「生理動態モデルで集団内での行動の多様性を説明する」

2021年3月9日(火曜日) 17:00~

堀田淳之介さん(九州大学・東京都立大学)

「生理動態モデルで集団内での行動の多様性を説明する」

要旨

動物個体群では、個体間の相互作用により順位制が構築される。順位制が形成されると、優位な個体と劣位な個体の間で行動に違いが生じる。動物の行動は内分泌系によって制御される。例えば雄性ホルモンは闘争の能力を高め、さらには闘争頻度を増加させる。一方で、闘争での勝利経験がホルモン産生を促進させることも知られている。このホルモンと闘争のフィードバックにより勝ち癖・負け癖が形成される。本研究では、闘争とホルモン産生のフィードバックが個体群における順位構造をどのように形作るのかを調べるため、各個体のホルモン量を考慮した個体ベースモデルを構築した。闘争で勝利(敗北)することでホルモン産生が促進(抑制)され、後の闘争に有利(不利)にはたらく。これと同時にホルモン産生の高い個体ほどより積極的に闘争に参加する。闘争を繰り返し、各個体のホルモン量やサイズに不均質性が生じる過程を記述した。本モデルによって動物界にみられる多様な順位制構造について単一の枠組みで理解できるかもしれない。