投稿日: Apr 29, 2010 2:55:37 AM
A組でのWWの1,2回目の紹介です。
A組はスポーツ推薦で入学した生徒を集めたクラス。全員が強化指定運動クラブに所属している。
1年生時は現代文を週2時間、2年次は古典を週3時間、3年次は現代文を週3時間持っている。このクラスは三年間同一のメンバーで構成されている。
・Kの場合 「ヒップホップな孫におじいさんとおばあさんが振り回される話」を下書きで書いてくる。彼は非常に頭の回転が速く、しゃべり出すと止まらない。授業中など、うっかりすると私も掛け合い漫才に引き込まれてしまう場合あり。「しゃべる方が楽やし、書くのはナンかめんどくさい」と言う。カンファランスでは「それやったら、しゃべってるみたいに書いたらええやん」とアドバイス。野坂昭如や町田康の文体を紹介する。「饒舌体ってゆうんやで」と教えると、「おお! それはアリや」。それで書き出しのハードルが下がったようで、2回目のWWでは「家で書いてきてん」とノート4ページ分の下書きを見せてくれた。
・Oの場合 常にクールな姿勢を崩さない。静かに反抗的な生徒。でも、自分で納得したことはきちんとする。彼の場合は「WWは自由に書けというけど、アイディアを強要しているだけで不愉快」と下書きに書いてくる。「おお! いいぞお」とほめる。その際、「意見」という視点から見直してほしいと助言。「自分が何に怒っているのかをよく考えてほしい。教師の態度なのか、授業の方法なのか」など。しばらくして、「問題意識って何ですか?」という質問。「それは君が『ナンかわからへんなあ』とか『ナンかひっかかるなあ』って思うことや」。納得した様子。下書きは順調に進んでいる。
・K2の場合 全国大会に出場するレベルのチームの主将。「ハンドボールのことを書きたいけど、どう書いたらいいのか」との質問。「結局、君がこの作品で言いたいことは何や?」「ハンドボールはおもしろい、好きっていうこと」「うん、じゃあそれが君の意見やな。じゃあ、どんな人に読んで欲しい? 読んだ人にどう思ってほしい?」という形で7つの要件を説明。 (← この7つの要件を知りたいですね!!)
・H サッカー部の主将。まじめさとユーモアのバランスがなかなか良い。「オレの武勇伝」と題して、自分をほめ称える作品を書きたい。「でも長くなり過ぎんねん」「そうか、それやったら、『武勇伝その1・その2』ってして、書き出しを『オレの武勇伝を話そう』みたいに統一して、短編をたくさん作ったら?」と助言。その1は「滑り台から転げ落ちた男の子をオレが助けて、大人にほめられた話」。ただし、小学生なのに「高校生? エライね」と言われたと言うのがオチ。おもしろい。
H 「ヒカルの碁」はなぜおもしろいのかについて書いている。「ヒカルの碁」は囲碁の専門用語を解説もせずにどんどん使っている。でも、囲碁を全く知らないでも面白く読めるのはなぜか、という問題意識を持っている。マンガの設定をどこまで書くかで助言を求められる。「うん、ヒカルの碁はおもしろいよな。先生も全部読んだデ。設定やけど、ここは誰に向かって書くかということやな」。周りの生徒に「ヒカルの碁」を読んだことがあるか聞かせる。半分ぐらいは知っている。「うん、だからクラスの子らに読んでほしいのなら、そういう状況だって思って書けばいい」。
H 「黒板とチョークについて」とタイトルのみ書いている。「ん、何これ?」「あんな、オレの席、教室の一番後ろやん。だから、隣の教室の黒板書くチョークの音がうるさいねん」「なるほどなあ」。確かにその時もカツカツカツという音が響いている。隣の生徒も「そやそや」とうなずく。「それで、こっちもドンドンって壁叩いたらオコられた」「そら、あたりまえや。でも、そんなんをぜひ書きィや。そしたら、職員室でも読んでもらえるで」。
HS 恋愛小説を書こうとしている。周りからは「実話やねんで」という声、多数。普段の授業では起こしても起きないぐらいの生徒。でも1年の時からWWのときはうれしそうに書いている。1年時は歌の歌詞を少し変えて大量に書くという感じ。今回は400字ほどの下書きを、すでに2種類書いている。「これ、二つあるけど、どう違うの?」「片方はあんまりホンマすぎて照れるからやめといた」「え、そういうのがおもろいんや。見せて!」「あかんて!」。そういいながらもちゃんと見せてくれる。周りも「見せてや」と寄ってくるので、後は任せる。
YN 「人を評価するのは学歴だけか」がテーマ。「昨日の講演会のこと気にしてンの?」「うん」「そうやなあ、ちょっとひどかったもんな。先生もそんなこといったらお先真っ暗組やデ」。
この授業の前日、「進路講演会」と題して大手Y予備校講師の講演があった。そこで「関関同立に行けなければ将来はない!」と講師は言い切り(!)、就職についてのデータを「証拠」として示した。A組の生徒の受験学力はあまり高くない。彼も現時点では「関関同立」はむずかしい。かくいう私もその講師が切り捨てた龍谷大学の出身である。
「あのな、君はあの講師が言うみたいに学歴がないと人間はダメって思うの?」「いや、そう思わない」「うん、じゃあ、読んでいる人がそう思うように書こうや」。
KM コメディの天才と呼びたい。前回(1年時)の作品もクラスを爆笑させたが、今回もその予感がある。内容は「公園のトイレでのヤクザの組長と組員のやりとり」。会話を主体にして、状況説明は最小限という書き方。「これは戯曲というか芝居の台本の書き方のほうがいいよ」と助言。「ここの文章も『組員、携帯電話で話している』とか『「おまえ、このトイレには人おらんってゆうてたやないけ!」組長どなる』とかにしたらいいねん」。「なるほど! うん、そんな書き方したかったんですよ」という。
全体的に全く書けていないことを確認しているのは、2時間目の時点では5人ほど(これ良くないですね。実数で把握すべきでした)。寝てしまっているものが4人ほど。彼らには「ほら、起きて。何も書けそうになかったら、友だちのを見せてもらいィ」など。
起きているが書けていない生徒には「今、一番気になってることは?」「この前のクラブの試合は?」など。
次回は書けていない生徒に着目して、カンファランスのようすを書きます。
(以上は、Y先生が2010年4月19日の週に行った2時間の紹介の一部です)