迅速な進化と多種共存:密度依存的な種内適応荷重による共存の促進

2020年7月31日(木曜日) 16:30~

山道真人さん(クイーンズランド大学)

「迅速な進化と多種共存:密度依存的な種内適応荷重による共存の促進」

要旨

近年、迅速な進化が個体群動態に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきた。一方、迅速な進化が群集動態に与える影響については、未だそれほど調べられていない。特に、競争排除が起こらずに多種が共存する際に、迅速な進化がどのような役割を果たすか、というテーマは、最近になって注目を集めている。本研究では、種内競争によって引き起こされた迅速な進化が多種共存を促進する可能性について議論した。配偶相手などをめぐる種内競争が引き起こす性選択・社会選択は、利己的な形質の進化と「共有地の悲劇」を招き、結果としてその種の増殖率を低下させることがある。このような増殖率の低下を「種内適応荷重」と呼ぶことを提案した。さらに個体数が多い種では、種内競争が激しくなるために種内適応荷重が大きくなる可能性がある。このような状況では増殖率の負の密度依存性が強くなり、結果として多種共存が促進されることを数理モデルによって示した。今後は、種内適応荷重の実証研究を進めていくことが大きな課題となると考えられる。