同遺伝子型・同環境下でも表現型にはばらつきが生じる。育種学や量的遺伝学では、この遺伝子型内のばらつき—表現型ゆらぎ—の大きさが遺伝的に制御されることが示されてきた。また、ゆらぎの大きさ・構造は各遺伝子型の探索できる表現型空間・適応度地形の範囲に影響すると考えられてきた。しかし、ゆらぎに関する遺伝的変異が適応進化にどう影響し、ゆらぎ自体がどう進化するかは理論・実証ともに理解されていない。本研究では表現型ゆらぎそのものを遺伝的形質として扱い、集団・量的遺伝学の理論・計算モデルを構築した。その結果、集団の適応度が低いとき、大きな表現型ゆらぎが有利になり、凹凸のある適応度地形での適応進化に影響することが示された。これらの理論的予測を実験的にはじめて検証するため、ショウジョウバエを用いて低・高ゆらぎのアレルを競合させる選択実験を確立した。概日時計遺伝子timelessのアレルであり、無周期的な羽化を引き起こすtim0を羽化時刻に関する高ゆらぎアレル、周期的な野生型を低ゆらぎアレルとして用いる。両アレルの混成集団において特定の時間帯に羽化する個体を複数世代選抜することにより実験的に得られるtim0の頻度推移を理論予測と比較する。これら理論・実験の新規アプローチを組み合わせた本研究は、適応進化における「ばらつき」の新側面に光を当てるものである。
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