東京墨田区の町工場のCEO(本社:東京都墨田区)

投稿日: 2019/04/18 1:18:16

浜野製作所の浜野慶一CEO

この「リーダーの極意・思い」のページでも以前取り上げましたが、テレビ東京が平日の朝に放送している「Newsモーニングサテライト」という番組に、各界のリーダーがおすすめの本を紹介する「リーダーの栞(しおり)」というコーナーがあります。この2019年2月5日(火)の午前6時35分から41分までの放送に、東京墨田区の浜野製作所の浜野慶一CEO(56歳)が出演されています。

浜野製作所は、浜野さんの父が1978年に創業した板金加工やプレス加工を手がける工場です。1993年、浜野さんが30歳の時に急逝した父親から引き継ぎ、現在の従業員は47人ですが、売上げはこの10年で10倍と好調です。

浜野製作所を一躍有名にしたのは深海探査機「江戸っ子1号」です。国や大学、町工場仲間と共同開発し、水深およそ8,000mでの3D撮影を世界で初めて成功させました。この他にも近隣の町工場と一緒に一人乗り電気自動車「HOKUAI-Ⅲ」など新しいものづくりに挑んでいます。


町工場改革の原点となった一冊とは、ウォルト・ディズニーの成功ルールです

レポーターの宮澤エマさんがカラフルで一際目立つ本社工場に浜野さんを訪ね、挨拶後の「すごくカラフルなビルですね。これ工場なんですか」、「おもちゃ箱をイメージしてつくったんですけれどもね」という二人の会話から始まります。

宮澤さんの「今日紹介していただく本は何ですか」の問いに浜野さんは「これです。ウォルト・ディズニーの成功ルール。12、3年ぐらい前だったと思うんですけれど、家族経営でやってた会社がちょっと組織になってきたときに、社長としても自分自身としても未熟な時にこの題名がインパクトに残ったんですね」と答えます。

これは、全米一のディズニー研究家であるリッチ・ハミルトンによるウォルト・ディズニーの成功ルール。ディズニーランドがどのようにして成功を収めたのか、16の法則を導き出して解説した一冊です(箱田志昭訳、あさ出版)。


困難は必ずチャンスに変わる

「本の中で一番印象に残った箇所というのはありますか?」にたいする浜野さんの答えは「はい。困難は必ずチャンスに変わるっていう書があるんですね」です。

ウォルト・ディズニーは20歳の時、アニメ会社を立ち上げるも資金不足で倒産。しかし、それをチャンスだととらえる姿勢に同じような体験をした浜田さんは共感したのです。

「今から19年前になりますけれど、隣からのもらい火で火事になったんですよ。で、工場が全部なくなって。当時は僕の他に従業員が一人しかいなかったんですけれどね。もう本当に(会社が潰れる)手前ぐらいまでいきましたけれどね」。倒産寸前。しかし、浜野さんは諦めることなく会社を立て直すために奔走します。「当時はね、タダタダがむしゃらに頑張る。とにかくやっぱりお仕事をいただいて、そのいただいたお仕事をね、ちゃんときちんとお客様にお返しをする。その繰り返しをずっとずっとやっていたらお客さんが徐々に増えてきて。ウォルト・ディズニーもですね、めげずにどんどん前に進んでいって、今のディズニーランドがあってみたいな。(浜野製作所の歩みと)つながっていますよね、こういうところにね」。


大きなものの見方をすること

浜野さんを動かしたのは「大きなものの見方をすること」という一文。「(ディズニーは)大きなものの見方をしているから、あのいろんな事業ができたりだとか、いろんなサービスが展開できるんだろうな。金属の部品加工って、どんどん海外に生産拠点が移るし、金属の部品加工だけやってて5年後、10年後に本当に幸せになれるんだろうかって考えるんですね。じゃ、何をやるんだ」。

そこで、工場につくったのが、宮澤さんが「なんかおしゃれなカフェみたいな」といい、浜野さんが「ここが我々がやっているガレージスミダ」っていう、企業や学生が集まって自由にものづくりに取り組める場所の提供です。

この日、相談に来ていたのはIT企業。仲間の町工場も一緒になってものづくりをサポートします。相談に来たIT企業からは「職人魂のクオリティですよね。そこは抜群で。面白いものを開発していきたいですね」。これまで電動車椅子「WHILL」や人をいやすロボット「OriHime」など様々な成果を生み出しています。


町工場は誇り高い仕事だし、わくわくした存在です

浜野さんは終わりに「自分たちの技術なり、積み重ねてきた経験で世の中や社会の課題を解決する。町工場って誇り高い仕事だし、わくわくした存在。このシャッターの奥では何が行われているんだ。どんな楽しい世界がここに広がっているのか。それを受け取ったお客さんもワクワクできたら、そんなね、いい仕事ってないじゃないですか。誇り高い仕事だと僕は思うんですよね」とおっしゃいます。

最後に宮澤さんは恒例のEmma’s Impressionとして「Makeover。改革という意味もあるんですけれど、イメージチェンジという意味にも使われます。町工場の仕事は誇りある、素晴らしい仕事なのに、その魅力というのが十分に伝わりきらなかった。そこを変える。そんなお話しがすごく印象に残りました」とまとめられました。

(要約したり前後を入れ替えた箇所があります。また、聞き間違いなどありましたら、ご容赦のほどお願いいたします。会員№102 中村記)