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第8回 追い込み馬
三連単は競艇が初めに売り出しました。
競艇の三連単の確率は120分の1で、平均配当はなんと8000円を超えるとか。
6艇立てで圧倒的に当てやすく、そこそこの配当があるにも関らず
競馬を好む方が圧倒的に多いですよね。
競馬好きが競艇をやらない理由の一つに
「競艇はスタートしてすぐに順位が決まってしまう。逆転がないからつまらない。」
というのがあるのではないでしょうか?(本当はそうでもないですけど)
その点、競馬の醍醐味はゴール前の大逆転。差し、追い込み、大外一気、末脚爆発等
景気の良い言葉がたくさんありますよね。
数多くの追い込み馬がいますが、追い込み馬の筆頭はディープインパクトではないでしょうか。
確かに今まで見たことない末脚でしたし、若駒ステークスの勝ち方で三冠は間違いないと確信したものです。
ディープインパクトは別格としても、現役ではドリームジャーニーやブエナビスタなどが
代表的な追い込み馬でしょうか。追い込み馬を買っているとドキドキも倍増、差しきった時の
爽快感はたまりませんよね。追い込み馬は強そうに見えてしまうから不思議です(二割増し位はなりませんか)。
そんな競馬好きを魅了してしまう追い込みという戦法は果たして有効なのでしょうか?
今回は差し、追い込みのお話です。まずは過去3年間のレースの脚質別の成績を見てみます。
※逃げは4角1番手、先行は逃げを除く1番手グループ先団、中団(差し)は2番手グループ
後方(追込)は2番手グループ後方(脚を無くしているのも含む)マクリは3角後方で4角で先団に取り付いた馬です。
過去3年間 全芝レース
逃げ 923- 632- 458- 3291/ 5304 勝率17.40%連対率29.30%複勝率38.00%
先行 2100-2104-1923-12112/18239 勝率11.50%連対率23.00%複勝率33.60%
中団 1601-1753-1990-22625/27969 勝率 5.70%連対率12.00%複勝率19.10%
後方 324- 471- 601-20037/21433 勝率 1.50%連対率 3.70%複勝率 6.50%
マクリ 72- 56- 40- 204/ 372 勝率19.40%連対率34.40%複勝率45.20%
過去3年間 全ダートレース
逃げ 1174- 781- 536- 2753/ 5244 勝率22.40%連対率37.30%複勝率47.50%
先行 2531-2501-2153-10067/17252 勝率14.70%連対率29.20%複勝率41.60%
中団 940-1263-1780-21834/25817 勝率 3.60%連対率 8.50%複勝率15.40%
後方 188- 293- 387-21118/21986 勝率 0.90%連対率 2.20%複勝率 3.90%
マクリ 119- 114- 91- 236/ 560 勝率21.30%連対率41.60%複勝率57.90%
追い込み馬の爽快感というのは幻想だけを残していくのでしょうか。
後方(追込)は芝で1.5%でしか勝ててません。複勝率でも6.5%です。
逃げバテしてる馬や後方のままレースを終える能力の低い馬も入っているとはいえ
ひどい数字ですよね。
馬場の差なども確かにありますが、逃げ、先行の数字とは相当な開きがあります。
ダートレースはなんとなく、追い込みは不利とイメージしてますが
芝はもっと追い込み馬が来る気がしませんか?
きっと全レース場のデータだからかもしれません。
直線が長く坂もあり、競馬好きのほとんどが差し追い込み有利と思っている
東京競馬場だけなら数字が変わるかもしれません。
過去3年間 東京競馬場芝レース
逃げ 82- 72- 64- 525/ 743 勝率11.00%連対率20.70%複勝率29.30%
先行 260- 239- 218-1806/2523 勝率10.30%連対率19.80%複勝率28.40%
中団 288- 289- 305-3225/4107 勝率 7.00%連対率14.00%複勝率21.50%
後方 70- 99- 117-2677/2963 勝率 2.40%連対率 5.70%複勝率 9.70%
マクリ 3- 2- 2- 25/ 32 勝率 9.40%連対率15.60%複勝率21.90%
過去3年間 東京競馬場ダートレース
逃げ 122- 90- 71- 411/ 694 勝率17.60%連対率30.50%複勝率40.80%
先行 312- 289- 259-1678/2538 勝率12.30%連対率23.70%複勝率33.90%
中団 193- 212- 248-3202/3855 勝率 5.00%連対率10.50%複勝率16.90%
後方 60- 99- 110-2969/3238 勝率 1.90%連対率 4.90%複勝率 8.30%
マクリ 2- 1- 1- 9/ 13 勝率15.40%連対率23.10%複勝率30.80%
ちょっぴり数字は良くなりました。しかし追い込みが有利な競馬場だとは
誰も思わなくなります。ペース、芝、馬場状態などありますが
有利なのは逃げ、先行。後方(追込)は圧倒的に不利なのですね。
でも歴代の馬は追い込んでいました。
実力差があれば追い込みが効くのでしょうか。
まずはディープインパクトの成績を見てみます。
通過を見てください。4角のポジションで一番、後方にいた時で10番手です(ダービー、引退レースの有馬記念)。
それ以外は4角時、ほぼ先団に取り付いてます(マクリ)。
ドリームジャーニーはというと本格化する前の2.3歳時に4角12番手で勝ったレースがありますが
古馬になってからの好走時は、4角10番手以内であり、大半のレースでは先団から中団(マクリ)にいます。
ブエナビスタは確かに4角16番手で阪神ジュベナイルを勝ち、4角14番手でオークスを勝ちました。
しかし後方待機の安藤勝は降ろされ、横山典が好位追走の脚質(中団orマクリ)へと変化させました。
現在の競馬で追い込みと言われているのは、3角では後方待機でも
4角までに先団もしくは中団に取り付き、直線で末脚を繰り出す、「マクリ」の事なのですね。
ディープインパクトがもし4角最後方でも差しきっていたとは思います。
でも合理的に勝つには、好位からの差しが有効なのでしょう。
合理的に勝ち、負担無く勝ち、消耗を少なく勝つ。
スポーツでも勝負でも当たり前といえば当たり前のことですよね。
そうじゃなければ、ブエナビスタは後方待機をドバイでもしていたかもしれません(ドバイも行けないかも)。
これを馬券のヒントにするには、極端な追い込みや後方に置かれる馬は狙いを下げることでしょう。
馬柱にある通過順で4角位置は一番重要なのかもしれません。
未勝利でも条件戦でも重賞でも、芝もダートも、後方待機は圧倒的に不利で
4角で上っていけない馬、置かれてしまう馬の馬券は買わないほうがよさそうです。
でもデュランダルみたいな馬がたまに出てくるから
追い込み馬の幻想はまたまた記憶の中に刻まれます。
それでわかっていても後方待機馬を軸にしたりしちゃうんですよね。
私も競馬をやり始めた頃、ランディーバーンという馬がいましてね。
重賞勝ちもない、大した成績もない馬ですが、4歳500万下(現3歳500万下)の追い込みの記憶が強烈でして。
4角でも後方、最後の直線残り100mでも後方、先頭の馬がゴールする寸前でカメラがゴール板を
アップにした瞬間、一度もテレビに映っていなかったランディーバーンが
大外から差しきってしまいました。
なにか通ったけどなんなの?と思ってスローを見たら強烈な末脚で飛んできていました。
今となっては映像もないのですがね。だからこそ記憶が増幅してしまうのでしょう。
競馬の醍醐味は差し追い込みです。私もそう思います。
叫ぶ時だって「そのままー!」より「差せー!」の方が願いが通じそうだし。
でもその願いはマクリの馬には届きますが、後方の馬には虚しい叫びにしかなりませんよ。
2010年4月13日