発見が駆動する動物行動学

11月26日(月) 15:00~16:40

駒場キャンパス 教養学部15号館409

沓掛展之

(総研大・先導研)

「発見が駆動する動物行動学」

動物を観察していると「あっ」と驚きの声を出してしまうことがある。

計画に含めていなかった行動、想定していなかった現象に出会うと、それまで考え てもいなかった可能性に気が付かされ、対象種の知識・理解が浅かったことを思い 知ることになる。練り上げた研究計画を破棄して、新奇な現象に焦点を当てた計画 を変更する場合も多い。これまでに研究されていない行動を調べる場合、その切り 出し方にも工夫が必要となる。十分なサンプルサイズ、整ったデータが取れないこと も多い。既存の理論体系に当てはまらず、仮説検証型が作法・王道である分野のな かで学問的な意義付けに苦しむことにもなる。研究を進める効率や速度、期待され る波及効果などの計算も狂う。これらの苦労を度外視しても、データ・事実を十分 に吟味し、論文として後世に残すことこそ、動物が垣間見せてくれた一瞬に立ち会っ た研究者の責務であるようにも思える。寄り道は楽しいし、概念的理論・意義は後 からついて来ればいい。今回のセミナーでは、発見が駆動した研究を三つ(八つ当 たりするシクリッド、鼻息で餌をとるゾウ、 仲間を邪魔するハダカデバネズミ)紹介する。 なお、これらのうち二つの研究は院生が行っ た研究であり(Mizuno et al. 2016 Anim Cog; Ito et al. 2018 PRSLB)、演者が主導的な役 割を果たしたものではない。これらの研究 を通じて、動物行動学の素朴な魅力を共有 できれば幸いである。

こまば教室_沓掛さん.pdf