東京都千代田区のカバンメーカーの社長

投稿日: 2016/08/04 2:23:30

吉田カバンの吉田輝幸社長

テレビ東京が平日の毎朝5時45分から一時間ほど、生放送している「Newsモーニングサテライト」という番組をご存知ですか。その毎週火曜日に経営トップやトップエコノミストが感銘し、影響を受けた書籍を選んで説明するリーダーの栞(しおり)というコーナーがあります。これは、リーダーたちがどんなページに心の栞を挟んだのかという問いかけから名付けられたそうですが、2016年7月12日(火)の放送に株式会社吉田(吉田カバン)の吉田輝幸社長が登場されました。

吉田社長がこの日取り上げた書籍は、100年以上前にジェームズ・アレンというイギリスの作家が「なりたい未来を引き寄せる10のステップ」について書いた「『思い』が現実をつくる」(ゴマブックス)という自己啓発本です。吉田社長はこの番組で、本の要点を説明されてから自らの経営にたいする考え方について話されていますが、そこにものづくりの真髄・要諦に通じるお言葉があると感じましたので、ご紹介させていただきます。

吉田カバンについて

「PORTER」の素晴らしいカバンを愛用されている方もおられると思いますが、「吉田カバン」は、このブランドを展開する、創業80年を去年迎えた老舗中の老舗のカバンメーカーです。ホームページのhttp://www.yoshidakaban.com/をご覧になればお分かりのように、社是の「一針入魂」を体現する職人が一針一針、丹精を込めて仕上げる様々なカバンやポーチ、財布などは、見事というほかはなく、使うのが惜しいくらいの出来栄えです。

吉田社長による「『思い』が現実をつくる」の要点

人間の行動とか人間のあるべき姿、これはすべて心にある。その人間の心が思うことが全て現実に出てくる。そういったことに対する注意とこうあるべきではないかということをジェームズ・アレンは説いている。

(ナレーション:人の心の様子は態度や言葉にそのまま表れる。例えば、怠惰な心でいる人は、ほとんどの場合身体がだるく、必要以上の睡眠をとりたがる)

(この本には)このような悪い習慣をなくし、良い心の習慣を取り入れるための10のステップが紹介されている。

(ナレーション:本の内容は、創業者でもある父・吉蔵氏の経営哲学に通じるものが多くあり、中でも「利他の心」の重要性は吉田社長が一番胸に刻んでいる言葉だと(社長は)いわれます)

吉田社長の経営にたいする考え方

社員を大事にすること、これに尽きると思う。

心の勉強をしてからみんなにそれを説いていき、根気よくみんなに話しをしていくというか、理解してもらう。そうすると、そういったものに気付いてくれる社員がどんどん出てきてくれる。そうすると、(その社員は)今度(は)後輩に伝達をしてくれる。

それは(そうした心の伝承が)現在の吉田カバンの大きくなっている原因だと、私は思っている。

(この)本に書いてあるように、自分の心がどういう向きになっているのか、自分自身で分かってもらう(自身で把握し、社員に理解してもらう)ということが一番大事だと思う。(これが)私自身の経営の第一だと思ってそれを実行している。

(ナレーション:(社長は)心の影響を受けるのは、人だけではないといわれます)

私たちの社是にもなっている「一針入魂(Heart and soul into every stitch)」、(これは)一針一針魂を入れる(カバンをつくる)という、そういった気持ちを社是で表している。

職人さんも(私と)一緒で、そういう気持ちで(カバンを)つくっている。

心の在り方は、人間に出てくるのと同時に、つくった製品に現れてくる。それはどういうことだというと(心が真っすぐでない職人がつくったカバンは)真っすぐにした時に真っすぐに見えない。ひどい歪みではないがちょっと歪んでしまう。(このように心の在り方が)品物に現れてくるため、我々は非常に注意をしないといけない。

心のこもった商品・心のある商品、これが一番大事なんで、これを我々は非常に注意していかなければならないと思うし、また逆に、売ってくださるお得意様のみなさんの心の在り方、これも大事なんで、心の在り方が製造・小売りの全ての段階で必要になってくるのではないか。

(ナレーション:(社長は)心のある商品をつくるためには職人と直接話しをすることが大事だといい、それを守るために創業以来、ずっと国内生産を続けているといわれます)

私どもは、創業以来、全部メイド・イン・ジャパンを守っている。海外生産をすると目が届かず、同じように単一の(心のない)商品がばんばん流れてしまうので、面白くも何でもないんで、私たちは、かたくなに(この考え方を)守って国内生産をやってきた。

社員がそういう(心ある商品をつくる)気持ちで今まで頑張ってくれているんで、現在も頑張ってくれているんで、どんどんいろいろな面で進化をしてきていると、私自身は考えている。

番組アナウンサーのコメント

一針入魂という言葉がありましたが、修理品は、その商品をつくった職人が全て直すそうで、さらに(その職人が丹精込めてつくった商品を直すので)、修理箇所以外のところもちょいちょい気になってそこも全て直して、結局、新品同様にして返してしまうと、それだけ思い入れのある商品をつくっていらっしゃるということを今回うかがいました。

まさに職人の方の心の在り方が商品に現れているということなんでしょうね。

(以上ですが、お話しされた「ます」は「である」に変えてあります。また、文中のカッコ内は、私の判断で補足したものですが、これも含めて聞き違いや誤解などありましたら、ご容赦のほどお願いいたします。会員№102 中村記)