米国MITメディアラボの所長

投稿日: 2017/09/11 5:49:59

メディアラボの伊藤穣一所長

この「ものつくりのわ」の「東京都千代田区のカバンメーカーの社長・吉田カバンの吉田輝幸社長」の投稿でも取り上げましたが、テレビ東京が平日の朝に放送している「Newsモーニングサテライト」という番組の火曜日に、経営トップやトップエコノミストが感銘し、影響を受けた書籍を選んで紹介するリーダーの栞(しおり)というコーナーがあります。この2017年9月5日(火)の放送では、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボで2011年、日本人初の所長に選ばれた伊藤穣一さんが出演されました。

MITメディアラボには700人ほどの研究者や学生が所属しており、バーチャル・リアリティや人工知能などの革新的技術を発信してきた世界最高峰といわれる研究機関ですが、異なる分野の専門家が共同研究して試作品を何度も作るという方法で運営されています。

番組キャスターによる「どんなラボですか」の問いに、伊藤さんは次のように答えています。

「(ラボに入ると、ロボットや生物学の実験とか、いろいろなものが転がっている。一個のスペースに教授やラボがごちゃごちゃと一緒になっている。400いくつかのプロジェクトがあるので、みんなが何かをつくっているんです。これ何やってるのと聞くと、一生懸命説明するといった状況です)」

伊藤さんが今回薦めるのはトム・ケリーとディヴィッド・ケリー著(日経PB社)の「クリエイティブ・マインドセット」という本で、画期的アイデアにつながる創造性をどのようにすれば発揮できるかについて書かれています。また、天才的なひらめきが訪れるのは、他の人より成功率が高いのではなく、単に挑戦する回数が多いだけである、とも記されています。

伊藤さんによれば、「クリエイティビティ=創造力というのは、自分のマインドセット(考え方)で決まっている。我々ぐらいの歳になると、自分をアーティストだと思っている人はすごく少ないというので、失敗の恐怖をどうやって乗り越えるか、最初のステップをどうやって通るのか、それをクリエイティビティにつなげるという、読みやすい本です」とのことです。また、「自分の恐怖を乗り越えることができる、そういうパターンがある。会社の中でクリエイティビティをもっと伸ばすこともそうですけど、自分の考え方をちょっと変えればアートでもなんでもできる」とも付け加えられています。

これに関連して、伊藤さんは、メディアラボにおける取り組みについて、次のようにも話されています。

いろいろな分野の人が論文でコラボレーションするのはとても難しいが、教育ロボットを一緒につくろうとすればつくれるし、それがちゃんと動いたかどうかは分かる。必ずものづくりにつなげるというのは一番のポイントになる。

日本企業っぽいことを言うと、稟議が必要だと、第一歩に時間がかかる。稟議書を書くとか、稟議をする間にもクリエイティブがなくなってしまう。分からない人に紙で説明しなければいけないから。うちメディアラボでは全くそういうのがないので、みんな勝手につくってしまう。そしてできたものを見せにくる。

さらに、番組キャスターから、「そもそもアイデア自体がひらめかない気がする。どうやってアイデア、創造力を鍛えればいいのか、引き出せばいいのか」と問われた伊藤さんの答えは、

創造力はもともとあると思う、人に。とくに子どもには。子どもは何で?何で?と常に聞く。質問することによってアイデアが湧いてくる。

○人が言ってきたことをこなすという方向に大人はなっていく。会社では役職が決まっていたり(もするから)。

○そもそも論の話し(です)。そもそも「何でこれをやっているんだっけ?何で新聞は紙なんだっけ?何で車はこうなんだっけ?」と考え直す余裕とパーミッション(許可)がもらえていない大人の社会。

○「何でこうなっているの?」そうすると「何でだっけ?」となって、実はそこでイノベーションが起きたりする。

そして、番組キャスターは次のように締めくくります。

「伊藤さん曰く、クリエイティビティはみんな持っているんだ、忘れてしまったんだ、と。これから簡単な仕事というのは、人口知能やロボットがどんどん取っていく時代になる。自分の仕事がいずれロボットに取って代わられると思う人はこの本を読んで、自分のクリエイティビティを取り戻してほしい、と」。

(本の内容やMITメディアラボの紹介にとどまらず、創造力の本質やものづくりにつなげる重要性のお話しに共感を覚えて投稿させていただきました。なお、文中のカッコ内は、私の判断で補足したものですが、これも含めて聞き違いや誤解などありましたら、ご容赦のほどお願いいたします。会員№102 中村記)