「あ~っつぅ・・・」
いつも通りの朝、いつも通りの着歴、いつもどおりの仕事量に、いつもどおりの朝食。俺は仕事のメモ用紙みたいな、積み重なっている紙に1つずつ眼をとおしてみる。途中で飽きて投げ出す。冷たい牛乳は好きじゃねえけど、このあつい夏には美味しく感じる。日差しが強い。けど窓を開けずにはいられない。この時期に限ってエアコンは故障しちまった。なんてこった。風通しもそんなによくないここで、どう暑さをしのごうか・・・そう思いながらも、木製の椅子に深く座って、天井をぼんやり眺めている。
「っ!?」
外から、音がした。多分、けっこうな重量のものが落ちた音。グシャッ、に近い。人の骨の折れる音とそっくりだ・・・。俺は椅子から起き上がり、机にほったらかしにしている上等な拳銃に手を伸ばす。弾の確認をして、壁に背をつけながらも、音の方向・・・中庭の方に言ってみる。
「んだよ、朝からハンターのお出ましかぁ?」
窓をおもいっきり開けて、銃をむける!
「・・・?」
そこにいたのは、腕が全身羽と化している、ちょっと暗めの青をした人がいた。そいつは羽の片方から血を流しつつも、起き上がろうとして起き上がれない状態にある。・・・追われている身なのか?なんかの殺人犯?それともハンターとして動いてて、返り討ちに?
「・・・誰だおめえは?名を名乗れ」
油断は禁物。俺はこの手の芝居に三度も騙された。もう騙されたくはねえ。俺は痛々しいそいつに銃口をむけたまんま、動かねえ。が、そいつは本当に満身創痍で、全く動きやしねえ。微かに口を動かしている。頭を相当酷く地面に打ったみてえだな、芸が細かすぎるぞ全く。
ピンポーン・・・。
と、突然俺の玄関音が鳴り始める。少し戸惑って、それから銃を太もものポケットに忍ばせてから、ドアをチェーンつけたまま開けてみた。
「・・・よぉ、おめえらか」
俺はその客人を見たことがある。密猟やってる連中だ。俺が好かん奴ら。三人くらいがなんか奮闘後のように息を荒らげてこっちに詰め寄っている。
「実は今な、狩りをしている途中でな・・・!」
「朝からごくろーさん」
「撃ち落としはできたんだよ!!」
「おめっとさん、」
「ただ、見失っちまってだな・・・ここらへんの近くに落ちてねえかなってよ・・・!!」
「しらねえよ?落ちたって何が?」
「青い羽を持っている棒人間が落ちてこなかったか?」
顔には出さなかったら、少し動揺した。ははーん、なるほどこいつら・・・あのトリみたいな野郎を撃ち落としたってのか。
「・・・見てねぇなぁ、俺は」
お前らが大っ嫌いなので、嘘をつく。もしかしたら人違いかもしんねぇしな。
「そっか、すまなかったな朝から!」
「いいってことよ、ごくろうさん」
俺は変なものをかばっちまったかもしんねぇ。でもあいつらの金になるくらいなら、俺の金にしてやる。そんな考え。
「・・・さて、と」
俺は庭の方に戻る。あのトリ野郎の腕は、もうトリの形をしていなかった。起き上がろうとしている頭に銃口をつきつける。
「お前は、なにもんだ?」
「・・・・・・俺は、さっき・・・撃ち落とされて、」
「そいつらは追っ払った。お前を金モンにしようと企んでたみたいだな」
「・・・助けて、くれたのか?」
助けて?・・・背中が痒くなることばだな。
「・・・あ~、俺あいつらが大っ嫌いだからな」
「・・・んだよ、そういうことか、よ」
そいつは立ち上がろうとした。俺がそれを抑えこむ。痛そうに顔を歪めた。
「何をする気だ?」
「こっから・・・立ち去るだけだ!なにも危害は加えない!俺をみろよ・・・!」
「・・・」
たしかに、今コイツは危害を加えられるような力もないみたいだ。いとも簡単に俺に抑えつけられている。こいつはかわいそうに見えてきた。
「・・・ここから、立ち去ればお前にも迷惑かからねえだろ・・・!」
乱暴に俺の腕から逃れ、背中を向ける。ふらふらとしては、行き場のないだろうに歩いてどこかへいこうとする。
「おい、まてよ」
俺はつい呼び止めてしまった。
「・・・んだよ、」
「お前、そのまんまじゃすぐに捕まっちまうぜ?」
「でも、お前はその密猟者に尋ねられるくらい・・・親しくされているんだろ?あんたが俺を売るって可能性も、拭えないわけだ」
「ご名答」
「信用できるかよ・・・!それじゃ、助けてくれてありがとな・・・」
「待てって・・・!」
俺はその男のもとに走って、肩を持つ。腕からドクドクと血が流れている。おそらく今立っているだけでも辛いはずだ。
「俺を金にしたいってんだろ!」
こいつも相当疑り深いみたいだ。俺はため息をついて、そいつの怪我している腕を見た。
「さわんなっ!!」
「かなり出てるじゃねぇか、血。止血してやる」
「ちょ、なんだって―――――」
俺はそいつの口を塞いだ。それから小声で喋る。
「かくまってやるってんだよ。まだ近くに奴らがいるかもしんねぇんだぞ?俺に従えないなら、そのまま外に出てあいつらに出くわし、生け捕り。・・・どっちがマシだ?」
「・・・本当に、信じていいんだな?」
「・・・」
こいつのアメジスト色をした瞳が、俺を映し出す。俺は強く言った。
「そこまで落ちてねぇよ。あいつらが嫌いつったろ?」
「・・・おっけ、あんたを信じるよ」
こいつの力がふっと抜け、俺に体重を預けてきた。本当に遠慮がねえ、じゃねえ。素直じゃないか、悪いやつに騙されやすい体質だな。
「・・・俺の名前は、ミント」
「ミント?可愛い名前じゃねぇか」
「うっせぇよ、お前は?」
俺は尋ねられることが基本的にない。なんてったって、顔パスの殺人鬼、仕事が速いで有名なんだ。殺人も、ハンターも、・・・狩りも。こいつは本当に、未知の世界から出てきたパターンなんだな。追われてここまで飛んできた迷い鳥か・・・?
「俺の名前は、ルナだ」
「ルナ・・・かっこいいじゃないか、ルナ。よろしくな、」
「・・・」
震え上がらない。無知ってのは恐ろしいな。
それと同じに、気持ちがなんかホッとしてる。こいつは俺が何か動作しようとも、きっと震えたりびくってなったりしないだろう。なんか嬉しいかもしれねえ。俺を俺として見ている。
「・・・おうよ、」
ミントがにわかに笑った。そのまま肩を預けて、足をひきずって俺の家にお招きする。
こうして、俺達の物語は始まった。
「ってててててっ・・・!!」
ミントの止血を急いだ。それから、おそらくかすり傷をつけているところの血は毒にまみれている可能性がある。俺はミントの腕から流れている血を拭き取り、それから消毒薬を当てた。傷口が広い。こいつは針で縫わないといけないかもしれねえ。
「こりゃ医者だな、待ってろ。近場の医者に電話をかけて・・・」
「医者はいらないっ!」
「・・・あん?」
「針、と糸は・・・?」
「なんだ?あるけどよ、動物用の糸も」
「それでいい、縫ってくれ、」
「あん?麻酔なしでこいつはキツイぞ??」
「いいから・・・!」
「・・・」
俺はしぶしぶ、ミントの言われたとおりに糸と針を持ってきた。そこそこ細くて小さな針だから、ピンセットでつまんで縫うのが普通。ミントは腕を出す。
「・・・やれよ、」
「へーいへー、」
俺は早速、ミントの腕にある傷口付近に針を通してみる。ミントが声を抑えて、痛がっている。俺も正直、生きている人にガチで針を通したことはない。ちょっと気分が悪い。早く済ませりゃ痛みも少ないだろうと、慎重に丁寧に、傷口を塞いでゆく。
「・・・平気か?」
「・・・あ、あぁ」
「そっか、よく我慢したな」
「・・・ピピカ族ってバレたら、まずいから」
「・・・?あぁ、それが羽を生やす族ってことか?」
「そうだ。俺達は羽が綺麗だから、自惚れじゃない。それのお陰で、ハンティングの的になっている」
そういえば、高級羽毛にピピカなんて言葉が載ってた気がする。なるほど、たしかに値が張る。
「なるほどなぁ・・・」
俺は背を向けて、台所に立つ。するとミントが俺のポケットに入っていた拳銃を素早く抜いて、俺の背中につきつけた。一瞬の出来事、見事な所作だった。
「・・・悪いな、まだお前に狂気を感じているんだ。ナイフを持ってるだけで、な」
「脅しか?台所の包丁でてめぇを調理できるとは思えねぇけど?w」
「そんなちっさなナイフでも、密猟者は俺たちの手羽先を上手に削ぎとったぞ?」
「そりゃ面白えな・・・」
俺の左腕、主に二の腕らへんの異変に気づいて後ずさるミント。いい動きだ。羽に頼っているわけでもないそうだ。そしてその動きは正解に近い。次の瞬間、俺はその左腕から伸びた鋼を後ろに、振り向くように振ったからだ。
「俺はそんな丁寧な削ぎ方?とか調理なんか知ったこっちゃねぇ、ただの殺人鬼だ。俺はなぁ、密猟者と違ってナイフさばきなんざ習得しようとも思っちゃいねぇ。俺は雑さ、仕事はちゃんとするけどな」
「・・・お前、なん、だ?」
「鋼族、はがねと書いてコウと読む。・・・お前と同じ、」
背中をまた向けて、冷蔵庫から適当に野菜を出して調理をしようとする。そのためにナイフを持ったことくらい、ミントもわかってるだろうとは思うが・・・拳銃を取られちまったからには下手な事はできねぇ。
「種族が絶滅に追いやられちまった身さ・・・。ま、俺らは地下の住民だから、生き残りは探そうと思えば探せる。・・・興味ねぇけどな」
「・・・・・・」
拳銃が机に置かれる音がした。ふと横を見ると、ミントが俺のナイフをもぎ取ってくる。それから俺が切ろうとした野菜に、ナイフを入れる。手付きが慣れているっぽいな。
「・・・!」
「別に?お前に親近感わいたわけじゃねぇし。お前に凶器を持たせたくはないから、俺が料理してやるってんだ・・・体力つけないと、飛べないしな」
そっちかよ。
「まずかったらぶん殴る」
「貴様らの舌が、どんなゲテモノ食ってるのかによるな、」
口が悪いな、コイツ。嫌いじゃないけどな。素直な証拠だ。俺に敵意むき出し、って感じ。警戒しすぎると疲れてそのうちこっちに身を委ねてくるだろうよ。
「んじゃ、任せたぜ」
軽く肩をたたいて、そのまんまリビングに戻った。それからテレビを伺う。テレビをつけた瞬間、俺達は息を飲むニュースを目の当たりにする。
『深海の森に住まうピピカ族の谷が、何者かによって侵食され、現在ピピカ族の住民全てが行方をくらましております』
「っ!?」
キッチンから抜け出て、こっちのソファの隣に来る。包丁を持って。「おいやめろっ!」と俺の注意もよそに、ミントはその包丁を持っている手をこっちに向けたまんま、テレビに釘付けになった。キャストが続ける。
『ピピカ族の情報はまだ一般客に公開されておりませんが、これはどういった種族の棒人間なのでしょうか?.・・・・・・この種族はですね、腕が羽になるのですよね。こう、肩から指の先端まで、大きな羽になっていきます。この羽根が非常に美しくて品質も高いため、よく羽毛にしたり刺繍の糸になったり、いろいろなところで活躍しているのです。・・・・・・その羽の取引というのは、どういったものでして?・・・・・・うちの地域に住んでいる織物業界のところでは、ピピカ族の中にはそういった価値を認めて、高い値で買収させてくれるピピカ族運営の企業もあります。・・・彼ら、自身の身でですか!・・・・・・そうですねぇ、もちろん、彼らの出せる分量のみ、取引として公平に行っております。あぁただし、他出身の企業では、非合法に密売を』
ブチッ。
テレビを俺が切った。ミントの眼は、怒りにメラメラ燃えている。いつ包丁を投げてテレビをおじゃんにするか、ってな感じだ。俺が深くため息をついて、料理をしろと言わんばかりに促した。
「もう飯、できたのか?」
「うっせぇよ!ちっ、丁度いいところだったのに・・・」
素直にキッチンに戻ってゆく。俺はそいつの料理の姿を、後ろからじっと見ていた。腕の動きがどうも気になる。ちょっと震えている。左の腕だ。野菜を押さえる手が微妙に、不安定になっている。味噌汁をつくろうとしているみたいだが、手が震えてうまくすくえそうにないぜ・・・。
「・・・まさか、」
俺は小声でそう呟いて、ミントの背中にひっつく。
「ちょっと!、」
ミントが何か言う前に、俺がそのミントの切った野菜を、まだ味の素突っ込んだ状態で沸騰しているお湯に、投入した。低い声で、ミントに話した。
「お前、左手」
手を隠すように後ろで組むミント。包丁をまな板の上において。
「筋切ってんじゃねぇのか・・・?」
「・・・っせぇよ・・・」
「もう俺がやる。お前はあっちでくたばってろ」
「・・・ああそうかい!」
ミントが声を張って、ソファに戻る。ずしんとそんなにない体重をおもいっきりかけて、座った。俺はそのまま味噌汁の様子を伺いつつ、野菜を適当にチョイスして切って、さっとドレッシングをかける。旬の魚もさばいて、そうだな塩焼きでもしてやろうか。
「・・・あんま考えても、溝にハマっちまうぜ?」
「!」
ミントの辛気臭い気配を感じる。おそらく自分の左腕のことを考えているんだろう。飛べるのだとか、飛べないのだとか・・・。
俺も、できるかできないか、悩んだ時期があったなぁ・・・そっくりだぜ、俺の若いころと。
「まっ、食えりゃあいけるだろ?お前が最初に力んでただろうがよ、」
食卓に食べ物を並べる。お腹が鳴る音が聞こえた。俺はすこし笑って、前に座っているミントを見た。
「さっさと体力つけて、こっから逃げちまえよ」
「っ・・・お前、どっちの味方なんだよ」
どっちの?俺は俺の味方だ。誰も味方になるもんか。
「さあ、な。成り行きってやつだ」
ソファに深々と体重をあずけて、上の空で喋った。
「ま、一つ言えるのは・・・俺の気が変わんねぇうちに、さっさとここから出て行けってこった」
「・・・・・・、言われなくても!」
と、いった瞬間にがっつくミント。いい食いっぷりだ。少々汚いけどな。
「お前、意外と世間知らずってわけじゃないんだな、」
「馬鹿言うなよっ!俺はいちおう、」
食べ物を飲み込む。お箸を俺にさしつつも、俺に怒鳴りつけた。
「こっちの世界にお世話になるかもしれないことを想定して、ある程度の知識は叩き込んだっ!!」
「・・・指し箸」
突っ込む。ミントの顔に恥がでた。
「お、俺にだってまだよくわかんねぇことがあるんだし・・・!」
野菜にお箸を突き刺して、口に放り込む。
「刺し箸、」
「ふ、服の身につけ方とか、買い物とか、それから計算とか・・・!」
「涙箸、」
「おっ、俺がどんな食べ方をしたって別にいいだろおっ!?!」
「咥え箸、くっははははっ!」
俺は肩を揺らして、ソファに身を預けて顔を覆って笑った。けっこう高らかに。ミントはおそらく赤面している。こいつはたまげた、世間知らずの卵ちゃんじゃねぇかよ。可愛いなぁったくぅ。
「わっ、笑うなーっ!!!」
「!」
俺はミントの口に指をたて、シッと静かにするように促した。
「なっ、んだよ・・・」
ミントも気配を感じ取ったみてぇだ。そのまま静かになっている。おりこうだ。切れがあるやつは大好きだ。俺はタンスの裏っかわにひっついているショットガンを手に取り。もういっこをミントに投げた。
「あっ、え?」
「構えろ。てめぇの身はてめぇで守れ」
「!」
「今回のコレ、多分俺だからな・・・」
先頭を切って、俺が最初に玄関裏に行く。背中を壁にぴったりくっつけて。ミントもそれらしい動きができている。
「お前、どこで?」
「飛べればいいだけじゃねぇしな、」
「気に入った・・・・・・っ!?伏せろっ!!」
ミントに飛びつき、頭を抑えた。その次の瞬間には、無数の銃弾が頭の上すれすれをかすっていった。俺の部屋は穴だらけ、せっかくの新築を壊されちまった。
「・・・、動くなよ・・・?」
俺はミントの耳元で、そう呟いた。ミントはそのまま、俺を信じきって黙る。・・・すげぇいい子だ。これなら組んでも構わない気がするな。そしてミントと俺は眼を閉じた。足音が近づいてくる。ざっと2、3人。俺をそんな人数・・・まぁ増やしたところで、俺の敵じゃないけどな。
「ほうら!奴らの言ったことなんてウソウソ!銃弾が効かねぇなんて、誰が言ったんだよっ!」
「こぉんなあっさり死なれちゃうとはなぁ~、俺らも張り切りすぎたか?」
「かもなっへへへ・・・」
下品な笑い声。俺の嫌いなタイプじゃん。首根っこを掴まれて、俺の体が持ち上がる。丁度したになっていたミントの姿が露わになった。
「あん?一人って話じゃなk」
そいつの耳の骨に向かって、俺の鋼が伸びる。ぶっさした。そのまんまそいつは綺麗に倒れる。あとの二人はビビって悲鳴を上げた。
「俺がそんな簡単にくたばるかってんだよぉバーカっ」
あとの二人も逃がしゃしねぇ。情けは無用、攻撃されたら30倍でやりかえせ。
「・・・くはっ、」
あー、最高。骨の割れる音も、内臓が弾ける音も、人の断末も、全部好き。
これだから殺人辞めらんねぇ、天職だ。俺の生き様だ。
「・・・安心しよろ、おめえは狩りゃしねぇ」
ミントが起き上がった。
「にしてはよ、俺が離されたのによく狸寝入りを続けられたなぁ、不安じゃなかったのか?」
ちょっと子供の扱いっぽく、そう尋ねた。
「・・・動くなよ、って言ったじゃん」
「!」
「武器もくれるようなあんたに、疑いはないよ」
しまった、状況があれだったのに、わざわざ武器を渡しちまったぁ~。あーあ、あのリボルバーお気に入りだったのに・・・。
「これは俺の武器、な?てめえの身はてめえで守るから、いいだろ?」
「・・・お、う。言ったな・・・」
今日は墓穴掘りまくり、なんだか惨めな気分だぜ・・・。
「・・・・・・・・・・・・くはっ、」
「?」
ミントがふっと、力が抜けるように笑った。
「んだよ?」
「あんたって、意外と人間臭いんだなっ!気に入った!」
「おめえが判断してんじゃねー・・・」
ミントのふわっとした笑顔に、俺はまじで決めた。こいつに、早く逃げてもらおう。こんなところにいちまったら、多分。
その笑顔も、全部台無しになっちまうだろうから。
「・・・ルナ、だったな?・・・あらためて、よろしく頼んだよ」
惨め、とか言ってたけど。あれは嘘。
本当は・・・・・・ひさびさの会話に、ちょっと弾んじまったかもな。
「・・・くはっ、いいぜ?よろしくなミント」
お前が空に帰るまで、面倒みてやるよ。