家電ベンチャー企業の社長(本社:神奈川県横浜市)

投稿日: 2019/01/07 12:23:08

ビーサイズの八木啓太社長

NHKが平日の朝、4時30分から7時45分まで放送している「おはよう日本」というニュース番組がありますが、長丁場なので、7時からは高瀬耕造と和久田麻由子の両アナウンサーが主に担当しています。2019年1月7日(月)のその放送中、和久田さんがビーサイズの八木社長に新春インタビューをしており、7時24分からの8分ほどですが、モノづくりについての興味深いお話しがありましたので、ご紹介いたします。なお、八木社長の談話部分はカギ括弧で示していますが、聞き間違いなどありましたら、ご容赦をお願いいたします。

既にご承知の通り、ビーサイズは次々とヒット製品を生み出している家電ベンチャーの先駆けとして、これまでにも各メディアに取り上げられていますが、ここでは、和久田さんによる次のコメントから始まります。

今日本の大手家電メーカーは海外メーカーの勢いに押され苦戦が続いています。日本のモノづくりが再び脚光を集めるための秘策を伺ってまいりました。

そして、NHKの和久田と申します。八木と申します、よろしくお願いたします。というお二人のご挨拶の後、以下のナレーションが流れます。


ビーサイズのつくる製品

八木啓太さん、35歳です。開発と設計に特化した家電メーカーとして注目されています。八木さんが最初に開発した製品はこちら。一見、普通のデスクスタンドですが、使用しているのは目の疲れの原因とされるブルーライトを大幅に抑えた特殊なLED。照明は明るければいいという発想ではなく、体に優しくありたいという考え方から生み出されました。

こちらは置くだけの(スマホ)充電器。世界に先駆けて開発されました。コードだらけの無機質なオフィスや家庭で少しでもストレスを減らしたい。そんな思いが木目のデザインに込められています。八木さんの製品に貫かれているのは社会との共感です。


社会との共感を目指す

家電における共感ってどういうことなんでしょうか?という和久田さんの問いに。

「こういうものを我々はつくったので、どう共感してくれますかということではなくて、逆に我々が顧客の気持ちに共感しにいくというのがすごく大事なんじゃないかと思っています。ユーザーさんが実は潜在的には思っているんだけど、うまく言語化できないような、そういったニーズだったり、欲求だったりというものを、顧客側の本当の気持ちに立ってつくるということが、真の共感を生むのかなと思っているので、それに日々チャレンジしています」。


小さな組織によるモノづくり

八木さんは大学卒業後、大手メーカーで医療機器の設計を担当していました。入社3年目の時、もっと人々の思いを叶えるモノづくりに挑戦したいと会社を辞め、たった一人で起業しました。今は15人の社員とともに製品開発に取り組んでいます。

世の中にない価値をつくるのは小さなメーカーのほうが向いていると?という問いに。

「ああ、そうですね。リスクのある、しかし、斬新な製品というものを世の中に提案していくには適した組織体だと思いますので。分厚い企画書を作ってですね、何度も稟議を通して、一度通るともう変更がきかない、ということは我々にはなくて。本当に自分が使ってほしいと思うかっていうものを、突き詰めてつくっていくことがスピーディーにできるというのは、多様化するニーズの時代において非常に時代に合っているかと思います」。


社会の課題を解決する

その八木さん、今取り組んでいるのが社会の課題の解決につながる製品の開発です。これはAI機能を搭載した子供の見守り端末です。通常、保護者が子供の居場所を確認するには、その都度、子供に持たせた端末を検索する必要があります。しかし、下校途中に公園に寄るなど道草していても保護者が検索しなければ、どこにいるのかは分かりません。

こちらは八木さんの開発した見守りです。AIが子供の居場所をその都度、把握して自動的に連絡を入れます。今年中には寄り道をしたりすると注意を促してくれるサービスも始まります。保護者の気持ちに応えた新しい見守りサービス、世界初の製品です。

「親御さんも安心して子供たちを送り出すことができるような地域社会、家庭の安心を実現したい。社会の問題を一つ一つ解決していこうというのが我々のミッションになっていまして。本当にたくさんの人の切実な困りごとを解決しようと」。


これからの家電開発のカギ

八木さんは、これからの家電は、AI機能を活かし、安心、癒し、美味しさなど数値では表せない心に訴えるモノづくりがカギになると考えています。そして、そこで不可欠になるのが発想する力だといいます。

「生活していく中で、本当に忙しくて、心を失ってしまったりですとか、もっと人間らしく楽しく喜びたいなあって思うこと。そういうきっかけだったり、ヒントみたいなものが、実はこうしっかりアンテナを張っていると気付けることがある」。

切実なところに、手を差し伸べる、はあ、という和久田さんの感想に。

「非常にこう些細な生活の気配まで先回りして提案をする。そこに感性を研ぎ澄ませて、そういった製品やサービスを作っていくんです」。


○柔軟な発想を生むために

柔軟な発想を生み出すためにオフィスのレイアウトにも工夫がありました。

「こちらの奥の島はですね。AIロボットの端末を開発するチームになります。そして、こちらの島はソフトウエア、AIの脳みその部分を開発する、ソフトウエアの開発チームになります」。

八木さんのお席はちなみに?という問いに。

「私の席はこちらの真ん中の席になります。メンバーと直ぐ会話できるための一等地の真ん中で仕事をしています」。

社員のアイデアを直ぐに形にするためにAIのプログラミングと端末の開発はすべて自前で行っています。そのために若手のプログラマーを育てることにも力を注いでいます。八木さんは自分たちの姿勢が家電業界だけではなく、日本のモノづくりに変革を起こすきっかけになればと考えています。

「スペック競争だったり、単純なこう、モノだけの商売だけでは中々新興国に勝てないですし、成り立たないってことが、残念ながら証明されてしまった10年だったかというふうに思うんですよね」。


日本のモノづくりが生き残るには

日本のメーカーがこの先も世界でモノづくりの中で生き残っていくためには何が必要ですか?という問いに。

「そうですね。新しいモノづくりのあり方、メーカーのあり方っていうのが、今後ますます問われていく時代だなあというふうに思っています。モノだけではなく、モノを起点として、そこで新しい生活が生まれたり、新しい人生観が生まれたり、幸せになるような生活提案をしっかりしていけるようなサービスというのを我々もつくっていきたいなあ、と思っています」。

いやー、これ、でも、ふわっとした、こうニーズをしっかりとつかみ取って、それを形あるものにして売っていかないといけない。これから大変ですよね、モノづくりは、というのが高瀬さんの感想です。

和久田さんは、八木さん、まさにその使った後にどう感じるか、どんな気持ちになるかを重視してつくっていらっしゃって。やはりこれからは、その気持ちをいかに繊細にくみ取るか。そして最先端の技術をどう活用するか、創造力が問われる時代になりそうですね、とまとめられました。(会員№102 中村記)