18. 2009年植物生理学会

“祝辞”日本植物生理学会50年の流れ これまでとこれから

2009年11月1日、日本植物生理学会運営委員会、pp 16 (2009)から引用、再掲載


この度は、日本植物生理学会創立50周年を迎え、会員、関係者の皆様、誠におめでとうございます。日本植物細胞分子生物学会を代表して心より祝辞を述べさせていただきます。

日本植物生理学会は基礎的な植物生理学を中心とした植物研究領域の学術研究団体として、半世紀にわたり我が国の植物科学研究を牽引されてきました。個人会員数は2500名に及び、おそらく日本の植物科学関連の学術団体では最も大規模な学会の一つに数えられます。また、学会誌であるPlant & Cell Physiologyは植物科学分野ばかりでなく、広く科学分野全般の中で我が国の最もインパクトファクターの高い雑誌に成長し、日本の科学技術全般の牽引車となっています。これらの輝かしい実績は過去50年にわたる多くの貴学会の諸先輩、現会員、学会関係者のたゆまぬ努力の結果であり、その努力と業績に深く敬意を表します。

私どもの日本植物細胞分子生物学会は、1981年に日本植物組織培養学会として設立され、その後1995年に植物核酸タンパク研究会と合同して日本植物細胞分子生物学会と改称され現在に至っており、2011年には創立30周年を迎えることになります。本学会は、植物組織培養、分子生物学、細胞工学の基礎研究とその応用開発研究の発展をめざして、理学、農学、薬学、工学などの多方面の分野における研究者の協力と研究情報の交流を図ることを目的として活動を行っております。このようにいわば日本植物生理学会の弟分ともいえる本学会ですが、兄弟でも(むしろ兄弟であるがゆえに)性格や指向性がおのずから異なりますように、本学会は日本植物生理学会に比べてより応用的な植物バイオテクノロジーとその基盤研究の指向性が高く、このことは学会誌の名称がPlant Biotechnologyであることにも表現されています。

植物科学をとりまく世界と日本の現況を鑑みますと、世界人口の爆発的な増加、グローバルな二酸化炭素濃度の増加と地球温暖化、それらの環境変化に伴う食料不足、新型感染症の蔓延、生物多様性の減少などが大きな問題となっております。このような昨今の環境、食料、健康など地球的規模の問題に対して、今ほど植物科学および植物バイオテクノロジーに対する期待が高まった時はなかったと思います。これらの問題はすでに私たちの日常生活に直接影響するところまで来ており、研究関係者ばかりでなく一般市民の方も植物研究に大きな期待と関心を寄せております。広く植物科学関連の学術研究団体はこのような幅広い層からの大きな期待に答えるべく活動しなければならないと思います。特に、植物の分子生物学や細胞生物学を基礎としてその応用をも目指す日本植物生理学会と日本植物細胞分子生物学会の両学会には大きな期待が寄せられており、その期待に積極的に答えるべき責任があります。今後さらに両学会の連携推進による植物科学全体の発展への期待が高まってくると予想されます。

日本植物生理学会と会員の皆様に対して、創立50周年のお祝いと次の半世紀に向けた益々のご発展をお祈り申し上げます。