◆家庭のまつり

◆家庭のまつりについて◆

日本人は、「家庭のまつり」を行うことで神様のおかげに感謝する心を養い、優しさや思いやりの心を育んできました。

昔から、竈(かまど)には荒神(こうじん)様、井戸には水神様、玄関には門守りのお札、厠(お手洗)には厠神様というように、家の中の色々な場所に、様々な神様を祀ってきたのですが、それはいずれも私達の生活に欠かすことのできない、大切な場所であったからです。

日本人にとって神様は、私達の日常生活にすっかり溶け込んでいる、極めて身近で親しい存在であり、神様とともに日々の生活を歩む中で、いつも家に災いがなく、家族が皆元気で暮らせるように祈り、感謝する暮らしぶりがごく自然に行われてきました。

・神棚の起源

→今でも、家の中の色々な場所に様々な神様を祀っているのを見かけますが、今日の多くの家庭では、座敷や居間に神棚を設けて神様をおまつりしています。

神様を棚にまつるという故事は、1300年近くも前に著された日本最古の書物である『古事記』に記されていました。

伊勢の神宮におまつりされている天照大御神様が、お父様の伊邪那岐命から賜った神聖な宝物を、神様として棚におまつりされたという神話がそれで、今日の神棚が伊勢の神宮と深い関わりのあることがうかがわれます。

また、伊勢の神宮といえば、日本人の大御祖神(おおみおやがみ)、総氏神として古くから日本中の信仰を集め、御師(おんし)といわれる人々によって、「御祓大麻」(おはらいたいま)や「大神宮さま」とも呼ばれた伊勢の神宮のお札が全国に頒布され、江戸時代の中期には全国の約9割の家庭でおまつりされていた、という記録もあるほどです。

当時各家庭では、伊勢の神宮のお札をおまつりするために、「大神宮棚」という特別な棚が設けられていました。以後、この棚を中心に家庭のまつりが行われるようになったと伝えられています。

・神棚を設ける場所

→神棚は明るくて清浄な高い場所(人の目線よりも高い場所)に、方角は、南向きあるいは東向きに設けます。また、家族や会社の人が、お供えしたり拝礼したりするのに都合のよい場所であることも大切な条件です。ただし、以下の場所は避けてください。

①人が出入りする場所の上(例えばドアの上・障子や襖の鴨居の上など)

②2階がある家は、人が神棚の上を歩くような場所

③お風呂・台所・トイレなど水周り付近

④表鬼門・裏鬼門(家の中心から見て、北東・南西)

②についてですが、集合住宅やビルなど、建物の構造上どうしてもやむをえない場合もあるかと思います。その際は、神棚を設けた部分の天井に「雲」という字を墨書した白紙を貼ることが必要です。

こうして決めた場所は、その家や事務所の中で過ごしやすく、清らかな場所であるはずです。

・宮形をすえる

→神棚を設ける場所が決まったら、次に宮形を用意して棚にすえます。

古くはお札を柱などに貼ったり、そのまま立てかけておまつりしていましたが、今日ではより丁重におまつりするために、神社の形を模した宮形にお札を納めます。

宮形の種類や大きさは様々で、おまつりする場所に応じて、適当なものを選びましょう。

・祭器具をそろえる

→神棚をおまつりするのに必要なものに、家庭用祭器具があります。

①榊立(さかきたて)…常緑でいつもみずみずしく、神の宿る木ともいわれる榊を立てるために使います。

②瓶子(へいし)③水器(すいき)④平瓮(ひらか)⑤三方(さんぼう)又は折敷(おしき)…いずれも神饌をお供えするのに用います。

⑥燈明(とうみょう)

神具店などで求めることができます。当社でもお取り寄せできますので、お気軽にお問い合わせください。

・お神札(おふだ)を納める

・注連縄を張る→宮形をすえたら、次に注連縄を張ります。注連縄を張るのは、そこが神聖な場所であることを示す意味があるからです。 注連縄は、稲藁(いなわら)を左綯(ない)にしたもので、牛蒡のように細くて太さの変わらないものを牛蒡注連(ごぼうじめ)、大根のようにだんだんと細くなっているものを大根注連(だいこんじめ)と呼びます。

地方によって違いもあるようですが、大根注連の場合だと、神棚に向かって右側に太い方がくるように張るのが一般的で、それに紙垂(しで)を4垂れ、等間隔に挟み込みます。注連縄は、細い縄で代用しても構いません。

注連縄は年末、神棚のお札を新しくする前に取り替えます。紙垂は、汚れたり、破れた時には取り替えるようにします。

→神棚のしつらえが終わったら、次にお神札を宮形に納めます。宮形には、 ①伊勢の神宮のお神札(神宮大麻)

②氏神様のお神札

③その他の崇敬する神社のお神札

を納めますが、その際には御神座の順位があることに注意しましょう。

例えば三社造の場合では、御神座の順位は中央が最上位、次が向かって右、次が向かって左となりますので、中央に伊勢の神宮、向かって右に氏神様、向かって左にその他の崇敬する神社の順番でお神札を納めることになります。

また一社造りの場合は、一番手前に伊勢の神宮、その後ろに氏神様、その後ろに崇敬する神社、という順にお神札を重ねて納めます。

旅先でいただいてきたお神札は、崇敬する神社のお神札とともに納めてもよいでしょう。

・神棚がない場合のお神札のまつり方

→神棚があるに越したことはないのですが、神棚がない場合は、明るくて清浄な高い場所(人の目線よりも高い場所・タンスや棚の上など)に白紙(または白布)を敷き、方角は、御札が南か東を向くように、おまつりください。

注意すべきことは、上記したことと変わりありません。

・お供えの仕方

→神饌をお供えする時も、順番があります。横一列に並べるのが基本形とされていますが、スペースの都合では二列でも結構です。

また、お正月や毎月1日、家族にとって大切な日などには、この他に野菜、果物などもお供えします。

そして神様にお供えした後の神饌は、「お下がり」として、家族皆様でいただきます。神様のお下がりをいただくことで、神様の力をいただく、そんな意味があるからです。

・お参りの作法

→神棚をお参りする際の作法は、神社にお参りする時と同じ、二拝二拍手一拝です。

神棚へのお参りは、「おはようございます」「行ってきます」「ただいま」「おやすみなさい」の挨拶に併せて、毎日の平穏な生活や家族の健康を祈り、感謝することなのです。

・お正月の準備

→昔は、12月13日が煤払いで、その頃から家中の大掃除をして、お正月を迎える準備をしました。今では、暮れの30日までに正月準備を行いますが、大晦日に行うのは一夜飾りといって、神様に失礼にあたると考えられているので嫌われます。

また、新年を迎えるにあたっては、神棚を綺麗に清掃し、注連縄と紙垂を新しくします。そして、氏神様から受けてきた神宮大麻、年神様、氏神様のお神札を収めます。

家族が新しい年を過ごすために、忘れてはならない大切なことです。

・季節や人生の節目に

→お正月ばかりでなく、ひなまつりや端午の節句といった季節のまつりや、七五三などの人生のまつりは、子供たちにとって本当に楽しみな、特別な1日です。こうした日には、お祝いの尾頭付きや赤飯を神棚にお供えして、子供たちと一緒に、無事な成長を神様に感謝し、祈るようにしたいものです。

その他にも、お父さんの昇進や子供の卒業式など、家族のお祝い事がある時などは、家族の絆を深め、子供たちにとって、いつまでも忘れがたい大切な思い出づくりとなる絶好の機会です。ぜひ家族そろって行なってみてはいかがでしょうか。

→人生儀礼についてはこちらへ

・神棚に色々な神社のお神札をおまつりすると、神様がケンカしませんか?

→日本の神様は八百万の神々というように、様々な御神徳の神様が協力し合って私達をお守りくださっています。ですからケンカすることはありません。

・お神札とお守りはどう違うのですか?

→お神札は一家の安全などを願って神棚にまつりますが、お守りは一人一人が交通安全、学業成就、厄除などを願って身につけるものです。お神札を1年ごとに新しくおまつりするように、お守りも1年ごとに神社からお受けします。ただ、特別な願い事が叶うまで身につけていても良いでしょう。

・古いお神札はどうしたらいいのですか?

→古いお神札は、お神札を受けた神社や近くの氏神様に納めて、お焚き上げをしてもらいます。旅行の際などに受けてきた神社のお神札やお守りを、近くの神社に納めても差し支えありません。

・神宮大麻や氏神様の御札は、毎年新しくするべきですか?→はい、お正月を迎えるにあたって、それぞれに新しくいたしましょう。

御札を毎年新しくする理由の第一に、「神霊のお宿りになられているものは清浄にせねばならない。」ということが挙げられます。1年間もすれば、表面の紙の色も変わって参りますし、ホコリだってついていることでしょう。年末にはお家の大掃除をして1年間の汚れを取り(しっかりと神棚も掃除をして)、正月飾りをし、御札も新しくして、清々しい気持ちで元旦を迎えたいものです。

そして理由のもう一つは、「御霊威を新たにされた神様の生命力にあふれた御霊(みたま)の力をいただくことで、更なるご加護がいただけるため」です。地域によっては古い御札をずっと神棚に置いたままにしておく風習もあるやもしれませんが、できるだけ古い御札は、1年間無事に過ごせたことに感謝をしてお近くの氏神神社にお納めし、お焚き上げするのが良いでしょう。

・古いお人形の処分はどうしたらいいですか?→人生儀礼の節句をはじめ、人形は古来より人と深い関わりを持ってきました。子供の成長を見届けてきた人形・日頃から心癒され、かわいがっていた人形などには、魂が宿り、その持ち主の身代わりをすると考えられております。その役目を終えた人形やぬいぐるみは、各家庭に眠ってしまいがちになるのが実状ですが、いらなくなったからといって簡単に捨ててしまうのは可哀想ですね。「今までありがとう」という感謝の気持ちをこめて神社にお納めいただき、お祓いをして、お焚(た)き上げいたしましょう。

また、故人の遺品の処分や思い出の品など、簡単には処分できない物などのお焚き上げも、当社では承っております。

→人形感謝清祓についてはこちらへ

・宮形の扉は開けておくのか閉めておくのか、どちらが正しいのですか?

→お神札を目のあたりに拝めるように、そして神様に家の中をよくご覧いただけるようにと、扉を開けておく家もあります。あるいは開け放しではおそれ多いと閉めておく家もあります。これは、どちらが正しいという訳ではなく、神棚を祀る人の心ばえの結果によるもので、その家の慣習によるものなのでしょう。

ちなみに神社では普段、皆様がお参りする拝殿の扉は開けておき、神様がお鎮まりになる本殿の扉は閉められています。本殿が開けられるのは、神社にとって大切なお祭りが行われる時だけです。