競争戦略論Ⅲ
競争戦略から新市場の発見へ!
競争戦略から新市場の発見へ!
貴社の強みを活かした新市場を発見するためには、現在のビジネスに片足をしっかりと軸足として置きながら、もう片方の足を新しい市場へ伸ばして頂きたいと思います。両足で新市場へのジャンプはリスクが大きいからです。
その肝心な新市場について、いきなり発見しようとするのではなく、現在の行われているビジネスの競争戦略の延長線上で発見しては如何でしょうか。そこでは、これまでの「競争戦略ⅠとⅡ」がお役に立つのですが、「競争戦略Ⅰ」では伝えきれなかった競争の相手について、今回はまとめることにします。新しい市場を発見する一助になれば幸いです。
同じ商品やサービスを販売している企業は「見える敵」ですが、「見えない敵」も数多く潜んでいます。その「見えない敵」も考えて競争戦略を練る必要があります。競争する相手は当然のように身近な敵を想定していると思いますが、その視野を広げることで、いきなり気づかなかった企業がライバルとして現れ、長年かけて築いてきたものを奪われてしまった、なんて悲劇が起きないようにしなければなりません。
「本当の競争相手を見つける」作業をすることは、今見えている競合する企業を再確認することと、見えていないが敵になる可能性のある企業を見つけることになります。同時に、この作業の産物として、自社のビジネスの領域を拡大する可能性を探ることにもなります。考え方として大きく二つの切り口があります。
a) 自社の事業のコアとなる技術と競合しそうな技術を見つけること。代替技術の発見。
b) 自社の製品と実際に市場で競合する製品を発見すること。代替製品の発見。
自分の会社で持っているコア(核、中心)となる技術が何であるか、サービス業でも同様ですが、もう一度整理してみることをお勧めします。その中で市場で戦える強みとなっている中心は何かです。この中心的な技術にとって代わるものを持っている企業がライバルの一つです。
例えば、貴社がウール(毛糸)の加工技術をコアな技術として持っていて、セーターを販売していると会社だとします。見える敵は、セーターを販売する企業です。しかし、もしかすると毛布を生産しているメーカーがウールの加工技術を応用して、明日にはセーター市場で敵になるかも知れません。
自社の製品と実際に市場で競合する製品を発見することですが、赤ちゃんが履く子供靴を例に考えましょう。
見えている敵は、子供靴のライバルだから靴メーカーとなります。靴メーカーだけではなく、ライバルは赤ちゃんが履けるサンダルを作っている会社も含めて考えなければなりません。また、赤ちゃんの誕生祝としてのプレゼント需要と見れば、赤ちゃんの服やギフトセットが競争相手です。オムツや洗剤のギフトパッケージが競合商品かも知れませんし、靴の代わりに牛肉や果物になるかも知れません。
キリがないと思われるかも知れませんが、貴社がだれに対して、どのような流通で、どのように販売しているか、というように絞って考えた時に、何が代替製品になりうるか、そして気を付けて注視しなければならないのは、どのような商品で、どこの会社か?というように考えてください。
現時点では全くライバル関係ではなくても、潜在的に貴社の市場に参入してくる可能性のある潜在的な競争相手も考慮する必要があります。
A) 地理的な市場拡大を狙っている同業者
B) 製品ラインの拡大
C) 川上統合・川下統合
例を挙げて一つずつ説明します。
Aは、大阪で成功したお好み焼き屋が、東京のもんじゃ焼きの店の隣に進出してくるなど、地理的な拡大のケースです。
Bは、高級品しか扱わなかった大手メーカーが、中小企業がシェアを取っていた低価格品の市場に参入するなどです。
Cの川上や川下は、企業の各機能の垂直統合の度合いに関係する話です。川上が原料や材料調達で、川下が販売するような川の流れのイメージです。例としては、大手眼鏡メーカーが小売店チェーンを全国で始めて眼鏡屋のライバルになった、などです。
ここまでありがとうございました。
先ずは、自社の強み、コアとなるもの(人、技術、サービス、知的資産、不動産など)を洗い出してみてください。
それが整理できると、新しい競争相手が見つかると思います。そこからさらに、その競争相手のやり方と少しずらして独自のポジショニングが取れないでしょうか?もし発見できれば新しい市場への挑戦の糸口になります。
参考)「現代マーケティング(新版)」嶋口充輝・石井淳蔵 有斐閣Sシリーズ
「経営戦略論(新版)」石井淳蔵・奥村昭博・加護野忠男・野中郁次郎 有斐閣