どのような群集が

中立に見えるだろうか?

2018年6月25日

大槻 久

(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

群集の中立説では群集内の種構成は移入による新規加入と人口学的確率性によるバランスで決定するとし、種間の違いを捨象して考える。中立モデルは実際の熱帯林群集やサンゴ群集の構成をよく説明してみせ、このモデルから生み出された中立性検定によれば実際の群集の中立性は棄却されないことが多い。しかし現実の群集には種間差、種内相互作用、種間相互作用が存在すると考えられ、中立モデルの成功はパラドキシカルにも見える。

そこで本研究ではこの逆、つまり種内や種間相互作用が多く存在する群集をはじめから想定し、そのような群集が「中立的に見えてしまう」条件を探った。具体的には、種内相互作用の強さ、種間相互作用の強さとその性質(共生的、競争的、搾取的)をパラメータとして持つメタ群集-局所群集モデルを構築し、人口学的確率性の存在下での種個体数分布をシミュレーションにより求めた。また生成された群集に既存の中立性検定を適用し、本当は中立ではないのに中立に見えてしまう頻度を調べた。現在進行形の研究であるが、当日はその結果の示唆するところについて議論したい。