第40回 荒尾競馬
まずは2つのニュースをご覧ください。
荒尾競馬:出走手当、大幅引き下げ 収支均衡へ最後の削減策 /熊本
◇馬主の最終的対応に注目
荒尾市の荒尾競馬組合(管理者=前畑淳治市長)は、馬をレースに出走させるごとに馬主に支払われる
出走手当を8月21日の第7回開催レースから一律1万5000円引き下げることを決め、
県馬主会(末藤惇会長、180人)に通知した。
約14億円の累積赤字を抱え今年度の収支均衡が最重要課題となっている競馬組合にとって
「最終の合理化策」だが、「了解できない」とする馬主側が最終的にどう対応するか注目される。
出走手当は、レースの着順に関係なく1頭につき出走する度に馬主側に支払われる。
馬の年齢などで格付けされ、現行は6万円と5万円の2ランクあるが、
これを一律1万5000円引き下げる。
これにより今年度は5800万円の経費削減を図る。現在、同競馬には約350頭在籍。
月2回程度出走し、手当予算は今年度3億円だった。
荒尾競馬は98年度から連続して赤字決算が続き、08年度決算で累積赤字は13億5000万円と膨らんだ。
学識経験者らで構成する「荒尾競馬あり方検討会」は昨年10月、「単年度収支の均衡」を
事業存廃の条件とする提言をまとめた。
このため組合は10年度以降の単年度黒字化が至上命令となっていた。
ところが長洲町にオープンした競艇の場外舟券発売所の影響も受けて
売り上げは伸びず、このまま推移すれば、1億円を超す赤字が見込まれる状況となっている。
前畑市長は「苦渋の判断。手当を引き下げても赤字が残るが、
それは今後の経営努力でカバーしたい。
事業存続のため何としても協力をお願いしたい」と話している。
これに対し馬主側は第7回開催レースへの出走申し込み受け付けが始まる8月10日までに
どう対応するか最終的な判断をするとみられ、持ち馬を出走させるかどうかレースの成否を含め注目される。
毎日新聞 2010年7月29日 地方版 http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20100729ddlk43050593000c.html
そして8月10日にした対応はこのようになっております。
荒尾競馬:出走手当カット 県馬主会、裁判闘争辞さぬ構え /熊本
経営難の荒尾競馬組合(管理者、前畑淳治荒尾市長)の出走手当の引き下げ問題で、
県馬主会(末藤惇会長、184人)の対策委員会(委員長、奈良崎孝一郎・奈良崎獣医科病院会長)は10日、「一方的なカット通告は承服できない」と、騎手会など関係者と協議した。
その結果、裁判闘争も辞さない構えで、現場従業員と歩調を合わせることを決めた。
引き下げは、馬の年齢などで2ランクに格付けされる出走手当を21日の第7回開催から
一律1万5000円下げ、4万5000円と3万5000円にするもの。
約14億円の累積赤字を抱え、単年度黒字化が至上命令の競馬組合としては本年度の最終合理化策だった。
馬主会は8日の総会で、第7回開催のレースに出走するかどうかは
馬主個人の判断に委ねるが、手当引き下げ問題は対策委員会(7人)を設置して対応することを決めた。
10日の出走受け付けには、250頭の出走申し込みがあり、レースは成立する見通しとなった。
だが、手当引き下げ問題は馬主会や調騎会、厩務員会がそろって反対しており、
競馬組合側が対応を誤れば、泥沼に入り込む恐れが十分にある。
毎日新聞 2010年8月11日 地方版 http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20100811ddlk43040460000c.html
2行でどういう事かを説明するならば
荒尾競馬は赤字経営でこのままだと存続も間々ならない状況なので、
出走手当を安くするという開催側と、安くするなという馬主・騎手・調教師側の攻防、という事です。
昭和には考えられなかった競馬場の廃場ですが、平成になるにつれ、
数多くの地方競馬が消えてしました。関東地方でも足利や高崎が廃場しました。
売れなければツブれて消滅するのは資本主義の世界で至極、当たり前の事です。
地方競馬は総じて汚い→汚いから若者・女性が来ない→客の裾野が広がらず
客はなにも気にしない年配層のみ→お金が入らないから施設も改善できず→やがて客は消える
というような、風が吹けば桶屋が儲かるの逆バージョンが発生し、終了してしまいます。
売り上げが上がらないのならば、経費を抑えようというのも、民間企業では当たり前の事です。
そもそも経費を抑えるのはなぜなのか。経営を存続する為ですよね、インチキ、ブラックな会社以外なら。
接待交際費のカットから始まり、各種手当てのカット、さらに進むと給与のカットが行われます。
給与のカットまで行くと、大体反対したり、揉めたりするものです。
しかし、働く場所がなくなってしまうのが良いのか、金は少なくても存続する方が良いかを考えると
どちらが賢い選択でしょうか(あくまでもブラックな企業でないことが前提です)。
傍から見ていると良く分かるのですがね。
当事者ですと、そうには行きません。子供の教育、家のローン、病気の親、それと
日々の生活が有りますから突然、金が減るというのは納得いきません。
大抵、自分の給料(金)を減らす事を阻止するようにしていき、経営陣側の無駄使いを
訴えたり、無い金を引っ張って来いと無理を言ったりします。
経営陣だって損は嫌ですし、金が減って困るのは同じです。エゴとエゴは激しくぶつかり平行線です。
やがて経営陣は嫌なら辞めろと言い、泣き寝入りするか出て行くかの2択を迫られます。
必ず経営陣が勝つように出来ています。なぜなら博打で言う胴元だから。
麻雀で親が上がると得点が1.5倍になりますよね。花札は親の先手で始まりますし
チンチロ、手本引き、丁半、などなど博打というのは全て親が有利に出来ています。
非常に極端ですが、親(胴元)が負けて、もし金を払わないと言ったら金は絶対に入りません。
親(胴元)が急なルールの変更をしたとしても、子は従うしかありません。
(賭場の信用性は全くなくなるので、後は地獄になりますがね)
会社などの経営陣の有利さは1.5倍どころではありません。
給料を出さなければ、従業員は路頭に迷います。ある意味、従業員とその家族の命を握っています。
荒尾競馬で馬1頭の委託料は月々10万~12万だそうです。文頭のニュースをもう一度見てください。
出走手当は6万円と5万円があり、これを15000円ずつ減らすというのが事の発端です。
ここからは想像ですが、馬の代金はともかく、馬だけ用意して荒尾競馬に入厩させ、
月に2回、必ず出走させれば馬主の負担は全く無いということです。
そして委託料は調教師などの厩舎スタッフの収入になるということです。
事業仕分けで問題とされている補助金の使いまわしと同じような構造ではないでしょうか。
大きい問題は月2回出走させれば負担がないという事です。月1回では馬主は持ち出しがあるのなら
馬の調子など気にせず、自分のエゴで出走にいたる事が相当あるのではないでしょうか。
地方、中央に限らずこう言う事はあるでしょうが、開催者からの補助金がなければ
立ち行かなくなる構造の中で果たして、競馬の公平性が保たれているのでしょうか。
競馬の収入の大半は馬券が売れた分の25%です。馬券が売れれば収入は増えます。
しかし、公平性に欠ける競馬に金を賭けようとする人間が、果たして増えていくのか?
エゴを突き通す前に考える事は、有り過ぎると私は思います。
開催する荒尾市は強力な力があります。抵抗しすぎると全てを消し去る力を持ちます。
許されるのは荒尾市のエゴだけです。以外の人間は従うだけなのです。
届く事の無い声ですが、公平性の確保された競馬であるなら必ず客は帰ってきます。
少なくとも私は行きますよ。
2010年8月12日