2017年3月23日
卒業生の皆様、また、卒業生を支え続けて頂きました、ご父兄の皆様、千葉大学薬学部のご卒業おめでとうございます。薬学部を代表して一言お祝いを述べさせて頂きます。
皆様は4年前あるいは6年前に、それぞれ大きな夢を持って薬学部に入学されてきた事と思います。在学中の4年間、あるいは6年間はどうでしたでしょうか?
一人一人がそれぞれ、勉学やサークル活動に精一杯力を注ぎ、あるときは大きな喜びや幸せに包まれ、またあるときはつらい思いや落胆や味わったこともあるかもしれません。その中で、本日の卒業を迎えられた皆様一人一人のご努力を讃え、祝福したいと思います。
日本語で卒業という言葉は、学校での業(「ぎょう」や「なりわい」)すなわち勉強を終える、という意味になりますが、英語では‘Graduation’または’ Commencement’と言います。この二つの英語の言葉のもともとの意味は日本語の意味とはかなり異なっていて、終わりではなく正反対の意味があります。
‘Graduation’はラテン語で段階や階段を意味するgradus(グラドゥス)という言葉から来ており、Graduationは新しい段階に進む、階段を一段上がるという意味になります。また、’ Commencement’は、始まりや開始、第一歩を踏み出すという意味です。さらに進んで「責任の開始」という意味もあります。このように、卒業は終わりではなく、人生の新しい段階に進む第一歩、次の責任あるステージの始まりです。これから新しく責任ある一歩を踏み出して社会に出ると、学生だった今まで以上に、つらいこと、思い通りにならない事も多いかと思います。
武家社会を完成した徳川家康の遺訓に、
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。
こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基。
おのれを責めて人をせむるな。
及ばざるは過ぎたるよりまされり。
という言葉があります。
確かに人生は重荷を背負った苦しい長い山登りのようです。しかし、苦しい山登りの途中に、時々、見晴らしのよい平らな場所があります。そこで立ち止まると、そこには高原の爽やかな風が吹き、眼下に広がる地上の景色や遙かにそびえ立つ壮大な山並みを眺め、清々(すがすが)しい気持ちになります。今日のご卒業はそのように捉えることが出来ると思います。
どうぞ、この卒業の機を、重き荷を背負った人生の長い山登りの小休止として、爽やかな風を感じ、周りの眺望も楽しんで、これからのまだまだ長い人生の新しい段階の第一歩として下さい。
最後に、皆様、千葉大学薬学部で学んだことを誇りに思って今後の人生を歩んで下さい。皆様の社会での大いなる活躍を期待し、今後のご幸運をお祈り申し上げます。
千葉大学薬学部長 齊藤和季