要旨:
集団思考—人間や動物のグループが1つ「脳」としての一緒に情報を処理すること—の研究は古く、100年以上前から行われてきました。しかし、自然界ではどのような状況下、そして、どのようなメカニズムで集団思考が個人思考を上回る(または下回る)のかはまだ詳しく解っていません。私の研究室ではオオハリアリ(Brachyponera chinensis)とヒアリ(Solenopsis invicta)を使用してこの問題を研究しています。このセミナーでは、現在行なっている「集団学習」の研究について言及したいと考えています。
要旨:
目的地にいかにうまく辿り着くかという動物のナビゲーションは、動物行動学の主要トピックとして古くから研究されてきました。近年では、捕食者と被食者間のナビゲーションの研究が、比較的新しい取り組みとして進められています。運動性の高い捕食者と被食者においては、餌に到達しようとする捕食者側のナビゲーションと、脅威を回避し安全圏に到達しようとする被食者側のナビゲーションがしばしば見られ、互いに相手のナビゲーションを妨げるように展開されます。このような敵対的な条件下でのナビゲーションは、相手の出方に応じて巧妙に構築される必要があり、捕食者-被食者間の共進化の歴史を経て高度に洗練されてきたと考えられます。私はいくつかの分類群を対象に、この敵対的条件下でのナビゲーション戦略を研究してきました。本講演では現在私が行っているコウモリ、飛翔昆虫、鳥に関する研究例を紹介します。