第36回 競馬の振り込め詐欺
まずはこのニュースをご覧下さい。
●振り込め詐欺:競馬「出来レース」情報料1350万円詐欺 村田の男性被害 /宮城●
大河原署は4日、競馬の「出来レース」の情報料名目などで現金約1350万円がだまし取られた
振り込め詐欺が発生したと発表した。
同署によると、被害者は村田町の無職男性(44)。
男性は09年6月ごろ、インターネットで競馬必勝法を閲覧する為、
東京都の情報提供会社に氏名や連絡先を登録。
その後、同社から「1000万円の登録料を払えば、出来レースの情報を提供する」などと電話があり、
同7月から7回に分けて計1050万円を指定された銀行口座に入金。
さらに同10月ごろには「出来レースをするため馬主に渡す」と要求され、300万円を振り込んだという。
男性には、「馬主と折り合いが付かない」などの連絡はあったが、出来レースの情報提供はなかった。
今年7月下旬に同社と連絡が取れなくなったため同署に相談。今月4日に被害届を出した。
(毎日新聞 2010年8月5日 地方版 http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20100805ddlk04040121000c.html)
振り込め詐欺は始め、善意を悪用するところから始まりましたよね。
息子を装い、示談金や保証金の名目をちらつかせ、お金を騙し取るのが多かったと思います。
しかし、上記のニュースは振り込み詐欺と言いながら、実は絶対に儲かるから出資しろという古典的な詐欺です。
真珠、和牛、海老などの農産物への投資名目の詐欺となんら変わらない詐欺です。
詐欺というものは、騙す方が一番悪いのですが、騙される方にも問題があると言われます。
この事件では「出来レース」の情報を提供して貰う為に、1050万円と300万円を支払いました。
この被害者は「出来レース」とはどのようなものと認識していたのかが、とても気になります。
フルゲートばかりの競争で1頭や2頭が消えたところでは、的中に結びつける事はなかなか出来ません。
逆に1頭や2頭の人気薄が激走すると言われても、必ず勝つ事は容易ではないでしょう。
出遅れ、不利、特に騎手が駄目な場合は包まれてそのままなんて事は多々あります。
馬主に調教師が今日はヤルと伝える事はあっても、絶対に勝てるという事ではないですよね。
試験の答えが予め分かっていて、試験を受けるのではなく、誰も判らない答えを探し出すのが競馬なのですから。
90年代に、競馬は結果が事前に決まっていて、出馬表にある様々なサインから答えを導くなどという
予想を、公然と週刊誌等に連載していた方がいました。その方はこれで何億円も稼いだとの事で
一時期はサイン馬券術というカテゴリーが確立されたほどです(今でもあるのでしょうね、たぶん)。
私も一冊だけ彼の本を買いました(もちろん洒落で。買ったのだから多少、言ってもいいですよね)。
その本の内容は、とにかく全てのレースが当たる、分かるという凄まじい内容でしたね。
このレースはこのタイプ、次のレースはあのタイプ、別のレースはそのタイプと、
彼が果てしなく持つ定石に沿えば全て的中しています。億万長者も夢ではありません。
でも1000円ちょっとの本で、なぜここまで教えてくれるのでしょうか?
彼は言います。お金はもう要らない、皆に競馬が当たる喜びを伝えたいと。正しく生き神様、仏様です。
この矛盾だらけの競馬の神を信仰していたのは、私の周りにもかなりいました。馬の能力は関係ない、
重要なのはサインを見つける力なのだと力説をしますが、決まって見つけ出すのはレースが終った1時間後。
悔しさを滲ませ、サインの重要性と的確さを周りに力説するのが常でした。私が「後出しジャンケンならば
みんな勝てるな」と嘲笑すると殴りかかってくる奴までいましたね。中山のゴンドラ席や東京のS席で
品性の大幅に欠けるディベート大会を周りの迷惑を省みずに何度もしたものです。
お互いに自分の主張をぶつける、宗教戦争さながらな事になってました。若かったですね。
その時気付きましたね、人を簡単に騙す方法は壮大なホラ(大きければ大きいほど効果は絶大)を吹けば
良いと。理論は後出しで捏造し、証拠などは特に見せなくても一度、信じ込ませれば後は思いのままです。
(私個人はサイン馬券を否定しますが、存在までは否定しません。競馬をどう買おうと個人の勝手ですから。)
また、90年代前半の競馬場やウインズ周辺には出目表や馬主からの極秘予想を販売する露天がかなりいました。
私は彼らの口上が好きで必ず見ていましたね。どの露天でもこれを買えば必ず的中して大儲けできるとの
事で、「本来は3万円のところ今日は5千円でいいや」という大幅値引きがあるのが共通点です。
また、見え見えのサクラの存在が面白さを倍増させるのですが、人によっては露天商への信頼度が大幅に上がるようで
サクラが言う「おかげで儲かった」の言葉とお礼にと置いていく札束を見せられ、買ってしまう方がけっこういました。
(30万から50万に見えるが、上下だけ1万円を輪ゴムで止めて真ん中は紙を挟んである物。
一度、明らかにヅラのサクラが渡す札束がずれて紙が見えていたので、
「ずらすのはヅラだけにしろヅラ野郎」とうまい事を言ったつもりで、私が突っ込むとサクラが本気で怒りだし、
夕暮れの府中の街を必用に追い掛け回されたのは良い思い出です。)
なぜ必ず儲かるものを路上で、しかもござの上で売っているのか、必ず儲かるものをなぜ今日だけは83%も割引して
くれるのかという疑問は全く無いようで、買われた方々は嬉しそうに消えていきました。
結局、楽して儲けようという共通点です。サイン馬券にはまだ探すという努力がありますが、
出来レースや馬主情報、出目には努力はもとより予想する行為すらありません。まさにお手軽投資法です。
しかし、お手軽投資法というものには未だにお目に掛かっておりません。
(きっと、お目にかかるわけ無いだろ。秘密の馬券術なんだからと反論する方は沢山いらっしゃるでしょうね。)
一時、160億稼いだと言われた外国人グループがいたと報道されましたが
彼らは相当の努力により方法を見つけ出したのと、潤沢な資金が有る事で可能にしたと思います。
きっと出来レースを教えて貰って、的中した事だけはないと思います。
競馬の予想に正解はありません。正解は的中する事です。
サインで楽しめるなら、出目で楽しめるのなら、それでいいと思います。
でも残念ながら矛盾に気付いてしまう時が来るのです。
その矛盾に納得すると次のステージに行けますが、納得できずにもがくと深みにはまります。
深みにはまると、今回の出来レース詐欺のようなものを新たに信じ込む事になると私は思います。
病気回復祈願で新興宗教に凝る方が、いくら祈っても治らない時、祈る対象物に不審を抱きます。
不信感が募れば祈る対象物を変えることを模索します。祈る対象物が変わる事で
また上っ面だけ安堵しますが、根本が全く変わっていない事実には絶対に気付きません。
競馬での根本は儲かる事、すなわちお金が増える事です。
儲かる事、お金を増やす事だけを見るのであるなら競馬を辞めるのが一番効果があります。
そこを分かっていれば騙される事はありえないのです。
自分自身で絶対に当たると思ったレースの的中率はどれくらいでしょうか?
友人等にこのレースは鉄板と言われたレースの的中率はどれくらいでしょうか?
テレビ、ラジオで固いと言った競馬評論家(愛好家)の的中率はどれくらいでしょうか?
金を払う前に考えましょう。
2010年8月5日