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第10回 初めての記憶
鳥は卵からかえった時、初めて見たものを親だと思うと言います。
「三つ子の魂百まで」ということわざは、幼い頃のしつけや記憶は大人になっても
変わることはないということです。
競馬は記憶力のゲームと言われる事があります。
強く印象に残った事は、いつまでも覚えているものですよね。
お金を賭けているのだから、印象はより強くなるのでしょう。
初めて競馬を見た時の事って覚えてますか?
また馬券を初めて勝ったことはどうでしょう。
初めて大勝した時はどうですか?
私が初めて競馬を見たのは、幼少の頃です。
たまたまついていたテレビに映っていた後方をポツンと追走する白い馬でした。
当時がどのような中継はしていたのかは判りませんが、競馬をやる人間が家族にはいませんし
NHKでなければ競馬など見ることのない家庭でしたから、おそらく今で言うGⅠ(この頃はグレード制はなかった)
だったのでしょう。子供ですから、ひときわ目立つ白い馬(芦毛)だけを覚えていたんですね。
レースの展開は、その白い馬が直線でどんどん他馬を追い抜いていく所で記憶は途切れています。
ずっと後になり白い馬はシービークロスという馬でレースは天皇賞・春だったことが判りました。
そのレースは3着だったようです。追い抜いていって届かなかったのですね。
シービークロスは典型的な追い込み馬で、騎乗していたのは、こちらも追い込み専門の吉永正人でした。
30年以上前ですが「追い込み専門の騎手」がいたというのが、今となっては不思議な存在です。
吉永正人はこの後、ミスターシービーで追い込み専門騎手の看板どおり、
後方待機からの追い込みで3冠制覇をしました。
小学校に上がる前の子供が初めて見た競馬が、追い込み(それも極端な)だったのが強い記憶となって残ります。
初めて競馬で馬券を買ったのが、1989年、サクラホクトオーが勝ったセントライト記念でした。
確か友人が渋谷の場外に買いに行くというので、何気なく頼んだ馬券でした。
何を買ったのかは忘れてしまいましたが、初めての馬券は外れた事だけを覚えております。
悔しさも特になく、宝くじが外れた感覚だったと思うのですが、一つだけ刷り込まれた記憶があります。
サクラホクトオーの末脚です。セントライト記念から1ヶ月後の菊花賞でその記憶は離れられないものになります。
もちろん馬券はサクラホクトオーから買いました。初めて馬券を買ったレースの勝ち馬ですから(素人)。
レースは淡々と進み、3角から上がっていったサクラホクトオーが4角で大外に出しました。
直線に向きサクラホクトオーに注目すると、外ラチを走っています。内ラチじゃありませんよ。
それも回転の速い末脚で。外ラチを使うなんて、今でも新潟の直線芝1000mぐらいですよね。
小倉競馬場で芝が剥がれちゃった最終週だってないですよ。
普通の芝のレースではありませんよね。外ラチまで行く距離を考えたら絶対に不利だから。
騎手は何を考えているんだと、干される行為ですよね、今なら。(サクラホクトオーは5着でした)
ただ競馬暦1ヶ月には衝撃だけ残りました。追い込みの脚と大外ラチ一気だけが。
初めて競馬で大きく勝ったのは菊花賞から1ヶ月後の有馬記念でした。
この年はオグリキャップのブームの年です。マイルチャンピオンシップからジャパンカップを連闘で
世界レコードの2着になり迎えた有馬記念です。天皇賞・秋を勝ったスーパークリークとともに
単枠指定(懐かしい)になりました。
オグリキャップはなぜか好きになれなくて(ど素人)切り、次に印がついている(本当にど素人)から
サクラホクトオーへの3-7、イナリワン(深い意味なく買った)への3-8、
キリパワー(名前で買った、記憶から消したい)への3-4を買いました。
レースはオグリキャップが4角で早め先頭、スーパークリークが並びかけオグリが脱落した時に
大外からイナリワン、サクラホクトオーが強襲、スーパークリークも踏ん張りましたが
イナリワンがハナだけさしました(サクラホクトオーは3着)。馬券的中です。
金が入ってくる記憶と追い込み最強の記憶が
大量に注入されました(小僧にしては持ちなれない金、数十万が入ってきちゃった)。
絶対に追い込みが有利だと確信に変わった瞬間です(ほんと馬鹿)。
この的中が十年以上呪縛になります。
私の場合、競馬をやり初めての記憶は、全て「差し、追い込みが有利」となってしまいました。
「三つ子の魂百まで」です。どんな時でも差し、追い込みを買うようになります。
逃げ先行馬を、極端に買わなくなりました(自分では自覚無し)。
例えばダービーで考えてみるとアイネスフウジン、ミホノブルボン、サニーブライアンは100円も買ってません。
逃げ馬を買うのは卑怯とさえ思っていた節があります。
大袈裟かもしれませんが、これは病気だと思うんです。
無意識、自覚無しの単語は依存症の特徴ですよね。
「差し追い込み依存症」といってもどこの医者も相手にしてくれませんけどね。
この記憶というか呪縛が解けたのはここ数年です。
逃げ先行絶対有利と切り替えるまでは本当に時間が掛かりましたが
解けると的中率が上がりました。
そりゃそうです、不利な脚質を買い続けていたんだから。
こうやって書いてるのも自分への戒めもあったりします。
だから追い込みが不利だっていうデータばかりなんですかね。
(これからは色々書いていきます。申し訳ありません。)
私と症状は違っても、「記憶の依存症」の方はいると思うんです。
例えば、オッズばかり気になってしまうとか騎手ばかり気になってしまうとか。
オグリキャップが好きだった方は芦毛だと買っちゃうとか
初めて大金を手にしたのが万馬券だと万馬券をむやみに買ったりとか。
予想方法は人それぞれですが、重きを置いているものが間違っていると
人生が揺らぐこともあるかもしれませんよ(これは大袈裟かも)。
この所、当たらないなとか負けてばっかりと思う方は一度、思い返してはいかがでしょうか?
初めて見た、初めて買った、初めて勝った(金額が大きければなおさら)事を。
一番、努力も要らず、お金も要らない攻略法かもしれません。
自分を知ることは、どんなデータよりも価値があると思いますよ。
(ちょっと偉そうに今回は終わります)
2010年4月15日