求愛行動の種特異性を規定する

神経メカニズムの探索

-ショウジョウバエを用いた取り組み-

2018年2月7日(水) 16:00-18:00

田中 良弥

(東北大学大学院生命科学研究科 博士後期課程)

「どのようにして種ごとに異なる行動パターンが生み出されるのか?」について、ショウジョウバエを用いて神経生物学の視点から研究に取り組んでいる。ショウジョウバエ属のオスは種によって異なる求愛行動を示す。

例えば、Drosophila subobscura (D. subobscura)のオスは交尾に至るまでに吐き戻した消化管の内容物をメスに与える婚姻贈呈を示す。このような婚姻贈呈は同属他種では見ら れないことから、D. subobscuraにおいて新たに獲得された行動であると考えられている。神経生物学において、モデル種であるキイロショウジョウバエを用いた研究から、求 愛行動の実現に関わる神経回路が明らかになりつつある。そこで、ゲノム編集法によって神経回路を可視化・操作する技術をD. subobscuraに適用し、キイロショウジョウバエ の知見を参照することで求愛行動の種特異性を規定する神経回路を明らかにできるのではないかと考えた。

本発表では、D. subobscuraに特異的に見られる婚姻贈呈に関わる神経メカニズムを紹介するとともに、神経生物学と進化生態学の接点について議論したい。