Komaba seminar

行動進化生態こまば教室では、

主に若手研究者を招待して研究紹介をしていただき、議論を通して相互の交流を深めたいと思っております。

誰でも参加 できるオープンな セミナーなので、関東近辺の皆さまは是非気軽に参加してください。

また、セミナーで発表していただける方も募集しています。 

熱いパッションをお持ちの方のご連絡お待ちしています。

2024年11月9日(曜日) 東京大学駒場Ⅰキャンパス 15号館409室

『第一回 システム行動学スペシャルセミナー』第49回 行動進化生態こまば教室

12:30 - 16:00 公開セミナー・ハイブリッド開催

開催目的:

積極的な行動介入・刺激提示や、数理モデルを用いた行動の記述・再現などを通した「行動メカニズム(システム)の解明」に特化した議論の機会の提供 

講演者:

﨑山朋子 准教授創価大学 理工学部

アリの空間認識とナビゲーション能力」※オンライン講演に変更となりました

 アリはフェロモンなどの嗅覚情報や, 風景などの視覚情報等, さまざまな情報をナビゲーションに役立てている. 一方で, アリの空間認識に関しては, 情報の獲得・利用ともに不明瞭な点が多い. たとえば, アリが視覚的ナビゲーションを果たすとき, 自身を世界の中心に絶えず据える形でナビゲートしているのだろうか. 発表者はこれまでの研究を通して,アリ個体は複数の情報を組み合わせることで, 環境に対して自身を相対的に位置づけながらナビゲートしている可能性について示してきた. ここでは, 研究の最近の展開について紹介する. 時間があれば, アリ集団の蟻道利用に関する実験に対しても, 同じ視点で紐解いてみる.

発表者HP

森山徹 教授(信州大学 繊維学部

動物のわからなさと行動抑制ネットワーク

 行動の実験者が動物に装置を供する際,自然に生じる「何をしだすかわからない」という感覚.この感覚は幻想ではなく,動物に潜在する行動抑制ネットワークに端を発するのではないだろうか.筆者が材料としてよく用いるダンゴムシは,事前の転向と逆の転向を繰り返す交替性転向反応という行動を備えているため,T字路を連続的に与える装置に投入すると,左右交互の転向を繰り返す.この交替性転向反応は特定の行動機構によって生じると考えられるが,この反応は,ダンゴムシ内に存在するその他様々な行動機構,例えば,丸まる,食べる,逃げる等の機構が,互いの活動を相互に抑制し,行動の発現を抑える抑制性のネットワークを形成し,交替性転向反応の行動機構の働きを妨げないようにすることで,初めて実現されるはずだ.実際,T字路の壁は平滑に仕上げてはいるものの,ダンゴムシにとっては凹凸かもしれず,彼らは,体が壁に触れるたびに生じる機械刺激によって外敵を想起し,にもかかわらず,逃げるという行動を抑制している可能性がある.このように,外界からいつ何時刺激を受けるかわからない今を生きるダンゴムシは,行動抑制ネットワークの働きにより,交替性転向反応を実現しているだろう.ところで,このネットワークは,その働きが自律的であるからこそ,その構造を時々刻々と変化させ,この変化が,交替性転向反応の行動機構に影響を与え,行動にゆらぎを与えるだろう.例えば,ダンゴムシは時折,同方向への転向や方向転換を見せる.そして,ネットワークの自在な変化は,稀に,交替性転向反応の行動機構と,ネットワーク中の行動機構の混同さえ引き起こしてしまい,ダンゴムシのわからなさを顕わにする.実際,ダンゴムシは,あまりにも長くT字路を与えられ続け,未知の状況に晒されると,突如,壁を登って装置から逃れてしまう.この壁登りによる高所への移動は,乾燥が死に至る条件となるダンゴムシに対し低湿度を与えるため厳に抑制されるべき行動である.このように,行動抑制ネットワークはダンゴムシの内部にわからなさとして潜在し,創発性として顕わになる.本発表では,行動抑制ネットワークが動物行動学に与える意義の可能性をみなさんと議論したい.

発表者HP

モノの心の研究会

※西森先生は急病により、欠席されることになりました。代わりに質疑応答、ディスカッションの時間を長めに設ける方針です。

西森拓 特任教授(明治大学 先端数理科学インスティテュート 所長)

「アリの組織ダイナミクスにおける非一様性~実験と理論による考察」

 アリの高度な組織行動は、コロニーを構成する個体間の非一様な行動形態に負うところが大きい。行動の非一様性の由来に関しては、日齢によるもの、(サイズのように)生来的なもの、(反応閾値仮説のように)コロニー内の時事刻々の状況に応じて生じるもの、など様々ば要因が考えられる。本セミナーの前半では、我々がこれまで行なってきたRFIDによる個体認識長期間行動計測やコロニー分割実験で得られた統計的な知見を順に紹介し、上記の非一様性の由来と比較し、従来のロジックの枠に収まらないことを示し、その解釈を試みる。セミナー後半では、アリの採餌に関する「エラー戦略」の効果が、個体間のエラー度合いの非一様によって強化されることについて、数理的な観点から議論を行い、エラー戦略の実験的確認の可能性を議論する。時間の余裕があれば、アリの行動な組織行動で得られる知見が、人間社会を含む他のシステムの理解にどこまで適用可能か/困難であるか について議論を行いたい。

世話人コメント(納富)

西森先生は現象数理学や非平衡物理学の観点から、アリを始めとした生物の行動現象や社会現象のメカニズムについて研究をされています。広島大学で教授を務められたあと明治大学に移られ、本年度は明治大学 先端数理科学インスティテュートの所長に就任されました。
﨑山先生はアリの視覚ナビゲーションや認知機能などをご研究されていて、西森先生のご研究とも関連する分野ですので、双方のディスカッションも見どころです。
また森山先生はダンゴムシの認知を研究されていて、著書「ダンゴムシに心はあるのか」をはじめとして、様々なところでご活躍されてきました。

お三方とも動物の行動現象を解明するための手法として、介入操作実験や数理モデルの構築などをされているため、そのアプローチの面からも有意義な知見が得られることと存じます。

公開セミナーとして開催しますので、お気軽にご参加ください。

参加申し込み締切:2024年118