【卒業生インタビュー Vol.2】経営学科OB 前田貴文さん

「失敗できる学生時代 いろいろなチャレンジを」

卒業生インタビュー vol.2

失敗できる学生時代 いろいろなチャレンジを

前田貴文さん(2013年 経営学科卒業)
勤務先:矢崎総業株式会社
https://www.yazaki-group.com/

出身ゼミ:山口裕之ゼミナール
出身高校:東洋大学附属牛久高等学校

経営学科の学生が卒業生にインタビューし、仕事のやりがい、経営学科での学びの経験、学生への応援メッセージなどを語っていただくこの企画。今回は、矢崎総業株式会社にお勤めの前田貴文さん(2013年経営学科卒)のお話を伺いました。インタビュアーは経営学科3年生の北村彩華さんと長谷川安香さんです。

手本のない仕事:考え、議論しながら進める仕事の楽しさ

―― どのようなお仕事をされているのですか?

 私が勤めている会社は、ワイヤーハーネスを中心とした自動車部品を手がけるメーカーです。ワイヤーハーネスとは、車の神経や血管に相当する部品です。世界中の自動車メーカーがお客様であり、44ヵ国で事業を展開しています。

 グローバルに事業を展開するうえでは、人材の育成が不可欠です。現在、我が社では約600名が海外現地法人で活躍していますが、そうした人材の育成をサポートする仕事をしています。具体的には、「アドベンチャースクール」という海外研修プログラムの企画・運営を担う部署で働いています。この海外研修プログラムは、入社前に(または休職して)行い、内定者(または若手社員)に1年間の海外経験を積んでもらおうというものです。私自身もこのアドベンチャースクールの経験者です。私自身が現地で活躍できる人材になり、最終的にはそうした人材の育成をサポートできる人材になることを目標に、日々の業務に携わっています。

――  前田さんは学生時代から海外志向が強かったのでしょうか。現在のお仕事に就くまでの経緯を教えてください。

 就職活動を始める前の時点では、海外で仕事をしたいということは全く考えていませんでした。そもそも、留学経験もありませんでしたし、海外には出たくないとも思っていました。ただ、国内市場が縮小する20~30年後の将来のことを考えると、グローバルに事業展開している企業で働きたいと考えていました。

 そうしたなか、矢崎総業に就職することを決めました。社員をとても大切にしていて、成長するチャンスをたくさん与えてくれるこの会社であれば、自分も変われるのではないかと思ったからです。その最初のチャンスが「アドベンチャースクール」で、それにチャレンジしました。海外志向になったのは、「アドベンチャースクール」で海外経験を積ませてもらってからですね。帰国後、この研修の企画・運営を行う部署から声がかかり、今の仕事に就くことになりました。

―― 現在の仕事について、やりがいや楽しさを教えてください。

 お手本がないものをみんなでつくっていく、というところですね。「アドベンチャースクール」という海外研修は、我が社独自のプログラムであり、お手本になるものはありません。「こうすればこうなる」というような当たり前の解答がない中で、「これがいいんじゃない」「あれがダメなんじゃないか」と常に考え、部署内で日々議論しています。要するに、仕事の内容は事前に決まっていなくて、それ自体を議論しながら仕事を進めています。この点が楽しいところですかね。

―― どういったことを議論されているのですか。

 たとえば、この研修の経験がその後の仕事で活かされるには、どのような研修内容が望ましいのだろうか、といったことを日々考え、同僚や上司と議論しています。海外研修に対する温度感はひとそれぞれで、消極的・否定的な人もいます。さまざまな考えを持った人々に、この研修の目的を伝え、理解、納得してもらうことは大変です。

 さらに、受入れ先にとって単なる負担にならないよう、そちら側にとってもメリットとなるような企画を考える必要もあります。この取り組みが、関係する全ての人、そして会社全体に対してプラスを与えるものになるよう、様々な視点から考え、試行錯誤を重ねています。この作業はとても大変ですが、その分、やりがいや楽しさを感じられます。

考えを伝えることの大切さ

―― 大学で学んだことは現在の仕事で役立っていますか。

 ゼミでの経験はとても役に立っています。ゼミでは議論する機会がたくさんありました。自分の意見を考えて相手に伝え、相手の意見を聞いたうえで考えを組み立て直し、ふたたび相手に伝える。こうしたトレーニングを通じて、相手に自分の考えを論理的にわかりやすく伝えることが出来るようになったと思います。この点は現在の仕事で非常に役立っています。

 また、ゼミ長というリーダーの役割も経験しました。この経験も役立っています。私のゼミの同期は個性的な人が多く、考え方の異なる彼らをどうまとめるかで苦労しました。組織が上手くまとまり機能するためには、相手の考えを読み取り、それを尊重したうえで、自分の考えを積極的に伝えることが必要です。あたりまえのことですが、組織として動くということに関してはゼミも会社も同じです。この経験を学生時代に積むことが出来て良かったと思います。

―― ゼミ以外で得たものはありますか?

 もちろんゼミ以外の講義も役に立っています。企業経営に関する基本的な知識を身につけたことで、会社全体の仕事をイメージできるようになり、自分の仕事を多角的に捉えることができるようになったと思います。上司や同僚、さらには他部署の人の仕事をイメージできるということは、先ほどお話したこととも関連していて、自分の考えを組み立てるうえでも、それを相手に伝えるうえでも、非常に役立ちます。

 経営学部で学ぶような基本的な知識を知っているのと知らないのとでは、会社に入ってから大きく違ってくると思います。経済や経営の知識は身につけておくべきです。

さまざまなことを学べる機会があった大学生活

―― 就職後のことを考えて経営学科への進学を選択したのですか。

 たしかに、経営学が将来役立ちそうだと思ったことは、経営学科を選んだ理由のひとつです。将来会社で働く際に身につけておくべきことを学べるのだろうな、と思っていました。でも、どちらかというと、漠然と考えていたくらいで、決め手になったわけではありません。経営学科に進学する決め手になったのは、私の高校で模擬講義をしていただいた経営学科のある先生に対する憧れでした。

 その先生は、経営学について想像できない高校生相手に、その魅力を論理的にわかりやすく説明してくれました。その説明を受けてこの学科は魅力的だなと思ったわけですが、それよりも、そう感じさせるような話し方に驚き、憧れました。この人のように論理的に説明できるようになりたい。この大学の経営学科に入ればそうした能力を身につけることができるのでは、と思ったのが決め手ですね。

―― 実際、入学してどうでしたか。東洋大学経営学部の魅力は何でしょうか。

 私はもともと自分の意見を感情的に話すタイプでしたが、ゼミにおける議論や発表の機会を通じて、論理的に考えを伝えることが出来るようになりました。この点については、会社の同期達にも負けていないと思っています。

 東洋大学経営学部の魅力としては、まず、若くてやる気のある魅力的な先生がたくさんいることですね。まあ、その分、そうした先生の授業は厳しくなってしまうわけで、学生から敬遠されちゃう部分もあるんですけどね(笑)。

 ゼミも魅力だと思います。経営学部では2年次からゼミ活動が始まります。ゼミでは、1学年約10人が協力して、要するに組織として学習を進めます。この組織の経験を通じてたくさんのことを学べます。

大学生時代=チャレンジできる期間 一歩を踏み出す大切さ

―― 大学生の間にやっておけばよかったなと思うことは何ですか。

 振り返ってみると、もう少しいろんなことに挑戦しておけばよかったな、と思っています。今の仕事では、海外の人たちと頻繁に交流します。考え方や価値観の違う人たちと触れ合うことは、非常によい刺激になります。日常の生活では得られない気づきがありますし、そうした気づきは自分を磨く原動力になります。学生時代、そうした刺激をいろいろなところから得ておけばよかったなと後悔しています。特に、留学にチャレンジしなかったことは後悔していますね。

―― チャレンジするには勇気が必要です。どうしても消極的になってしまって…

 そうですよね。私も学生時代はそうでした。ただ、社会に出てみて思うことは、何事もやってみないとわからないということです。やる前から決めつけるのではなく、まずはやってみる。そうすることで、視野が広がり選択肢も増えると思います。
東洋大学では、ゼミ以外にも、留学や、資格取得、ボランティア活動などを支援する体制が整っていて、学生に対してたくさんの機会が与えられていたと思います。これらの制度を十分に活用し、学生のうちにたくさんの刺激を受けるといいと思います。

 学生時代はどんなに失敗はしてもやり直せます。学生時代はチャンスや時間がたくさんあるので、少しでも興味があることには物怖じせずにチャレンジすべきだと思います。ためらっているなら一歩踏み出してみて欲しいですね。積極的にチャレンジして後悔のない学生生活をおくってください。 

 ―― 最後に、この記事の読者である東洋大学生や東洋大学への進学を考えている高校生にメッセージをお願いします。

 自分はどういう社会人になりたいのかという将来のビジョンを持ってください。将来のビジョンを持つことで、物事に取り組む姿勢は大きく変わります。今の私は、この業務に就いて日が浅く、右も左もわからないというのが正直なところです。ふつう、そうした状況であれば、与えられる仕事をこなすだけになり、仕事は辛く苦しいものになりがちだとおもいます。ただ、私は、「この分野であれば前田に任せておけば安心だ」と頼られる人材になりたいというビジョンを持っています。このビジョンがあることで、日々の仕事に意味を見いだすことができ、仕事を楽しめています。また、そこからたくさんのことを学べています。

 こうしたことは、就職活動にも、大学受験にも当てはまると思います。内定をもらうことや、大学に合格することはゴールではありません。自分はどうなりたいのかという将来のビジョンを持つことが大切だと思います。そのためには、いろんな人に出会って、いろんな話をたくさん聞くことが重要だと思います。

―― 本日は貴重なお話を伺えて本当によかったです。どうもありがとうございました。

訪問日:2015年7月15日
訪問先:矢崎総業株式会社 Y-CITY(静岡県裾野市)

〔文責〕
経営学部経営学科3年 北村彩華(写真左)
経営学部経営学科3年 長谷川安香(写真右)