作家の日
「作家の日」とは、自分の一番お気に入りの作品、みんなにぜひ紹介したい作品を選択し、みんなの前で「発表する」日です。
出版の一形態でもあります。出版は何も印刷して製本するだけではありません。みんなの前で読み、すぐにフィードバックをもらう方が、子ども達としてはより嬉しいかもしれません。(印刷物だと読んでもらえたかどうかわかりませんが、みんなの前で読めば、必ず全員に聞いてもらえますから!)
私のクラスでは、1年間取り組んできたライティングワークショップの最後の授業として1ヶ月前に予告していました。
「最後に、自分の一番お気に入りの作品、最後に発表(出版)したい作品を用意しておいてね。みんなで自分の作品を紹介し合う、ステキな時間にしよう!」
本当は保護者に公開してやりたかったのですが、校内の事情でかないませんでした。
保護者や、地域の方々、学校の他のクラスや学年の子ども達を招いて行うと、作家として、より本物の発表になるでしょう。
私からの提案の日から、子ども達は作家の日に向けて取り組み始めていました。
今までの作品を読み直して、一番気に入っている作品の再修正に入る子、最後に伝えたいことを考え、材料集めして新作にチャレンジする子。
結局、新作にチャレンジする子が大多数でした。
「これで伝わるかなあ」
「よしー!これで悔いないぞう!」何ていう声も聞こえてきました。
ぎりぎりまで「どっちにしよう・・・」と悩んでいる子もいました。
全員の準備が完成したのを確認し、2時間使って「作家の日」を行いました。
始めるときに2つのルールを提案しました。
1.作家の椅子に座ったら、まず最初に「なぜこの作品を作家の日の作品に選んだのか」 を話してね。
2,今日は全員行うので、読み終わったあとのコメントは2人まで。あとでぜひ感想は 伝えてあげてね!
3,これ以上ないステキな拍手で、お互いの「作家」としてのこの1年の成長を祝おう!!
これが本当に豊かな時間でした。
最初の1時間で「一人で聞くのはあまりにももったいない!」と思い、校長に声をかけて来てもらったくらいです。校長も「じゃ、ほんのちょっと」と言いながら、結局1時間ずっと聞いてくれていました。うなずいたり、大きな拍手をしてくれたり、「ほー!」と感嘆の声を上げてくれたり。
最後に「感想を言いたいんだけど、とても短い時間じゃ言い切れない。もし時間がもら
えそうなら明日にでも20分くらいくれないかな。なんだか、私も感想やら、いろいろ話したくなっちゃったよ」と話してくれたぐらいです。
その後、「もし時間がとれなかったときのために」
と短く感想を話してくれたのですが、
・自分の言葉で自分の考えを書いていて素晴らしい
・とてもよく考えて書いているのがわかった
・聞き手も素晴らしい!
・聞き手も、自分の言葉で感想を伝えていて感動した
・本当に素晴らしい時間だった
と言うような内容でした。
子ども達の、「なぜこの作品を作家の日の作品に選んだのか」も、WWで読者を意識して作家として書いていること、自分の作品に対する自信や愛情が伝わるコメントが続きました。
A「なぜ選んだかというと、自分でも上手いと思えたから選びました。一度作家の椅子で発表したんだけど、もう一回読みたくなった」
(→それに対しての感想では、「何回聞いても飽きない。深みのある詩。」というコメントがありました。)
B
オレがこの作品を選んだのは対立と平和をみんなでずっと勉強してきたから、みんなのまとめになるといいなあと思って選びました。
C
オレがこの作品を選んだ理由は、言葉の大切さをみんなに伝えたかったからです。
D
読書サークルで対立と平和についての本を読んで、リーダーワークショップでも読んだ本で考えたことをまとめて、自分なりによく書けたので選びました。
E
この作品を選んだのは今まで勉強した中で一番伝えたかったことを書けたから選びました。
F
ボクがこの作品を選んだ理由は、前に(ミニレッスンで)みんなにたくさん質問してもらったから、発表したいなあと思って。
G
この作品は、オレ的に題名も、書き始めも、書き終わりも、今までで一番上手く書けたから選びました。
H
この作品は、みんなの前で読みたくて読みたくてたまらない作品だったから選びました。
I
なぜこの作品を選んだかというと、いじめられたことがない人にも、いじめというのはこういうものだということをわかってもらいたかったからです。
J
私はガラスのウサギについて書きました。読書サークルでこの本で話し合って、とても印象に残ったことがあって、みんなに伝えたいと思ったので選びました。
K
この1年で、よく書いたり考えたりしたのが「対立と平和」だったので、みんなに伝えたいなあ、発表したいなあと思ったから、頑張って書きました。
* * *
2時間、担任である私も子どもも飽きることがありませんでした。
いろんなジャンルでいろいろなテーマでの作品だったからでしょう。
そして、一人ひとりが自信を持って「出版」した作品だったからでしょう。
読まれた作品も、この1年取り組んできたことが伝わってくるステキな作品が多かったです。
「作家の日」の子ども達の感想は以下の通りでした。
★おもしろかった!同じ「対立と平和」のテーマでも、それぞれ思っていることが違って飽きなかったです。あと、自分の作品とつなげられるところもあって、こういうのも書くとよかったなあーと参考になりました。聞いているときは、読んでいる作品について考えて、「自分だったらこう思うなー」とか、「この書き出しいいな」とか、自分が前に読んだのとずいぶん変わっていてびっくりしたり・・・人のを聞くのはおもしろいです。
読んでいるときはちょっと緊張したけど、感想を聞くとすごくうれしいし、あの椅子に座る気分もよかったです。でも作家の日って毎日あるとそんなにおもしろくないと思います。やっぱり1ヶ月に1回ぐらいの方がいいと思いますよ!理由は毎日やっていると、ほめるだけでいい作品にならないからです。でも楽しいです!
★昨日の作家の日はよかったです!!自分の作品をみんなに発表するのって結構好きだし、感想とかアドバイスをもらうのもうれしい!!あと、みんなの作品を読んだり聞いたりすると、いいところとか学べるし、すごくいい!みんなの作品もユーモアがあっておもしろいし、考えさせられるのもあるし、本当に素晴らしいばっかりで、ビックリ!私もがんばらなきゃな。それでみんなみたいな作品を作ってみたいと思いました。
★昨日の作家の日は楽しかったです。やっぱり自分の作品を読んで感想を言ってもらうのはとても嬉しいですね。作家の日のよかったところは、自分のお気に入りの作品を読んだこと。決められた題名などの作品ではないから、みんないろんな種類の作文が聞けて飽きないし、とてもおもしろい。「作家の日」はライティング・ワークショップのいいところに似ています。
自分で題名を決めた作品を読んだり書いたりすること。それがやっぱり一番いいと思います。「作家の日」はライター・ワークショップのまとめとして最適だと思います。
今回、岩瀬がやって感じたことは以下の通りです。
・作家の日はパワーフル。学期に1回ぐらいやりたい。
・本物の読者(保護者や地域の人等)を読んで盛大に行う回があってもいい。
・書き手にとっても、読者にとっても有意義な時間。「作家の日」以降は、書くモチベーションも上がるだろうし、聞いて刺激を受けるので、お互いにいい効果がある。
・みんなの前で音読するということは、実は自分の作品をもう一度読み直して修正する機会にもなる。音読は修正の有効な方法。
・頑張って取り組んできた「お祝い」のような回があってもよい。
・「聞き手」を育てる時間にもなっている。読み聞かせのように、クラスがコミュニティになっていく効果もある。と考えるとやはりシェアタイムはとても重要。
・この時間をみんなで共有する、と言うこと自体がとても素晴らしい体験。
・印刷して文集にするのだけが「出版」ではない。すぐにフィードバックをもらえるという点では、作家の日や「作家の椅子」の時間はかなりよい。