環境のマネジメント(その1)
市場の選択、複数の事業、資源配分について
市場の選択、複数の事業、資源配分について
環境のマネジメント
どの市場で戦うか?
市場の選択(商品・サービス、バリューチェーン、地域、国など)
複数の事業(多角化、事業の組み合わせ、余剰資源の活用)
資源配分(人モノ金の配分、適正配置)
競争戦略
競合他社(市場と顧客とライバル)
ビジネスシステム(事業の仕組み)
差別化と優位性(見える資産、見えない資産)
組織のマネジメント
組織構造
組織の形(機能別、事業部、マトリクス、フラット)
組織の連携(本社、支社、販社、子会社、部、課、係)
組織の配分(人モノ金)
組織運営
リーダーシップ
経営理念と組織文化
ビジョン、目的、目標
人事管理
給料とボーナス(インセンティブ)
人事評価制度(インセンティブ・システム)
人材教育
「環境のマネジメント」とはあまり聞かない言葉かも知れません。経営学の有名な本『ゼミナール経営学入門』では、経営学を環境のマネジメントと組織のマネジメントに大きく分けて説明しています。これは経営の要素をうまく包含した言い方だと思います。
「企業は環境の中で生きている生き物」であり、「企業は人の集団である」と考えると、環境と組織に大別されることがご理解いただけると思います。
企業は、どの市場へ進出しようか、どの国でビジネスを行うか、また世の中の流れに大きく影響を受けたりと、環境にどう順応し対応していくのか、環境のマネジメントが非常に重要になってきます。
(原著では「矛盾と発展のマネジメント」もありますが、ここでは中小企業の経営者向けに二つに絞ります。詳しくは、ゼミナール経営学入門 日本経済新聞社をご覧ください。また、ここでの内容は私の実践的な理解からまとめなおしていますので、経営学的な意味とは異なる部分もあります。ご理解ください。)環境のマネジメントの相手方となる市場を分類すると、次の3つになります。
①アウトプット市場との関係:製品市場との関係(提供サービスも含む)
②インプット市場との関係:資本、労働、原材料などの市場との関係
③政府との関係:法律、規制、免許などの政府との関係
企業が、どの顧客を対象にして、どのような製品とサービスを販売しようと考えた時に、それに必要な資本はどこから調達するのか、人をどうやって雇うのか、材料調達は出来るのか、そして、その事業に国の規制などはあるか、などを複合的に考えた上で、戦う市場を選択する必要があります。
これらの市場にかかわるリスクの源泉は主に2つです。
*競争:競争相手の出方により自社の優位性が崩されるリスク
*事業環境の変化:例えば、新型コロナによる外出自粛、人口構成の変化、消費者行動の変化等のリスク
リスクは、上の3つの市場との関係性を忘れてはいけません。突然国の方針が変わる、というリスクも事業によっては大きなダメージを受けかねません。
これらのリスクに対する対応方法として2つあります。
a)リスク自体を小さくするために備える
b)リスクを他社へ負担してもらう
a)リスク自体を小さくするために、例えば季節の売上変動に対応できるようハイシーズンに利幅を多くとって利益を確保しておく、原料を安い時に調達しておく、先物為替でヘッジするなど、企業にとって色々あると思います。
b)リスクを他社に負担してもらうのも、一つの方法です。例えば、業務の一部をアウトソーシングする、事務所は賃貸にするなど、固定費を削減することは、これに当たるでしょう。
企業の規模によっては、このまま単一事業で拡大を続けるべきか、複数の事業に拡げていくべきか、考える必要があると思います。また、環境の変化によって、今まで強かった商品を諦めて、軸足を徐々に違う商品へ移行する必要があるかも知れません。
例えば、飲食業が新型コロナによって、店内飲食中心から宅配やテイクアウト中心に変わるというのもそうです。
複数の事業を検討する視点
①成長の経済:人の能力(学習能力)、やる気、若手社員の増加による平均人件費の低減が見込める場合
②範囲の経済:複数の事業を行うことで一つの事業のコストが割安になる場合
③リスクの分散:複数事業によりリスクを分散する場合
成長の経済が分かりにくいですが、一つ目は働いている人は仕事のノウハウを蓄積し業務スピードも上がります。それを活用するために事業を拡大していくという考えです。二つ目には「成長中の企業で働いている」というやる気がアップする点。もう一つが規模を拡大するために若手社員を増やすため、平均の人件費を抑えることができ、成長のメリットが発生するという考え方です。
「事業」としましたが、これを「商品」と置き換えて考えても良いと思います。一つの商品で頑張り続けるのか、複数の商品を販売するのか、そこにメリットがあるのか、という視点で考えて頂ければと思います。
市場を定めて、事業の範囲(単一か複数か)を決めていくと、次の問題は資源配分の問題です。単一の事業の場合でも、バリューチェーンのどこに配分するかが問題です。
バリューチェーン、例えば、商品企画、購買、製造、物流、マーケティング、販売、サービスなど企業の活動のどこに人モノ金をどの程度投入していくか、という視点です。
さらに複数の事業では、このバリューチェーンが複数になりますので、より大きな問題になってきます。バリューチェーン別に検討し、人モノ金の資源を共有化して使える場所、外部(アウトソーシング)を使うなど検討する必要があります。
ここで有名な考え方として、ボストンコンサルティングのポートフォリオマネジメントの考え方です。キャッシュフローの観点で、市場シェアと市場成長率を軸にして、スター、金のなる木、問題児、負け犬と分かりやすく分類する手法です。
私は何度も経験しましたが、理論的には素晴らしくとも、現場としては難しいことがあります。
よくあるのが、市場シェアと市場成長率についての細かなデータがない、データはあっても自社を比較するには市場の切り方が適切ではない、など問題です。
ただここで重要なのは、正確なデータはなくても、この考え方で自分の事業(または商品)を当てはめて考えてみることです。そうすることにより、どの事業に力を入れるべきかは大まかな見当はつくと思います。
参考)『ゼミナール経営学入門』伊丹敬之・加護野忠男 日本経済新聞社 ご興味のある方は本書をご一読ください。
Globis知見録「バリューチェーンとは」https://globis.jp/article/2126
Globis知見録「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」より https://globis.jp/article/2005
この機会に英語の勉強はどうですか?
Googleでも訳してくれますが、やはり多少は自分で話せると世界が広がります。