おじさんでも製図は2回で合格

Post date: Dec 22, 2017 1:25:36 AM

はじめに簡単に自己紹介します。年齢は50代で先生とあまり変わりません。若いとき設計事務所にいましたが、今の仕事は主に事務です。20代後半で結婚し、子育てと仕事で忙しくなり、気がついたらこんな年になっていました。一級建築士資格は私にとっての一つの区切りなので、取るまで頑張るつもりでした。しかし、一言で言えば気合が足りなかったのですが、勉強時間はいつも1~3ヶ月程度なので、学科は連続ではないですがトータル10回くらいは受けたと思います。そうこうしているうちに子供も成人し、ちょうどいいタイミングで仕事も余裕のある職場に配属になったので、一昨年ようやく学科が受かりました。しかし年なのかバテてしまい、初年度の製図は早々にあきらめてしまいました。やったことと言えば日建のWEB講座を見るくらいで、基本的な製図のノウハウを理解する程度でした。通信添削も1枚も出さずぶっつけ本番で試験日を迎え、結果は当然のことながらランク4でした。

初めての製図の本試験を受けてみて、時間のなさにと異様に緊張した試験会場のムードに圧倒されました。6時間半も緊張が継続し、狭い席で体力的にも辛く、製図試験のハードルの高さを思い知らされました。

試験が終わって帰宅した日の夜、来年どうしようかと考えあぐねていました。とにかく枚数を描かせる資格学校は自分には合わなそうだし、独学では雲を掴むようだし、そんな時またまたネットでフォーラムをみつけました。体験談で語られるエスキスが30分で終わるとはどういうことなのか、合格された方が共通して語られる覚醒するような瞬間とは?そんな謎を確かめたい魅力もありました。図面はそもそもフリーハンドで描いていましたし、マンツーマン講義で製図試験のいろはから教えていただけることもあり、試験日翌日にはもうフォーラムに仮申し込みをしました。

ガイダンスの後、1月末から講義前半が始まりました。うちのパソコンは7年前の旧型なのでフリーズしスカイプの音声や映像が止まることがしばしばありました。一度は再インストールして2時間棒に降ったこともありました。しかし、そういった環境でも聞けば何回でも説明してもらえますし、20回も講義があるので最終的には先生の言われたことは大体理解できたものと思っています。

前半講義は2週に1回くらいのペースで過去問を解いていきます。私はいつも年休を取って平日の午前中を講義に当てていました。職場には事情を話し理解してもらいました。講義時間は3時間で、まず宿題となっている前回講義でダメ出しを受けた課題をきちんと製図してチェックしてもらいます。その後、新しい過去問を1時間くらいかけて自分でエスキスします。ずっと先生は見ていますので、本試験のように頭はフル回転して緊張します。何の予習もなく初見でいきなり本試験問題を解くこの訓練は、実際の本試験で大変役立ちました。しかし前半講義では復元法を理解していないので、いつもダメ出しばかりでした。最後の15分くらいで先生から解答方法が示されますが、これがシンプルな形で課題文に書いてあることが過不足無く、ピッタリ当てはまっていて毎回感動していました。設計すると答えが何通りもありますが、復元法だと問題作成者のモデル建物案の復元なので答えは一つしかありません。私は思い込みが強いためか、ぼちぼち目覚める生徒さんも出てくるGW明けになっても、相変わらず設計をしていました。先生からは復元法が理解できると、世界がパーと広がる感じだよ、と言われていました。まるで座禅をする修行僧のようですが悶々とした日々が続きました。

一向に進歩しない私を見て、今までやった過去問を30分でエスキスする30分トライアルをやってみるよう勧められました。晩酌しながらでも通勤電車の中でもよい、と言われたので、夜は居眠りしてしまうのでやめて、昼休みにやってみることにしました。また、この体験談を読むことも勧められました。体験談を読むことで、自分の現在の立ち位置が分かり、合格までの道筋と今やるべきことが理解できました。以降、試験直前までいわば羅針盤としてこの体験談は活用させていただきました。

先生に、復元法は詰め将棋みたいなものでしょうか、と質問したことがあります。うーん、近いけどやはり考えないからパズルだね、とおっしゃいました。あまりに理解できないでいるので、実際にパズルをやるよう勧められました。パズルのような感じとイメージすればいいものだと思っていたのですが、2回連続して実際パズルをやるよう強く言われたので、100ピース程の簡単なジグゾーパズルを買い実際にやってみました。7月半ばで来週は課題発表という時期に、ジグゾーパズルなんてやっていいのか、とあせる気持ちを抑えて、とにかくやってみました。すると、感覚が何かに似ていることに気がつきました。これかぁ!と復元法が理解できた瞬間でした。結局、復元法が理解できるまで、6ヶ月もかかってしまいました。

復元法が分かると、課題を与えられるのが待ち遠しくなりました。パズルも無心になれて楽しいですが、そんな感覚です。条件を機械的に当てはめてグニョグニョと入れ込むと出来てしまいます。ですから課題文の書き込みもほぼまっさらですし、チビコマで部門の位置が決まったら1/400で各部門に部屋をあてがえばいいだけなので、エスキス用紙はA3用紙1枚あれば十分です。また、課題文に書き込みがないと、見直しの時に課題文の文字が見やすくて読み落とし防止にも繋がります。

そんな浮かれ気分の中、7月下旬の課題発表後から講義後半に入りました。先生からはこれ以上新しい過去問はやらなくていいと言われたので、勧められたリゾートホテルを見に行ったり、計画の要点のパターンをひたすら書いて覚えたり、お盆明けまで講義も受けずにのんびり過ごしていました。8月中旬になり問題集も発売され、2問くらい解いた辺りからでしょうか、自分では意識していないのですが、また設計を始めていました。とにかく早く解ければ手順なんて少々守らなくても大丈夫といった勝手な思い込みがどこかにあり、復元法で解かずに、資格学校の問題をなんとなく解きやすい方法で解いていたのです。先生に喝を入れられましたが、本試験では面積や条件をシビヤにギリギリのところを突いてきますし、引っ掛けやトリックもあります。安易に解きやすい方法で解いては本番で試験元の罠にはまり、思考の無限ループに陥ってしまいます。

また設計を始めてしまったので先生からは、このままでは合格を保証できない、また30分トライアルを繰り返すよう言われました。資格学校の問題は復習などしなくていいというので、9月になっても過去問を復習してしました。資格学校の問題は数問しか解いていませんが、体験談でも同じような方がおられましたし、私も信じて先生の言われた通りやりました。

9月下旬に日建の模試を受けましたが、本番の時間配分や道具類のセッティング等、本試験に向けて大変参考になりました。思っていたより簡単で採点結果は合格ラインと言われたものの、エスキスに1時間以上かかっていたので、自分では納得する出来ではありませんでした。試験は減点法であり、エスキスに時間をかけずに作図と見直しに時間をかけるという意味も分かりました。

気を抜くとまた設計を始めてしまいそうなので、30分トライアルは試験日2日前まで続けました。そのうち30分トライアルも20分トライアルになり、毎日1時間の昼休みに2問ずつ解いていました。自宅では講義で言われた細かい指摘事項を見直して、資格学校の記述例を写経のようにひたすら書き写していました。

試験日の一週間前の最後の講義では、合格する図面と落ちる図面がどんなものかの説明がありました。落ちる図面は、合格図面とまったく同じプランなのに、課題文に書いてある内容が書き込まれておらず、設備の考え方も曖昧な表記でした。いくらいいプランであっても、減点法なので、課題文に書いてあることが書かれていなかったら落ちる、逆を言えば、プランはほどほどでも課題文に書いてあることが書かれていれば合格するということでした。

試験当日ですが、不覚にも2日前から寒気がし風邪をひいていました。栄養剤をガバ飲みしてなんとか熱は出しませんでしたが体調は最悪でした。おまけに朝のバスがよりによって40分も遅れて超満員のうえ、駅からダッシュして汗だくで試験場にギリギリ入りました。今更ながら試験日は何が起こるか分からないと痛感しました。

日頃の訓練のおかげで本試験ではあまり緊張せず臨めました。変則スパンは過去問で慣れていたこともあり、簡単に大枠は当てはまりました。と、ここまでは良かったのですが、1階宿泊室と敷地北東側が何もない空き地になってしまいこれでいいのか確信がなく、どこか見落としているかもしれないという不安でこのまま進めていいものか迷ってしまいました。あれこれ考えていたら1時間半も経ってしまったので、作図にいつも3時間以上かかることを考慮するともはや迷っている場合ではなく、いきなり作図に取り掛かることにしました。いつもは1/400で細かい部屋割りまで決めてから描きはじめていたのですが、いつもやらない考えながらの作図なので書いては消しの繰り返しで右手が腱鞘炎になり、作図時間は3時間半くらいかかりました。途中、地下1階平面図の寸法線が下に書けないことが分かり、やっぱりどこか読み落としがあったのかと嫌な汗が噴出してきました。右腕が硬直しているのでフリーハンドの線は筆圧がなくひょろひょろしているし、文字は自分でも読解不能でした。記述は思いつくままにぐちゃぐちゃな字で書きなぐったものの、大事な最後の見直し時間は30分程度しかありませんでした。見直しの修正であせって、合っているのを消してみたり、あたふたしている間に終了時間となりました。やはりこの試験を余裕で描き上げることはすごいことなんだと改めて感心しました。

先生からは、うちの生徒は皆合格するので再現図は描かなくてよい、試験場を出るとき合格を確信して出てくる、と最後の講義で言われていたのですが、もやもやした悔いの残る結果でした。帰宅後に設備の面積指定をすっ飛ばしてしていたという、とんでもないミスをしているのが分かり、大減点は免れずあーやっちゃったとずっと落ち込んでいました。しかも資格学校の回答例はどこもL型で自分とは違っていたため、半ばあきらめて来年のフォーラムの仮申し込みをして、憂鬱な日々を送っていました。

緊張した2ヶ月が過ぎました。合格発表の日、番号が・・・ありました。学校を卒業して四半世紀、心のどこかに常に引っかかっていたわだかまりのようなものから開放された瞬間でした。もっと感動するものかと思っていましたが、意外と普通でようやくスタートラインに立ったという気持ちです。今年の問題は今までの傾向と違っていたので、フォーラムでお世話にならなかったら恐らくエスキスで迷って図面を完成することが出来なかったと思います。しっかりした先生にマンツーマンで1回3時間も見てもらえるなんて他にはないでしょう。私が小林先生に出来ることといえば、体験談を書くことと製図で困っている身近な人にフォーラムを紹介することくらいしかできませんが、ご恩は一生忘れません。本当にありがとうございました。

復元法は設計ではないということですが、頭で考えず手が教えてくれるといいましょうか、まず大事なところを大枠で捉える復元法の俯瞰した見方は実は本来の設計方法なのでは、と思ったりします。試験元がどんなに変化球を投げようと、過去問を研究して製図試験で共通する根幹部分を徹底的に鍛えていきますので、どんな問題でも動じず対応できるようになります。このフォーラムにて、少しでも多くの方が製図試験を乗り越えていかれるのを切に願っております。最後に、この体験談を書いてくださった方に感謝の意を表します。新しい発見ができたので、苦しいというより楽しい1年を送らせていただきました。ありがとうございました。

【先生によく言われたこと】

・考えないこと。迷ったら他のことを進めること。さっき分からなかったことはそのうち分かる。

・問題文の語句は必ず理由があって書いている。なぜそのプランにしたのか、問題文から説明できないといけない。 (ただし、それが出来るのは問題の精度が高い過去問のみ)

・一番重要なのは縁空き。(建物の離れ)

【道具類】

道具類でよかったのは、自家製の製図版用枕です。作るのは超簡単で、洗濯機に敷くような10㎝角程度の溝のついた黒い防振ゴムを2枚重ねて輪ゴムで捲けば出来上がりです。鉛筆が転がらないちょうどいい角度で、ゴムが適度に振動を抑えてくれるのでフリーハンドにはお勧めです。