10分でわかる
「最高の体調」
ACTIVE HEALTH
鈴木 祐
クロスメディア・パブリッシング
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この本は、文明病と言われる様々な体や心の不調を、人間の進化に原因を見出し、様々な科学的な裏付けのあるデータを集めて検討した上で、具体的な対応策をまとめています。
肥満、集中力の欠如、鬱という症状を自覚している方に、特に都会に住む方にはお勧めの本です。さらに、今日からでも実践可能なアドバイスが多数含まれている点も素晴らしいです。
この本の著者は、旧石器時代の食事法「パレオダイエット」を実践することで、体重が減り、集中力と生産性が高まったと述べています。
興味のある方は、この本を購入して、是非とも実践してください。
今回は本書の内容が分かりやすいように、階層化し章立てしていますので、実際の本書の目次とは異なりますので、ご注意ください。
やる気のなさには、自己啓発本、仕事の非効率にはビジネス書、感情の乱れには心理学書、体調の不調には家庭の医学書とバラバラに扱われるが、その原因を辿れば全て文明病に行き着く。
「文明病」とは、近代社会によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状のことです。もっとも典型的な例は「肥満」です。
1890年代では、肥満そのものがなく、肥満者は異常者として見世物小屋で働かされた記録もあるほど少なかったというのは驚きでしたが、その後、社会が豊かになり、食料が大量生産され、価格の低下により肥満が増加しました。
進化医学とは、進化論をベースにしながら人間の病気の正体を考えていく学問です。
人類は、600万年以上もの間、狩猟採集民として生活していました。農耕生活に移行したのは、ここ1~2万年くらいばかりのことです。
ヒトの脳と体は、自然の中で獲物を追い、太陽の運行とともに暮らし、少数の仲間と語り合う、そんな狩猟採集民の環境で、ベストパフォーマンスが発揮できるように進化してきました。
!本書は、600万年の進化によって、脳に刻まれた遺伝子レベルの働きが、「ここ最近の1、2万年」で人間の社会が急激に変化したことによって、ついて行かれないことにより、心と体に問題が生じている、という視点を軸として文明病を解明しています。
古代の狩猟採集民にとっては、カロリーが低いものばかりで食事も充分ではなかったため、脳の報酬系は、できるだけカロリーの高いものを探すように進化しました。つまり、脳の進化の結果として、人は高カロリー食品が好きなようになっているのです。
ところが現代では、スナック菓子や炭酸飲料のような高カロリーの食品が、手軽に手に入ります。そして、そのような手軽な食品を脳が覚えてしまうと、常にそれらを欲しがり、結果として肥満になります。
!余談になりますが、私が30年前に中国へ行った時、中国の工場の労働者に好きな食べ物は何か尋ねても、ほとんどの人が答えてくれませんでした。
後ほど分かったその理由は、ほとんどの労働者は、お腹を満たすことがまだ出来ていない状態のため、「好きなもの」という考えよりも、お腹を一杯にしたいという気持ちしかなかったからでした。
また、私がご馳走になる食事には、油をたくさん使って料理をしてくれました。
日本人の私にしてみると、油が多すぎてカロリーが高すぎて食べにくかったのですが、これも当時の中国のおもてなしのひとつだろうと考えています。
現代人の集中力の低下も文明病の一つだと言われています。
狩猟採集の時代には、狩りをするための動物の気配などを感じとるために神経系の働きが進化してきました。
その進化によって多くの事を敏感に感じ取れるようになりましたが、現代ではあまりにも多くのものに囲まれ過ぎているため、常に神経が色々なもの、ことに働き過ぎて、集中力が散漫になっているのです。
豊かになるほど鬱病が増える傾向にあり、原因は解明されていないものの、現代人の心のトラブルの多くが、急速な文明の発展による進化のミスマッチと考えられています。
文明病を引き起こす大きな2つの原因が、「炎症」と「不安」とされています。
「炎症」の原因:腸、環境、ストレス
「不安」の原因:価値、死、遊び
炎症と不安が互いに影響し合い、負のスパイラルに落ちていき、「ぼんやりとした不安」によって脳が炎症を起こし、その炎症により、さらに不安が高まります。
85歳以上のスーパー高齢者を調べると、一般の高齢者と比較して、体の炎症レベルが異様に低かった。この研究により、体内の炎症レベルを見れば、老化のスピードが予測できることが判明しました。
炎症は、傷のように体の表面にもありますが、現代では、アレルギーによって免疫システムが過剰に反応して起きる体内の炎症反応が問題です。
例えば、内臓脂肪。
内臓脂肪は、人体にとって異物であるため、免疫システムが動き出し、脂肪細胞が分泌する炎症性物質によって臓器に炎症を引き起こします。
内臓脂肪が減らない限り、体内でジワジワと燃え続け、炎症物質で傷ついた血管や細胞が動脈硬化や脳梗塞の引き金となるのです。
これがメタボリックシンドロームの発症プロセスです。そして、自覚症状がないので怖い存在です。
炎症が起こる原因の3つのキーワード
多すぎる:古代には少なかったものが、現代では豊富過ぎる。
少なすぎる:古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる。
新しすぎる:古代には存在していなかったが、近代になって現れた。
進化の結果、人間は低カロリーには対応できますが、高カロリーにはまだうまく対応ができない状態です。
そのため、皮下脂肪や内臓脂肪が溜まり、やがて慢性的な炎症を引き起こします。
睡眠と炎症の関係について、平均睡眠時間が1日7~9時間の範囲を逸脱すると炎症が増えるとされています。また、夜中に何度も目が覚めると、体内の炎症が増えることも分かっています。
現代には、これまでにはなかった新しいものがたくさんあり、それによってストレスを受け、炎症を起こします。
例えば、人体への被害が大きいトランス脂肪酸。
人間の長い歴史の中で未知の物質であるトランス脂肪酸を摂取すると、体や脳は対応できず、肝臓の働きを乱し、炎症レベルが高めてしまいます。
!米国では、トランス脂肪酸が一時期大きな問題になり、マクドナルドなどでも対応に迫られ話題となりました。日本マクドナルドも、2013年にはフライオイルに変えました。パーム油と牛脂を混ぜたものでポテトを揚げています。
人間の腸は、体外から食物を摂るために、外部の細菌やバクテリアなどの脅威にさらされています。そこで、外敵と戦ってくれるのが腸内細菌です。
暮らしが近代化する中で、免疫システムに不調が起こり「リーガキット」(腸管壁浸漏症候群)が起こる。これは腸の粘膜をつなぐ結着細胞が壊れて、バリア機能が敗れた状態のことです。
リーガキットは、アレルギーや認知機能の低下などの様々な症状を起こし、疲れやすさの原因でもあります。
現代人の腸は、様々な要因によって外部の敵と戦ってくれる腸内細菌が少なくなっています。
抗生物質の使用
抗生物質を使用すると腸内細菌が大量に死滅していまい、かえって体に害になることもあります。
!一時は、日本でも抗生物質の処方が多すぎましたが、最近はその傾向もなくなっているので大きな問題はありませんが、処方された場合には、どのような影響があるのか、お医者さんによく聞きましょう。
風邪だから、前にもらった抗生物質を飲もう、というのは絶対に止めた方が良いです。
衛生の発達
現代では、清潔すぎる環境が、体に良い菌との接触を妨げてしまいました。
肌に住み着く有益なバクテリアまで殺してしまっているので、抗菌グッズの使用しすぎにも注意が必要です。衛生管理は、多くの場合普通の石鹸で充分です。
シックハウス症候群
細菌(バクテリア)は、人間の居住空間にも存在し、腸内環境にも影響を与えています。そして、住居の進化によって環境が変化し、シックハウス症候群が起きています。
人類は長い間、自然環境の中で暮らし、動物と触れ合いながら進化してきました。
近年までは、住居は木材や土、藁や動物のフンで作られ、通気性が良く、水回り設備もなかったため有毒なカビも発生しにくい状態でした。
しかし近年は、アルデヒドのような人工化学物によって起きるアレルギー症状もあり、また、自宅やオフィスに漂うカビなどによって、咳、熱といった炎症反応も引き起こしています。
部屋の換気は腸内環境を左右し、ひいては体内の炎症にも影響を与えています。
現代では人間とバクテリアが共存できる住居が、理想的な空間です。
現代の人間の腸内環境は崩れていることが多いですが、実験によれば、住む環境や食事を変えれば、腸内環境は3日でも多様性を取り戻すことが出来るそうです。
発酵食品
バランスよく、多くの発酵食品を食べることで、腸内細菌が増えます。食品によって、細菌の種類が異なるので、偏らないようにすることが必要です。
例として、納豆、ヨーグルト、キムチを1日40~50g食べる。軽く水洗いした生キャベツでも可。
サプリメント
悪玉菌が多すぎる場合には、発酵食品を摂っただけでは改善しないことも多い。
プロバイオティクスが有効です。
食物繊維
データによると、食物繊維の摂取量が10g増える毎に、早期死亡率が11%ずつ減少するという結果が出ています。
ところが、腸内細菌は、加工食品に弱く、高脂肪で食物繊維が少ない食品(ファストフードなど)や、精製糖の多い商品(スナック菓子や清涼飲料水など)により、細菌が死にやすくなることが分かっていますので、注意が必要です。
食物繊維摂取のためには、野菜、フルーツを増やしましょう。
また、検証データが多いのは、ベリー類とココアです。
ブルーベリーなら1日100gから、ココアなら大さじ3~4杯から始めてみましょう。
人類は、環境に弱い生き物であり、容易に影響を受けてしまいます。
そして、現代の環境と遺伝のミスマッチとして、人口密度や大気汚染が多すぎ、微生物との接触や濃密な対人関係が少なすぎ、そして、近代的な建物、電子機器などの新し過ぎるものに囲まれ過ぎている点です。これらによって、現代人が不調になっています。
18世紀の産業革命までは、人は自然の中に住むことが当たり前でした。しかし現代では、自然から切り離された都市に住むようになりました。
「感情システム」は、人間の心の働きを3種類に分類した考え方で、最高のパフォーマンスを発揮するためには、3つがバランスよく刺激される必要があります。
「興奮」は、喜びや快楽というポジティブな感情を作り、獲物や食事を探すためのモチベーションを生み出すシステム。ドーパミンで制御されます。
「満足」は、安らぎや親切心というポジティブな感情を作り、種族内のコミュニケーションに役立つシステム。オキシトシンなどで制御されます。
「脅威」は、不安や警戒といったネガティブな感情を作り、外敵や危険から身を守るシステム。アドレナリン、コルチゾールなどで制御されています。
自然の中では、人類の感情システムの3種類「興奮」「満足」「脅威」の要素がバランスよく人間を刺激してくれます。
しかし、都市の暮らしでは、「興奮」と「脅威」が強くなりすぎてしまい、「満足」が低くくバランスを欠いている状態となり、不調を招いています。
自然との触れ合いにより、確実に人体の副交感神経は活性化することが分かっています。
副交感神経とは、気持ちが穏やかな時に働く自律神経で、疲れやダメージから回復させる働きを持ちます。
調子を取り戻すためには、ライフスタイルを壊さない範囲内で、自然との接触を最大化させるべきです。
自然の取り入れ方
現代人にも簡単に始められて効果的なのは、自然の音、自然の画像です。偽物の自然でも効果があります。
次は、観葉植物です。
自分の好きなもので良いのですが、ポトス、キク、ガーベラ、ツツジなどの観葉植物は、自然の効果もあるだけではなく、シックハウス対策にもなります。また幸福度や集中力を上げる効果も確認されています。
次は、公園です。
公園に行き自然と接するほど、心と体が改善します。大気に含まれる自然の細菌が、人間の免疫システム、腸内環境にも良い影響を与える効果があるからです。
公園が近くになくても、太陽には毎日6~20分は浴びましょう。
さらに本格的なアウトドア活動です。
年に3、4回は、キャンプ、登山、魚釣りなどのアウトドアを楽しみたいです。可能ならば、2週間に1回は大自然に身を置くことが理想です。
狩猟採集の時代には、小さな集団で生活し、全員が家族や親戚などの顔見知りだったため、見知らぬ多くの人と、上手く人間関係を作れるようには進化しませんでした。
多くの人との人間関係を作るのが苦手な一方、孤独にも適応が出来ていません。そのため、孤独からくる炎症で体調が崩れ、さらには脳の機能まで衰えてしまうのです。
孤独だった人に友達が出来ると寿命が伸びる傾向があり、最大15年も寿命が伸びたというデータもあります。
友人関係の改善法(親密な友人を得る方法)
*接触時間を増やす。平均200時間で深い仲になれる。
*同期行動をする。クラブ、サークル活動などにより、仲間との絆を強める。
*互恵関係を築くこと、つまり好きな相手に利益を与えて信頼を得ること。
過剰なストレスが、全身を壊していき、人を殺します。
心臓は、メンタルに影響されやすく、興奮すれば脈拍と血圧は上がり、睡眠やリラックスすれば、それらは下がります。
ストレスがかかった状態が長く続けば、心臓や血管に過度な負担がかかり、突然死に至ることもあるのです。
進化論的には、獣と戦うような短期的に終わるストレスには耐性があっても、現代のように慢性的なストレスに立ち向かうように、脳と体は出来ていません。
ストレスへの対処法として、リアプレイザル(Reappraisal,認知的再評価)という手法があります。「リ(re)=再び」「アプレイザル(appraisal)=評価」という意味で、自分の今感じている感情を再評価して新たに意味づけする方法です。
例えば、スピーチ前に緊張を感じたら「興奮してきた!」「楽しくなってきた!」と自分に言い聞かせます。
また、誰かにイライラさせられたら「この人は、何か悪いことがあったせいで、怒っているのだろう。」と考え直すことで、感情の波が収まってきます。
このリアプレイザルを繰り返し練習すると、ストレスに強くなることが分かっています。
!和田裕美さんは、陽転思考として、一つの事実でも見方を変えることで「良かった!」を探すことをアドバイスされています。分かりやすい実践方法としてお勧めです。
ご参考) 運気アップ 陽転思考や斎藤一人さんの考え方
寝不足が続くと「睡眠負債」が蓄積してしまい、ダメージを修復できなくなります。
充分な睡眠によって、ストレスのダメージから修復し、骨と筋肉の成長、そして記憶などの大脳の情報が整理されるなどの効果があるからです。
睡眠負債を返す方法
*メラトニンが増える眠り方をする。日中には太陽を浴び、夜は暗くして寝る。アイマスクと耳せんは効果あり。
*昼寝:狩猟採集民も1回15分程度の昼寝をすることが多く、15~30分程度昼寝をするとリフレッシュできる。目を閉じているだけでも効果あり。
*コーヒーナップ:昼寝の前にコーヒーを飲んでから20分寝る。これはカフェインが脳に達するまでに20分かかるので、昼寝の効果が上がることが実証されています。
!コーヒーナップは私もしています。お勧めです!
最近の研究により、どのような運動でも、ある程度の負荷があれば脳に良い影響を与えることが分かりました。
運動がストレスに効く理由は諸説あるものの、筋肉と脳の神経の繋がりを刺激することで、ストレス対策システムにも良い影響を与えているというの説が有力です。
週に2、3回続けられる運動を行うことがお勧めです。
時速6キロ以上のペースのウォーキングを週に2回以上すること。可能ならば週に150分以上を奨励しています。
スマホの使用時間が長い人ほど、不安が大きいという研究結果があります。
狩猟採集の時代には、「どこに獲物がいるか」「病気に効く薬草はどれか」「味方になりそうな者は誰が」という情報を得て生き延びるように進化したため、新しい情報が入ると興奮し、快感を覚えるシステムが出来上がりました。
しかし現代は、多すぎるデジタル情報が絶え間なく入り、刺激が過剰になり、ストレスになっています。
対策
メールやSNSの使用時間を決めて、それ以外にはしないというルール化すること。簡単に使用時間を減らせます。
「不安」とは、本来の機能は危険を知らせるアラームです。
狩猟採集民には、猛獣に襲われれば逃げるか、戦うか?食べ物を見つけるか、空腹を我慢するか?という二者択一の「はっきりとした不安」がありました。
草陰に猛獣が潜んでいる、この植物は毒があるのか、など生命の危険を知らせるアラームが「不安」でした。そして、目の前の危機がされば、そのアラームは鳴りやむ。
現代は豊かになり、複雑な仕事や人間関係が増加し、デジタル機器に囲まれ「ぼんやりとした不安」に襲われているのです。そして、アラームがなり続けることによって、記憶力、判断力を奪われ、死期を早めているのです。
ナチスの強制収容所から生還した精神科医のフランクル氏は、生きる目的を明確にして、地獄のような日々を耐え抜きました。そこに不安にに対抗するヒントが隠されています。
狩猟採集民の未来は一日単位だったため、未来に対する漠然とした不安はありませんでした。
しかし、現代では先々まで考えて行動することが求められるために、色々なことが積み重なりストレスになってしまうのです。
解決策は、未来を今に近づけること。未来の自分と現在の自分の心理的な距離を縮めることです。
未来との心理的距離が近い者ほど、不安に強く、セルフコントロール能力が高いことが分かっています。
アメリカの研究では、人生の価値観に沿って生きている人ほど、年収と貯金額多い結果が出ています。理由は、人生の価値観に沿って生きることで、悩みは消え、自分をいたわる行動が増えるからと考えられています。
狩猟採集民にとっては、生きる、産む、育てると明確でしたが、現代の価値観の多様化が、私たちの未来像を、焦点の合わない「ぼんやりとした不安」に変えてしまいました。
ぼんやりとした不安を解消するたった1つの方法は、自分のコアとなる価値観を絞り込み、未来への道筋を明確にして、未来を今に近づけることです。
あなたの本当の価値観を自問してみましょう。
「お金が使いきれないほどあり、精神的にも満ち足りた生活を送っているとしたら、あなたは何をしたいでしょうか?」
「『今日が人生最後の日としたら、今日することは自分がしたいことだろうか?』答えがノーである時は、いつも何かを変える必要があると分かります。」スティーブ・ジョブス
すべての人間は、無意識に死への不安を感じています。私たちが選ぶ行動の多くは、その恐怖を解消するために行われています。
狩猟採集民は、輪廻転生を信じ、死が身近な存在でありました。
現代人と比べると、死への恐怖は少なく、おびえる対象は猛獣の襲撃や謎の疫病といった目の前の脅威が大きかったのです。
現代人は、いつ訪れるかも分からない「遠い死の予感」に対して無意識に不安を募らせています。
畏敬の念には、炎症を適切なレベルに保つ作用があります。
畏敬とは、自分の理解を超えるような対象に触れた際に湧き上がる、鳥肌が立つような感情のことです。畏敬を感じると、自分の小ささを思い知らされ、大きな存在の一部になったかのような感覚を得ます。あたかも、自分と外部の境界があいまいになったかのような独特な感覚です。
自然の中を歩いたり、素晴らしいアートに触れたりといった活動は、いずれもポジティブな感情を引き起こし、健康や長寿に影響を与えます。
また、尊敬できる人、カリスマによって、あなたの心が動くような人物であれば畏敬の対象となります。
ブッダが提唱した瞑想を使った「自己観察」は、自分の内面をひたすら眺め、心の中に何が起きているのかを観察し、やがて悟りの境地に達するものです。
従来の心理療法に、曹洞宗の禅の要素を組み込んだ「念」の概念を、「マインドフルネス」と呼びます。マインドフルネス瞑想を続ければ、不安、鬱、慢性痛がほぼ確実に減る、という研究結果が出ています。
マインドフルネスの意識とは、特殊な迷走状態ではなく、「その時の感情を自覚している」「今の状況に集中できる」「常に自覚的に作業を行う」という「自己観察」による日常的な意識の状態のことです。
これは狩猟採集民の時間感覚に近いものです。
彼らは、すべての体験を現在で捉えて時間を超越し、それゆえに未来からの不安から解き放たれています。
禅の「一掃除二信心」は家事を重視していますが、科学的に裏付けられ始めています。
雑巾がけ、歯磨き、炊事、洗濯などの家事を、マインドフルに行うだけであなたの不安は減っていくでしょう。
!無心で作業する、作業に没頭する、という感覚ではないかと私は理解しました。
「一掃除二信心」について。禅宗では、最初にやるべきことは掃除で、信心はそれがすんでからのこと。一日掃除をしないと、取り戻すのに二日かかる。二日しなければ、四日かかる。日課としての掃除の重要性を説きます。
また、「掃除の奥は深い。まず、第一になすべき事は掃除だ、仏様を拝んだりお経をあげるのは、それからのことだ。」というお坊さんもいます。
畏敬と観察という2つの武器を使えば、遠い未来の不安を減らすことが出来ます。
畏敬により、永遠の時間と同期しつつ、観察によって、いまの時間を生きれば良いのです。
多くの狩猟採集社会は、日々の仕事を「遊び」に近いイメージでとらえています。
作業は彼らにとっては、歌や踊りに似た娯楽の一部で、遊ぶような感覚で体験されています。そのため「重労働」「苦役」という概念が存在しません。
人間の遊び心と幸福度には高い相関があることが分かっており、遊び心のある人ほど、幸福な人生を送っている傾向があります。
現代では新しいことが多すぎ、明確なゴールがなく、良いかどうかのフィードバックも直ぐにないせいで、未来への不安が増しています。
フィードバックの分かりやすい例として、インスタグラムです。
インスタグラムに写真をアップして「いいね!」が直ぐに得られると、嬉しくてやめられないのですが、これは脳の快楽システムによるものです。そのような早いフィードバックがないと、不安ばかりが募ります。
人類は、大人になっても遊ぶ必要があります。
狩猟採集民から現代人への「遊び化」のパターンのヒントは、「ルール設定とフィードバック」にあります。
ルール化することで、いまここに集中することが出来る。
作業をルール化して、未来を細かく刻むことで、現在との心理的距離が近づく。逆に作業をルール化しないと、未来が遠いままに感じられます。
!「7つの習慣」も同様の考えで、人生の目的を、日々の行動レベルの小さな目標に分解して、どんどん達成することで、未来を心理的に近づける。成功体験が、次への意欲にも繋がります。
ご参考) 「7つの習慣」からの学び
ルール設定のアイディア
*下位プロジェクト診断:価値観やコアプロジェクトを分解し、直ぐに取りかかれるレベルまで落とし込む方法。
*インターバル設定:作業を集中してこなすために、インターバルを取り入れる。
*3のルール:今日やるべきことを3つ、今週中のことを3つ、月内のことを3つ、今年中にやり遂げたいことを3つ、という具合に3つに集中して絞り込む方法。
*イフゼン・プランニング(If … then...):「もしXが起きたらYをする」というルール化する手法。2段構えで将来の時間が固定されるので未来を近く感じることが可能。3のルールで設定したタスクを「イフゼン・プランニング」のフォーマットを使って落とし込む。
フィードバック化のアイディア
*作業トラッキング:記録を残す。
*アカウンタビリティチャート:90分区切りで作業内容を記録していく。
*メタ認知:「思考について考える」という一段上の認知機能のこと。「さっき自分は昼飯のことを考えていたな。。。」と考えることです。
!人類は、大人になっても遊ぶ必要があり、その目的は人生に遊びの感覚を取り戻し、遠くなった未来を現在に近づけることです。このことさえ見失わなければ、どんな状況にも対応できるでしょう。
本書の弱点は、進化論として考えると、人間の脳と体が、私たちを幸福にするためにはデザインされていない点と書いています。
生物として長寿と繁栄を目的に変化に適応しているため、進化の仕組みは、後世に遺伝子を引き継げれば充分である。つまり、個人の幸福などは一切気にもかけてくれていないことです。
本書の内容は、遺伝のミスマッチが引き起こした「不要な苦しみ」を減らすための方法論であり、幸福論ではないからです。
以上
!今回の学びとして、自分のための記録
肥満対策=>スナック菓子、パンを減らして、野菜とフルーツ、そしてココアを意識して摂る!
集中力=>朝の散歩とコーヒーナップの実践!
自然=>週1回くらいは自然の下で仕事が出来ないかトライする!+月1回のハイキング
仕事法=>1日、せめて2,3日単位の仕事に細切れにして、どんどんクリアーする!
遊び=>ルール化とフィードバックは、子育てに使ってみる!