高知県土佐市の和紙すげた職人

投稿日: 2016/08/03 23:09:34

和紙すげた職人・山本忠義さん

2015年12月6日に放送されたテレビ東京の番組「和風総本家」では、高知県土佐市で和紙すげた(和紙の繊維が分散して漂う水槽・すきぶねから繊維だけをすくいあげる、すだれ状の道具― http://www.washi.jp/waza/koutei/k_6.html ―で写真がご覧になれます)をつくる職人の山本忠義さん(職人歴66年、84歳)が取り上げられています。その中で、山本さんがさらりという職人の言葉は、もう歳だからと、つい後ろ向きになる自身への鉄槌のように感じられました。このすげたを使う立場の和紙職人である石元健昇さん(職人歴23年、49歳)による山本さんへの言葉とともにご紹介いたします。

すげたづくりのあらまし

昭和初期の高知県に約30人いた和紙すげた職人は、現在では山本さん一人になりましたが、その作業の大まかな手順は次のようなものです。

① 半年ねかせた竹をナタで割いて竹ひごをつくる。② 刃のついた道具で直径1mmほどの竹ひごにする。③ 山本さんが「ふところ(懐)に入れて寝てやりたいくらい可愛い」という小さな穴を無数にあけた鉄板(テレビ映像からは幅が30㎝ほど、高さは6~7㎝かと思われます)を固定して、竹ひごを順次、より小さな穴に通して直径を0.6mmまで細くする。④ 束ねた竹ひごを洗濯板の上に擦り付けて表面の毛羽立ちや汚れを取り除く。⑤ 細く綺麗にしたこれらの竹ひごを糸ですだれ状に(竹ひごの間隔は一般的なすだれの五分の一ほどの細かさで)編んでいく。山本さんは「水に濡れると伸縮するので、その時に均等に伸縮してユルユルにならないように固く編まないとあかん」と、一枚編むのに約10日かけています。

石元さんによる山本さんへの言葉

「良いものをつくってくれるので、長いこと、こちらは安心して使える。私らにとったらありがたい存在、贅沢な存在やけどね。」

山本さんの生活モットー

しっかりした三度の食事をとり、仕事前に入念なストレッチをするのが日課です。相撲取りの股割りも顔負けの開脚ストレッチができる身体の柔らかさには驚きました。ご本人からは「これをやっていると腰が痛くならない。仕事が面白くできない。腰が痛いと・・・」とのことです。

山本さんの言葉

前へ前へ行きたい。人より前じゃなく、技術的に。自分の腕を上げていかなあかん。立派な腕にならないかん。職人は一生修業。修業に終わりはない

(聞き違いなどありましたら、ご容赦のほどお願いいたします。会員№102 中村記)