イエメンの気付け薬入れ

投稿日: 2016/08/04 1:00:40

携帯に便利な真鍮製の気付け薬入れ

(太線の格子は5㎝ 間隔の表示です)

今から15年ほど前、中東・アラビア半島の南端に位置するイエメンを旅したことがあり、その山岳要塞都市のアル・ハジャラで見かけた露店で入手した真鍮製の気付け薬入れです。少々値が張りましたが、表面に施された彫金細工の美しいイスラム文様に惹かれ、店にあった二つのどちらにするか決めかねて、両方とも買ってきてしまいました。

その注ぎ口は、本体と鎖で繋がれた栓をしっかりと捻じ込むようになっているので、液体の薬が漏れるようなことはありませんし、その鎖をベルトなどに通せば、持ち運びにも大変便利です。また、薬を飲む時は、栓を開けるので、鎖も外れ、そのまま口元に持っていくことができるというアイデアです。

容量は大きいほうが32ml、小さいほうが22mlありますので、実用には十分ですが、厚手の真鍮板から作られたようで、重さがそれぞれ52g、34gあり、手に持つと少しズシリときます。お酒がご法度のイスラム教徒の人たちが、この容器に何を入れたかは分かりませんが、私たち異教徒には、ウィスキーやブランデーがピッタリくるような気がします。

日本とはあまり馴染みのないイエメンですが、世界文化遺産に登録されている首都サナアや摩天楼都市シバームなど、アラブ文化を代表する素晴らしい建築物に溢れています。また、紀元前10世紀頃は、エルサレムのソロモン王を訪れたシバの女王の国として繁栄していたともいわれ、古代ギリシャの時代には「幸福のアラビア」と呼ばれていたそうです。しかし、今はご存知のように、石油資源にも恵まれず、中東で最も貧しい国の一つに様変わりし、政情不安から内戦が頻発しています。私のイエメン旅行も、安全上、団体ツアーしか許されず、前後を警護の車両に挟まれて移動する有様で、随分と不自由な思いをしましたが、あの数少ない渡航可能な時期を逃していたら、この気付け薬入れをご紹介することもなかったでしょう。(会員№102 中村記)