投稿日: Apr 30, 2010 1:11:49 PM
1,ミニレッスン『ライティング・ワークショップとは』
●最初の話(みんな1カ所に集まる)
T: 「今日から1年間続く新しい授業を始めます。
それはこのコーナーを使って行う『ライティング・ワークショップ』です。みんなライターって意味知っている?火が出るライターじゃないよ。作家のことです。
これから1年間、皆さん一人一人に本物の作家になって、たくさんの作品を書いてもらいます。」
C:「どんなこと書くの?」
T:「皆さんは作家ですから、書くことは自由!自分の書きたいことでいいんだよ。」
C:「物語でもいいの?」
T「もちろん! と急に言われても、何書こうか迷っちゃうよね。なので、今日は最初に、去年の6年生の作家が書 いた作品を紹介するね。」
※3人の作品を紹介しました。
A君の「不運」、B君の「おもしろいお兄ちゃん」、Cくんの「ごえもん風呂の戦い」。1つ目はユーモアたっぷりなので、それだけで書きたくなるのではないかという予想で選んだ。2つ目は、家族のことも書けるよという例で、3つ目は日常のことでもいいよ、という例でそれぞれ選んだ。 子どもたちは楽しそうに笑いながら聞いていた。
不運 A
あの日は本当に運がなかった。もうこんな日はこないでほしい。あの昼休みの苦痛は・・・・
あの日、カメのケースの掃除をしていた。そして、今思っても怒りがこみあげてくる、あの行動をとった。
カメに手をちょっと近づけた。そのときカメの首が伸び、右手をかんだ。すさまじい痛みだった。昔に一度かまれたことがあった。そのころはカメが小さかったために、全く痛くなかった。しかし十分ほど離さなかった。そしてその時と同じように離さないのかと思った。
その通りだった。全く離さなかった。しかも、ひと言で言うと、
「いたい」。ごうもんみたいだった。ちょっとでも手を動かすとカメのかむ力が増す。今までの思い出が頭にうかんできた。
「もう死ぬのか…」
そんなことを考えていた。カメはいっこうに離さない。それどころか、かむ力が強くなってくる。そんなに悪いことをしたか。えさもちゃんとやっているし、掃除もしてやっている。ましてや、大きいケースに移し替えてやったんだ。恩を仇(あだ)でかえす、そんな言葉がぴったりだ。もう肉が食いちぎられる。
その時名案が頭にうかんできた。
カメを水の中に入れて、呼吸をできなくさせてしまえ。
こうして痛みにたえながら、水そうへ入れた。1秒1秒だんだんカメのかむ力が強くなってきた。きっと、苦しくなってきたのだろう。そして約2分後ようやく自由になった。飼い主がかまれるなんて、しかもカメに。これだけならまだ、
「今は不運だったな」ぐらいでゆるせる。しかしこの日の不運はまだ続いた。帰り途中、今日の出来事を思い出しながら帰っていたら、上から白く、黒がまじったものが降ってきて手についた。「ぽと」
そんな音だった。鳥のふんだ。怒りが心からあふれだしそうなくらいこみあげた。 2枚目に続く
「そんなにわるいことやっていないだろ」
人は、
「たまにはこんなことがあるさ」と言うけれど、たまにはってまたこんな日が来るのか?
もう嫌だ、こんな日は・・・・・
T: 「さて、作家の皆さんは今日からどんな作品を書きますか? まずは近くの人と何を書くつもりか話してみましょう。(1分ぐらい)」
T: 「作家の一番大切な仕事は「何を書くか決める」ことです。これが一番難しく、大切なんだよね。」
●作家コーナーの説明
T: 「作家コーナーの使い方を説明しておくね。
原稿用紙はここに3種類入っています。自分の好きな用紙を使ってね。
表紙はここに4色入っています。完成したらここから1枚とって表紙をつけてください。
たぶん途中で終わっちゃうと思うんだけど、下記途中の原稿は、透明のファイルに入れて、この「書きかけ原稿箱」にグループごとに入れておいてね。書き終えて表紙もつけたら、この「完成原稿提出箱」に入れておいて下さい。
書く場所は、教室内ならどこでもいいです。畳コーナーでもいいし、今のままのグループでもよいし、集中できるところに移動してもいいし。
では書き始めましょう!」
2,作家の時間(教師はカンファランス)
担任も空いている席(畳コーナーに行って書いている子の席)に座って書き始めた。
「さ、先生も書こう!先生もこの1年は作家だからなー」と大きめの声でつぶやき、一緒にやっていくのだ、と言うことを強調した。
泣ける本 岩瀬直樹
世の中にはたくさんの本があります。
皆さんはどんな本が好きですか?
楽しい本、笑える本、感動する本、ドキドキする本など。
その中でもイワセンは「泣ける本」が好きです。
一番泣ける本はなんと絵本!
その題名は、
とここまで。黒板に貼っておいた。
その後は歩き回って、カンファランスを開始。
★歩き回って「おもしろい題名だね!」「いい書き出し!」
「へーこんな事書くんだ。読むのが楽しみだな!」などつぶやいて歩いた。
★大きな声で騒いでいる子には、
「ここだと集中できない?」「どこなら集中できる?」
「他の作家の人の集中力を乱すから、静かにね」と行った。
初日のせいか、ボクが歩き回るとあわてて隠す子が多かった。
作家の椅子に座って読んでもらう子を探す。
まだクラスの雰囲気で、みんなの前で読めない子もいるので、あまり物怖じをしない子、まだ書き出したばかりの子と結構進んだ子の2人を選んだ。
3,共有の時間
T: 「では、書くのをやめて下さい。(「えーもう?」の声。)
鉛筆も作品もおいて、前に集まって!」
T:「ライティング・ワークショップの時間の最後はいつもこうやって集まってもらいます。
そして、じゃじゃーん(作家の椅子を出す)、その日選ばれた作家しか座ってはいけない<作家の椅子>に座って、みんなに発表してもらいます。(「えー!」の声)」
T:「では今日1人目の作家は「Dくん」です。拍手!
まだDくんは書き出したばかりだけど、作家の作品はすぐには書き終わらないから当たり前だよね。途中までどんなことを書いたのか紹介してもらいます。」
十年後のオレ。
ぼくの十年後はどうなるかはまだ分からない。だから予想してみよう。
もしお笑い芸人だったら、すべること間違いなし。すぐに芸能界からはずれる
だろう。
お笑い芸人にはなりたくない。
と、ここまでです。(拍手!)」
T:「聞いていた皆さん、聞いていてよかったこととか感想はありませんか?」
C:「すべること間違いなし、がおもしろかったです。」
T:「ありがとう!いいところ見つけてくれたね!
では次は、Eさんです。お願いします。
おもちゃの刀 E
きのう、お兄ちゃんがおもちゃの刀を2つ買っていた。その刀の中にガムが
入っている。お兄ちゃんがお母さんに見せて、
「いいだろー!」
とじまんしていた。私と妹が
「いいなーちょうだいよ」
と言うけどそんなことは気にしないお兄ちゃん。
ガムだけはくれた。一気に出したから、ガムがとびちった。私と妹はそのガム
を、けんめいにさがした。おにいちゃんは
「それあげるよ」
と言ってさっていった。ガムにはほこりがついていた。
ここまでです。」
T:「拍手! どうでしたか?感想やよいところを伝えてあげて下さい。
まずイワセンからいい?「ガムにほこりがついていた」っていうところが、「あーそういうのあるなー!ってすごくいい文章だなあと思いました。他の人どう?」
C:「文章の表現がすごくうまいとおもいました」
T:「いいところ見つけてくれてありがとう!この後どんな作品になるのか楽しみだね。
またできたら聞かせてね!
最後にイワセンも読んでいい?」
泣ける本 岩瀬直樹
世の中にはたくさんの本があります。
皆さんはどんな本が好きですか?
楽しい本、笑える本、感動する本、ドキドキする本など。
その中でもイワセンは「泣ける本」が好きです。
一番泣ける本はなんと絵本!
その題名は、
とここまで書きました。次回はこの続きを書くつもりです。
楽しみにしていてね!」
T:「ではこれで今日のライティング・ワークショップは終わりです。
また次回、続きをしようね。」
4,この日の教師の振り返りMEMO
・子どもたちが終わってから「休み時間も書いていいですか?」と聞きに来て、7,8人書いていた。ビックリ!それくらい書きたいことを書くのは楽しいのかもしれない。
(給食の配膳中に書いている子もいた)
この熱を冷まさないように、しばらくは週3回。まずはひたすら書くことを続けよう。
・ 作家の椅子で読んでもらった2人は、上手すぎたかもしれない。もっと「普通」の作品を紹介すべきだったか。このあたりの判断が難しい。
・ 次回のミニレッスンでは、違うタイプの作品を紹介する。ユーモアばかりに走らないように、いろんなタイプの作品があることを知らせたい。
・カンファレンスを丁寧に開始しよう。まずはよい読者になること。勇気づける役になること。