「形態の多様化・複雑化進化:

マクロ進化プロセスからマクロ進化パスウェイへ」

2021年628日(月曜日) 15:00~

鈴木誉保さん(東京大学)

「形態の多様化・複雑化進化:マクロ進化プロセスからマクロ進化パスウェイへ」

要旨:

形態の多様化・複雑化がどのように生じてきたのかは、進化生物学の重要な問いのひとつである。これまでの研究では、形態のもつモジュール性が注目されてきた。すなわち、形態が互いに独立した要素へと還元できるがゆえに、(互いを干渉せずに)個々の要素の改変ができ多様化に結びつくというロジックである。しかしながら、これまでは要素群の独立性に焦点があてられ、要素群がいかに自在に組み合わせられているかについてほとんど議論がない。

本セミナーでは、複雑な形態にひそむデザイン原理とそのマクロ進化パスウェイを解説する。まず、形態のデザイン原理として多要素構造を紹介する。次に、形態が進化してくる道筋(=マクロ進化プロセス)を解析する数理手法解説する。さらに、この手法を発展させたマクロ進化パスウェイを解析した研究例を紹介する。そこでは、形態要素を獲得・消失を繰り返しながら、様々に組み合わせを変えて多様化・複雑化する形態進化のダイナミクスが見えるだろう。最後に、結合度の高い要素群が千数百万年ものあいだ系統的に保持され続ける要因として、生態学的な群集構造が影響している可能性が見えてきた。この点は未完成であるが議論したい。