組織のマネジメント(その3)
人事管理、インセンティブ・システム、人材教育について
人事管理、インセンティブ・システム、人材教育について
ここでは、「企業は環境の中で生きている生き物」としての環境のマネジメントと、人の集まりである組織のマネジメントに分けて説明しています。環境のマネジメントは、企業の対外的なマネジメントでした。今回は、組織のマネジメント、つまり企業内部のマネジメントについて説明をしたいと思います。皆様のお役に立てれば幸いです。
環境のマネジメント
どの市場で戦うか?
市場の選択(商品・サービス、バリューチェーン、地域、国など)
複数の事業(多角化、事業の組み合わせ、余剰資源の活用)
資源配分(人モノ金の配分、適正配置)
競争戦略
競合他社(市場と顧客とライバル)
ビジネスシステム(事業の仕組み)
差別化と優位性(見える資産、見えない資産)
組織のマネジメント
組織構造
組織の形(機能別、事業部、マトリクス、フラット)
組織の連携(本社、支社、販社、子会社、部、課、係)
組織の配分(人モノ金)
組織運営
リーダーシップ
経営理念と組織文化
ビジョン、目的、目標
人事管理
給料とボーナス(インセンティブ)
人事評価制度(インセンティブ・システム)
人材教育
今回は、組織のマネジメント(その3)です。その1では、分業をどのように行うのか(組織構造)、その2では組織の運営についてお伝えしました。今回は、組織で働く人が自立してイキイキと働くための人事管理について考えてみます。リーダーシップでみんなを引っ張る精神的な努力も必要ですが(ソフト)、人事管理のようなシステマティックなルール作りも必要になります(ハード)。企業経営の組織(人)のマネジメントには、ソフトとハードのバランスが大切です。
「人は経営の要」「経営は人事に尽きる」と言われる通り、組織のマネジメントで人事が重要な役割であるとご理解の事と思います。人事の中でもとりわけ重要な事柄は、インセンティブと人材教育ではないかと思います。
インセンティブとは、達成意欲を引き起こす源泉となるものです。一番わかりやすいのは、お金です。企業で働く人にとっては、お金が必要だから会社に働きに来てくれるます。だから、たくさんの給料を出すだけで全員がやる気を出して働いてくれるか、というとそう単純ではありませんし、企業が出せるお金にも限界があります。そこが難しさでしょう。
ここでは、お金を含めたインセンティブ・システムについて、人の欲求から企業のインセンティブ・システムへと順に考えたいと思います。
人の欲求を5段階に分けた有名な説です。下位の欲求を満たすと上位の欲求を求める、という段階的に説明したもので、科学的に立証されているものではありませんが、直感的にわかりやすい理論です。
生理的欲求=>安全欲求=>愛情欲求=>尊厳欲求=>自己実現欲求
飢えを満たされると、次は安全なところに住みたい。そして誰かに愛されたい、愛したい。さらにその上には「尊厳」欲求があります。自分の重要性のような尊厳の内発的なものと、社会からの認知のような外発的な尊厳を満たしたいという欲求です。そして自分は何が出来るのか、というような「自己実現」へと続いていき、欲求は死ぬまで尽きることはありません。(グロービスのリンクを下に貼っています。分かりやすく学べますのでご参考にしてください)
つまり、人の欲求から考えると、企業は働く人にお金だけを渡しても満足できないことが分かります。危険な職場は言うまでもなく、会社の中でないがしろにされたり、無視されたりすれば給料をたくさんもらっても、やる気が出ません。一方、社会貢献や社会的に立場が認められるような仕事であれば、給料が安くてもイキイキと働けるかもしれません。
企業とは、収入を得る場、仕事をする場、人間関係を持つ場という3つの面を持つ場です。マズローの欲求5段階説のそれぞれの欲求を、企業が満たせる可能性を持っています。
企業の中での「自己実現」欲求とは、仕事の面白さ、「自分がなにをできるかを確かめ、その限界を広げ、そして自己を表現しようとする」ことです。「道を究めたい」という職人さんがいますが、まさに自己実現欲求の良い例でしょう。
組織が与えるインセンティブ
①物質的インセンティブ:金銭的報酬=>生理&安全欲求
②評価的インセンティブ:人事評価、組織での評判=>尊厳&自己実現欲求
③人的インセンティブ:リーダーの人柄、組織の人間関係=>愛情欲求
④理念的インセンティブ:経営理念、組織文化=>尊厳&自己実現欲求
⑤自己実現的インセンティブ:働く人に満足感を与える=>自己実現欲求
見えにくいインセンティブもあります。六本木ヒルズにオフィスがあるとか、出社しなくても良いとか、ブランドイメージが良いとか、社員食堂が充実しているとか、デスクが大きく最新のPCを使えるとか。。。人それぞれのやる気になるものもあります。
これを参考にして、働く人の視点で、会社としてバランス良くインセンティブを与えているか、チェックすると良いでしょう。
人事評価制度は、各企業で従業員を評価するための制度(システム)のことです。給与やボーナスを決定するための制度です。
具体的な制度は非常にたくさんの方法がありますが、ここでは人事評価制度を、働く人の動機づけになるインセンティブ・システムとしてとらえ、より本質的な部分に近づきたいと思います。
企業への貢献度合いは、次の3つの要素で総合的に測られるのが理想です。
フローへの貢献:ある期間の売上、利益などへの貢献
ストックへの貢献:企業の資産として積みあがるもの、技術、信用、ブランドイメージ、顧客数などへの貢献
調和への貢献:職場環境づくりへの貢献
企業の評価するシステムで働く人へ方向づけられますので、どの要素を重視するのかが非常に重要です。
上の3つの要素でインセンティブ・システムを考える場合も、「あちらを立てればこちらが立たず」のような問題が発生します。
「短期か長期か」:短期重視なら効果が分かりやすいがその場限りの対策が増える。長期重視なら顧客との関係性やブランド価値向上に効果があるが評価しにくい。
「個人か集団か」:個人なら計測して報酬を与えやすいが、集団で評価するとチームとしての結果が出やすいが、個人の不公平感が残る。個人重視にすればチームプレーが減ってしまう。
「集中か分散か」:広く均等に報酬を与えるのか、特別な個人に集中して与えるのか。いずれにせよ双方に不満が残る。
それぞれ矛盾するため、企業の置かれている状況と、リーダーがみんなをどちらに引っ張りたいのかによって、バランスをとるしかありません。
付け加えると、企業が成長している間は、従業員の給料を全体的に上げることが出来ますので、社員の不平不満は出にくくなります。制度的には矛盾を抱えつつも、成長する企業であれば、一人一人が満足して働きやすいと言えます。
どうしても不満が出る人事評価ですが、納得性を高める鍵は2点です。
チャンスの公平性
人事評価の公正さ
チャンスの公平性は、差別なく、誰にでも昇進のチャンスを与えるということです。
評価の公正さは、できるだけ客観性を高めるかという努力です。コツとしては、評価尺度をみんなが納得するものを選ぶこと。もう一つは、評価プロセスが公正であることを示すことです。尺度とプロセスに納得すれば、不平不満も減るはずです。
松下幸之助氏が「貴社は何を作っておられますか」と聞かれ「人をつくっております」と答えたそうです。企業は人を作ることにより成長し発展します。
人が育つことを突きつめていくと、本質的には
「その人が日ごろどのくらい大きなことを考えているか」
「人が育つプロセスは、自学のプロセスである」
とされています。つまり企業は人を育てることは出来ないが、育つのを助けることが出来る、となります。その手段としては、体験学習と研修の二つです。「OJT」と「Off JT」とも呼ばれています。
企業における人材育成の基本は、OJTであり、Off JTは補助の手段となります。OJTは仕事に密接しており、まさにその人の業務ですので、プレッシャーが高く、フィードバックが早く与えられるからです。
「グロービス知見録」 https://globis.jp/article/5405
会社が順調な時にはもう一段飛躍するために、会社が少し調子悪い時には改善、建直しのために、外部の意見を取り入れることをお勧めします。社員には言えない雑談を私とするだけでも、翌日からの仕事が変わるかも知れません。きっとお役に立てると思います。
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