群れの自己組織化を促進する相互予期

2022年2月28日(月曜日) 15:00~

村上久 さん(京都工芸繊維大学)https://sites.google.com/view/hisashimurakami/home

「群れの自己組織化を促進する相互予期」

要旨:

イワシやムクドリの群れ、さらには歩行者集団においても様々な自己組織化的振る舞いが観察されます。個体間で相互作用可能な範囲を超えて形成される大域的なパターンは注目に値します。しかし、たしかに鳥や魚の群れは瞬間的には全体として同期して整列するように見えますが、より長い目で見ると、各個体は群れ内部で自在に動き回っていることがわかっています。つまり、これらの群れでは、群れ全体としての秩序(定向配列)と個体運動の多様性(ゆらぎ)は共立しており、群れ構造は徹底して動的に作り変えられているものと考えられます。このことは一見すると群れの全体性を壊すかのように思われる個体運動の多様性が、むしろ群れ形成に積極的に寄与していることを示唆します。本発表ではまずカニや魚の群れを対象として、群れと共立する個体運動の多様性の数理構造を明らかにし、またそれを実現するメカニズムとしての相互予期を取り入れた群れモデルを紹介します。さらに、歩行者の群れを対象として、先述と同様の数理構造を示しつつ、相互予期の集団形成における機能的意義を明らかにした実験を紹介します。本発表で示される相互予期の重要性は、集団的な人間行動、生物集団現象、群ロボットなど他の様々な自己組織化システムの基盤となる知見を与えるものと考えられます。