ベールに包まれた生態系のルール:種内変異と生物群集の相互作用が駆動するダイナミクス

2022年2月21日(月曜日) 15:00~

内海俊介 さん(北海道大学・北方生物圏科学フィールドセンター)https://sites.google.com/site/evocomecol/

「ベールに包まれた生態系のルール:種内変異と生物群集の相互作用が駆動するダイナミクス」

要旨:

生態ー進化動態に関する研究分野は急速に発展しており、個体群動態から群集構成、生態系機能に至るまで、生態学的なプロセスやパターンに対して迅速な進化や種内の遺伝的変異が大きな影響を与えうることは、広く認知されるようになった。しかし、これらの知見のほとんどは、緻密に設計された実験系において示されたものや、理論研究によるものである。したがって、私たちの目の前にある自然生態系において、このような生態と進化の相互作用がいかほどの重要性をもつのか、実はまだほとんど理解ができていない。多種間の相互作用ネットワークの中では、まったくとるに足らないものかもしれない。あるいは、たとえば、漁業によって駆動される進化のような激的な方向性選択があったとしても、それが一方向性であるなばら、生態と進化のフィードバック過程は顕在化しないだろう。そのため、近年では、生態ー進化動態に関する研究をより複雑で自然環境に近い条件で行うことが主張されることが多くなっている。しかし、それが実現しているわけではない。

本講演では、私たちが最近行ってきた、生態と進化の相互作用に関する野外研究の結果について議論する。主に、(1)石狩川水系の河畔林における昆虫群集の生態ー進化フィードバック、(2)森林再生における多様性ー機能関係での種内変異の意義、についてとりあげる。いずれにおいても、この数年の間に得られてきた最新の結果について紹介し、みなさんと議論したいと考えている。