34. 2020年薬友会報30 寄稿文 (2)

千葉大学薬友会報30 から転載

yakuyukai.net/kaihou

2020年(令和2年)3月

退任のご挨拶

齊藤 和季

ちょうど35年前の昭和60年(1985年)4月に千葉大学薬学部生薬学研究室に助手として赴任して以来、長きにわたり皆様のお世話になりましたが、本年3月末日をもって定年退職いたしました。最初の10年間は村越勇名誉教授(残念ながら先生は本年1月に穏やかに永眠されました(合掌))の下で、助手、講師、助教授として働き、その後25年にわたり遺伝子資源応用研究室の教授として務めてまいりました。

初めて本学に着任した西も東も分からない時に、村越先生から「千葉に骨を埋めるつもりで…」と言われましたが、その時はあまりに先のことなので実感がまったく沸きませんでした。その10年後に教授になった時には、学外の大御所の先生から「定年まで四半期もあるのだから、常に新しいことに挑戦し続けないと10年でだれますよ」とも言われました。そんなこともあり、この35年間はうまくいったかどうかは別問題ですが、常に変革を求めて新しい分野やテーマにチャレンジしてきたと思います。特に、植物代謝産物についての植物ゲノム科学を開拓し、それをより一般性の高い分野に育てること力を注ぎました。

この間、しばしばドンキホーテのような振る舞いの私に付き合って一緒に走ってくれた新旧の研究室スタッフの皆様、ポスドク、大学院生、学生の皆様には深く感謝申し上げます。特に、2005年から私が理化学研究所にも研究拠点を立ち上げ注力したことにより、スタッフの方々には通常以上の多くの苦労と負担をかけたことと思います。実際に最近10年〜15年は、山崎准教授らが研究ビジョンも含め、実質的な研究室運営、大学院生・学生教育と研究指導、数々の研究費プロジェクト推進を真に主導的に担っていました。その間、私の役割は単なる広告塔にすぎなかったと思います。

私が千葉⼤学に職を得て以来、どれだけ⼈の役に⽴ったか?どれだけ社会の役に⽴ったかを?を振り返ってみますと内⼼忸怩たる思いです。しかし、私と共に歩んだ若い仲間や次世代の皆様に期待して、私の本学部での役⽬をここで終えることにいたします。この35年の時間の中で、本学部や全国の薬学部を取り巻く研究教育の環境が大きく変化しました。いわば旧世代の最後の教員としていま思うことは、変化に適応することは大事ですが、その核となる根源的な信念を磨くことはもっと大切かと思います。

最後に、千葉大学薬学研究院・薬学部のよさは、構成員がお互いに自らの個性や良心を尊重して、良識的な考えと信義に基づいて行動ができる点にあると思います。本学部・研究院のますますのご発展をお祈り申し上げます。長い間、ありがとうございました。