つる植物の化学識別能力と

多様なまきつき反応

2016年8月23日(火) 16:30-18:00

深野祐也

(東京大学大学院農学生命科学研究科 附属生態調和農学機構 助教)

つる性の植物の地上部は、他の植物に巻き付くために垂直・水平方向に大きく展開し、様々な種類の株と接触する。つる植物にとってどの植物に巻き付くかは、その後の成長を左右する極めて重要な決定であ る。しかしながら、つる植物の特徴的な旋回運動や巻きつき反応に関する研究はダーウィン以来多くなされているものの、つる植物がホスト選択において識別能を持つという報告はこれまでなかった。

われわれは、つる植物としてブドウ科のヤブガラシの巻きひげに注目し、まずその自己識別能力(自株と同種の他株を見分ける能力)を検証し報告した。さらに、より詳細にヤブガラシの識別能力を検証した ころ、特定の植物に由来するいくつかの物質を識別でき、柔軟な巻き付きの可塑性を持っていることがわかった。これらの結果は、つる植物は無差別に巻きついているのではなく、高感度の化学識別をもち、巻 き付き時に適応的な意思決定をしているということを示唆する。