第12回 賞金システム
「ゆりかごから墓場まで」という政治スローガンが、かつてのイギリスにありました。
生まれてから死ぬまでの間、手厚い社会保障でお国が全て面倒を見てくれるという政策です。
私が中学生の時、社会科の教師が、事あるごとに良い政策だと言っておりました。
その時、私は無気力な人を養成するような政治手法だと思ったのですが
現在、考えてみると、お気楽な人生を送れる素晴らしい政策だと思えます。
堅苦しい始まりで恐縮ですが、まず、このデータを見てください。
※今回は特に偏りのある内容となっております。
また想像で書いてあることが多数ございます。裏は取れていません。
話半分、なおかつ寛大な心でお読みくださいませ。
2010年 調教師成績 ※連対がない調教師のみ 4月18日まで
佐藤全弘 0-0-2-55/57 勝率 0%連対率 0%複勝率 0.03%獲得賞金5,250,000円
高橋隆 0-0-2-45/47 勝率 0%連対率 0%複勝率 0.04%獲得賞金4,700,000円
鈴木孝志 0-0-0-23/23 勝率 0%連対率 0%複勝率 0%獲得賞金1,100,000円
中野渡清一 0-0-0-37/37 勝率 0%連対率 0%複勝率 0%獲得賞金 0円
二本柳俊一 0-0-0-50/50 勝率 0%連対率 0%複勝率 0%獲得賞金 0円
※獲得賞金は、80%は馬主、10%は調教師、5%は騎手、5%は厩務員に配分されます。
別に成績が悪いのを馬鹿にするデータではありませんよ。
獲得賞金が全くないのに、どうして厩舎経営ができるのかと思いませんか(委託料は別として)?
どうしてこのような成績で馬を預ける馬主がいるのだと思いませんか?
(ゲームの中でさえ、成績の悪い厩舎には預けませんよね)
少し前のスプリンターズSで来日したテイクオーバーターゲットは
調教師も厩務員も馬主も同一人物だったそうですが、
日本の厩舎は必ずスタッフがおります。一番、経費の掛かる人件費がある訳ですよね。
出て行くお金は毎月あるはずです。
特に最下位の方は去年も未勝利です。2着もありませんでした。
しかし入厩馬は19頭います。
なぜでしょうか(本当に大きなお世話だと思います。関係者の方すいません)?
そこには中央競馬会の手厚い賞金形態が存在しているからだと思います。
この賞金システムを理解すると全ての馬が勝とうとしていないのが
おぼろげながら判ってくると思います。
今回は賞金システムを考えてみます。
一番判りやすくまとまっているので、こちらを御覧になりながら進んでください。
順番に見ていきましょう。
まずは賞金です。これは競馬新聞にも出てるから判りますね。
賞金がもっとも高いジャパンカップから、下は未勝利まで、必ず5着以内に支払われます。
未勝利を勝てば500万円、5着でも50万円です。
古馬の500万下では1着740万円、5着で74万円です。
地方競馬の賞金と比べれば、とてつもない金額です。
高知競馬だと5着5000円なんてのもありますから。
あんなにでかい馬を1周走らせて、関わる人間も多数いて子供の小遣い並って。
騎手、厩務員に至っては250円ですからね。
中央競馬は恵まれているのでしょうね。
さて、ここからが新聞には書いていない賞金です。
距離別出走奨励賞
1800m以上で、芝の特別競争に出走して10着以内なら賞金が出ます。
500万下の特別で1着なら賞金とは別に60万円入ってくるんです。
10着だったら12000円入ってくる事になります。
マイルまでの馬でもお金に釣られて、出走を決めてしまうケースだってあると思うのですが。
「長い距離を試す」というコメントには賞金の為という意味があるかも知れませんよ。
内国産馬所有奨励賞
小難しく書いてありますが、外国産馬が出走している競争で、
1~5着になった馬が外国馬でなければ(日本で生まれた馬なら)賞金が出るということです。
去年のダービーで例えますとブレイクランアウトが外国産馬ですから、
ロジユニヴァースには1着賞金1億5000万円にプラス3000万円です。
ちょっと驚きの金額だと思いませんか?田んぼ馬場を1周しただけでポンと3000万円ですから。
1周しただけで5000円には、ひがむことすらできない格差ですよ。
この手当てを狙うために無理矢理、外国産馬を出走させるのもいるかも知れませんね。
エイシンフラッシュが3着に来たのは偶然でしょうか。
同馬主2頭出しで、片方が外国産馬の時は疑ったほうがいいかも知れませんね。
とにかく金額がデカ過ぎです、この手当ては。
下級条件でも魅力的な金額ではないでしょうか。
500万下だったら1着賞金にプラス150万です。5着でも15万円ですよ。
出走する外国産馬に注意するのではなく、恩恵を受けられる側を読むと、なにかが見えそうです。
出走奨励金
ここからが冒頭の厩舎で大事な資金源(と思われる)ですよ。
賞金は5着まででしたが、なんと8着まで(重賞なら10着まで)入ってくるのです。
500万下で6着なら52万円、8着でも37万円です。
ただし1着が入線してから規定タイム以内にゴールしなければ貰えません。
ということは、絶対に勝てないと思っている厩舎なら
全力を尽くして、タイムオーバーにならないように8着以内を目指しますよね。
逃げや先行はテンで脚を使います。
バテてしまうことを考えると、じっと後方で脚を溜めるほうが得策です。
テンに行けない馬が不利だというのは、3着以内に入ることが前提の事です。
8着以内でよければ、前半から無理は絶対にしませんね。
強くない馬だったら、無理に勝ちにいってタイムオーバーになってしまい賞金が入らないよりも
勝つ事を捨て(馬券に絡むことを捨て)確実に賞金を取りにいくほう選ぶと思います。。
こちらは金が掛かっていますが、厩舎サイドは生活が掛かってますからね。
このような出走でも、もっともらしいコメントが載り、絶対当たらない馬券を買う方が必ずいるのでしょう。
ヤリヤラズよりひどいかも。十分、気をつけましょう。
特別出走手当
こちらは比較的有名な手当てです。
出走すれば貰える手当てです。
ダービースタリオンなどの競馬ゲームで、これしか入ってこない時がありますからね。
ただしゲームと違うのは、貰える条件があるのですね。
まず、6歳以上で500万下の馬は12万円も減額されてしまう事です。この条件の馬は結構いると思うんです。
12万円減額されても稼げると、みるのはちょっと危険な感じですね。
正直、6歳以上で500万下にいる利点はわかりません(すいません)。
それと最下位になった馬がタイムオーバーになると半額しか貰えないのですね。
最下位だけって言うのがミソですよね。
同じ開催期間で2回(中2週から3週)走り、タイムオーバーだけ気をつければ
最低でも60万円位は実入りがあるのですね。
もし入着すれば100万円はすぐ超えますね、これだけ賞金や手当てがあれば。
(実際には馬主80%、調教師10%、騎手5%、厩務員5%で分配されます)
調教師は、競走馬を馬主から預かり、委託料を毎月貰います。
その委託料は60万円から80万円だそうです(合っているかわかりません)。
上位厩舎と下位厩舎の委託料が、同じ値段と思えないのですが、どうなのでしょうか?
一般社会ならば良いものは値段が高く、悪いものは安いのが当たり前です。
もし下位厩舎の委託料が、かなり安いのであれば、この賞金システムがある限り
委託する馬主はいると思います。
馬さえ出走すれば、潤う人間はいるのですから。
調教師は無理は絶対せず、無事に中2~3週のローテーションで走らせます。
間違って入着すれば、ぐんと賞金は増えます。馬券に絡む必要は全くありません。
騎手は調教師からの指示を忠実に守り、タイムオーバーだけには、ならないよう騎乗します。
このような出走でしたら、馬主は馬の購入金額は回収できないかもしれませんが
委託料についてはマイナスにならないはずです。
手厚い賞金、手当てに守られているから。
馬主が馬を出走しなければ競馬にはなりません。
馬主を守る必要があるからこそ、手厚い賞金、手当てでカバーするのでしょう。
馬がいなければ馬券売れませんからね。
しかし手厚すぎてると思いませんか?
冒頭に書きました「ゆりかごから墓場まで」は結局、失敗しました。
手当ての為に税金を高くした所、医療費などは無料になりましたが
社会の活力までなくなってしまいました。
手厚すぎはいい面もあったのですが、悪い部分の方が大きかったという事なんですね。
手厚い賞金は馬券の控除率(寺銭)からできています。
競馬の売り上げがどんどん下がっている中でも変わっていません。
破綻した「ゆりかごから墓場まで」に非常に似ていますよね。
地方競馬はもう破綻し始めています。
2010年4月24日