。
(4)セカイオー 1952(S27)生
父:ヒロサクラ 母:十九雪
アラブの血を持ちながらサラブレッドと対等に戦った名馬。天皇賞(春)の2着、鳴尾記念3連勝の大記録を持つ。
(5)イナボレス 1969(S44)生
父:ヘリオス 母:ボーレスクイン
52走という重賞最多出走記録を持つ。その中で4度勝利を収めている事から決して負けるために走っていたという訳では無い。
(6)コーナンルビー 1978(S53)生
父:ダテホーライ 母:ダテモアー
サラ系の牝馬ながら大井の帝王賞を勝ち取るなど地方競馬で活躍を見せた。
(7)ゴーディー 2008(H20)生
父:プレシャスカフェ 母:イケノエメラルド
大井競馬場で活躍、重賞サンタアニアトロフィーを2度勝利する。
■4.残存する高砂の子孫
現在残存している子孫はおおまかに3つのカテゴリに分けられる。
(1)競馬界
(2)馬術界
(3)高根沢御料牧場
■5-1.競馬界
2023年(令和5年)4月1日現在で確認出来る高砂の血を持つ現役競走馬は3頭おり、全て地方競馬に所属している。また、繁殖牝馬も1頭現存している。(成績も同日時点のもの)
はっきり言って絶滅は時間の問題。
<競走馬>
(1)マルカンベルガー 2014(H26)生(牡)
父:スクワートルスクワート 母:スーパーベルガー
49戦11勝と戦績は悪くないもののここ最近は全く出走しておらずほとんど引退状態である。
(2)ヨシンマックス 2019(H31)生(牝)
父:ベーカバド 母:クーヨシン
33戦0勝。率直に言って勝利を得るのは厳しい。
(3)シュヴィル 2020(R02)生(牡)
父:タイセイレジェンド 母:クーヨシン
7戦1勝。ドラコ特別にて勝利を得るも低迷が続く。
<繁殖牝馬>
(1)クーヨシン 2009(H21)生
父:スターリングローズ 母:ラピッドリーラン
現役時は85戦17勝。2015年引退し、繁殖牝馬となる。
■5-2.馬術界
2005年生まれのウインザーグリンが引退後に馬術馬の繁殖に供されたため、その子孫が馬術用の馬として現存している。
そしてこのウインザーグリン、なんと高砂の直系牝馬なのである。
高砂の子孫として現在このラインが最も繁栄しており、日本最古のメアーラインはここ馬術界に存在した。
<参考サイト>
■netkeiba.com:ウインザーグリン
https://db.netkeiba.com/horse/ped/2005500015/
■日本馬事協会:ウインザーグリン
http://www.bajikyo.or.jp/renkei.php?pageno=207&assoc=1&hno=22101F1578
パンサーは「ウェストファーレン種」、ポジタノは「KWPN種」という双方とも馬術用の馬であるので、この一族を競走馬に戻す事はもはや不可能でしょう。だが何もスピードを競う事だけが馬の生きる道では無いのである。
アラブ種の温厚で頑丈という長所は馬術でこそ活かせるものであろう。
■5-3.高根沢御料牧場
「フジナミカイドウ」という馬が栃木県の高根沢御料牧場にて種牡馬となっている。アラブ血量27%のアングロアラブで2023年現在でも普通に繁殖活動は行われているようだ。
フジナミカイドウは高砂の血を引いているので当該馬と当該子孫に血脈が残っている事となる。
この御料牧場で生まれた馬は一切競走馬にはしていないようだ。
また、血統の掛け合わせがすごい機械的で「コオダトツプ」の子に「オーシャンキング」を付けて、その子供に「フジナミカイドウ」を付けるという流れがほとんどである。
フジナミカイドウは2001年生まれ。そろそろ4番目の後継者を考えなくてはいけないと思うのだが…、「イケノコスモス」でも据えますかな?
■6.最後に
以上が高砂の子孫の現状である。各方面とも細々と生きる子孫達であるがいつ消滅してもおかしくない。
この血が貴重なものなのか、それとも取るに足らないどうでもいいものなのか、その判断が必要な時なのではないでしょうか。
おまけ:完