● 1 ● 研究室の特徴
当研究室は平成6年に薬学部附属薬用資源教育研究センターの設立と同時に誕生した全く新しい研究室です。この全国的にも極めてユニークな研究室が担当する研究・教育分野は、現代の爆発的な分子生物学やバイオテクノロジーの進歩を基礎として、薬用植物資源を遺伝子レベルで取り扱い、人類の健康に寄与することを目的とする先端的な分野です。この目的のためには、まず有用物質が作られる仕組みを分子のレベルで精密に解明し、それを基礎に人為的に操作し応用することが必要です。薬用という立脚点を見失わず、かつ近視眼的な薬用にとどまらず、より一般性のあるスタンダードの高い研究を目指しています。
現在の教室員構成は、教授 1、講師 1、助手 1、大学院博士課程 2、修士課程 7、研究生 2、卒論生 5 の総勢19名(うち留学生が3名)で、活気あふれる日々を過ごしています。
● 2 ● 研究テーマ
研究を進めるうえの基本的戦略として、植物からの有用物質生産に関わる遺伝子のクローニングとそれのエンジニアリングを設定しています。
特にエンジニアリングは、最終的には有用なトランスジェニック(遺伝子組み換え)植物をつくることに主眼をおいています。従って、日常的には遺伝子操作の実験をしていますが、生薬学や天然物化学のセンスも失わないように心がけています。具体的には、含硫黄代謝物、アミノ酸やアルカロイドなどの生合成系に力を入れています。
また、甘草などの薬用植物の成分変種を遺伝子レベルで性格付けをして成分パターンを決定している遺伝子因子を単離しようとしています。新しく店開きした研究室の責任として、より先鋭化したテーマと手法に力を入れようと努力しています。
● 3 ● 研究室の日常活動
典型的なまじめな(?) 院生の 1日をご紹介しましょう。
朝9時半にラボにきて、すぐに昨夜トランスフオームした大腸菌のプレートをみる。コロニーを拾ってプラスミドDNA抽出用の培養を始める。DNA シークエンスのためのゲルを調製して、シークエンス反応をセットする。昼食まで時問が少しあったので、すでに上がっている塩基配列をインターネットで解析する。インターネットではちょっと寄り道してハーバード大学のWWWサーバーから新しい実験の関連情報も入手する。ついでに今日のホワイトハウスものぞいてくる。
昼食は西千葉駅前の居酒屋のランチをみんなで食べる。昼食後に、先生と最近のデータについてディスカッションする。
午後はトランスジェニック植物の培地の交換、ようやくカルスからシュートが分化してきた。朝始めたプラスミドDNA調製をして制限酵素の確認反応をセットする。
5時過ぎにセミナー室にお茶を飲みに行ったら、えびせんのかけらしか残っていない。気を取り直して DNA シークエンサーにサンプルをロードして一安心。砂糖とクリープをたっぷり入れたコーヒーを飲みながら実験ノートの整理、それがすむと来週の文献紹介の準備、一編の最新論文をかなりきっちりと読むことが要求される。
9時すぎから卒業生の贈り物のビールを3、4人で飲み始める。遅い夕食をとって近くのアパートに帰るのは11時。後は風呂に入ってスポーツニュースをみて眠りにつく。
● 4 ● 新人に期待すること
大学、特に大学院での理想的な教育は、独創性に富んだレベルの高い研究に直接携わることによって得られると思います。従って、就職のためだけの準備でなく、当研究室にきて一流の研究をしたいという意欲のある人を期待します。
●斉藤和季教授のプロフィール●
昭和52年 東京大学薬学部卒業
昭和56年 同大学院薬学系研究科博士課程中退
昭和56年 慶応義塾大学医学部助手
昭和60年 千藥大学薬学部助手
昭和62年 ベルギーゲント大学遺伝学教室留学
平成 2年 千葉大学薬学部講師
平成 5年 千葉大学薬学部助教授
平成 7年 千葉大学薬学部教授