「・・・はぁ」
インサイトは気落ちしていた。
「IllLowのやつ、ちゃんと説得出来てたのかな・・・」
昨日の話し合いの後には、ギャングのボスがどんな実験体であったのかをグローア博士から、当時計画を行っていた関係者と一緒にヒアリングを行っていた。植え付けた目の正確な位置と、それによる奴の覚醒時の最大値、加えて性格の短期さ。どう聞いても怖じけついたら相手にやられっぱなしになりそうだ。サヴィーは怖いと感じたらテコとして動けなくなる。相性の悪さが伺える。
「サヴィー?今いる・・・?」
ドアをノックすると、返事はない。今日は完全な休日だ。だがこんな朝早くに出かける用事なんてなかったはずだ。
「?・・・姉さーん」
インサイトは何か聴いていないか、クレセントに聴いてみようとした。
「・・・っあ、」
扉から、サヴィーの声が聞こえた。どうやら姉の部屋にお邪魔しているようだ。
「サヴィーちゃんは、どこがよわいのかなあ?」「やぅ、触らないでっ」「嫌がってる表情もかわいいねー、やらしいには違いないんだろう?」「ひっ、!っ・・・ぁ」
インサイトは扉を思いっきりあけた。
「朝からなにしてんだこらあああ!!!」
「あ?」
クレセントの太ももに股がるように座り、背中に腕をまわして両手で握っている針をうなじに持ってくるサヴィーを見た。
「何って、あんた聴いたわよー?!サヴィーに色仕掛けのお仕事させるんですって?!もうさいてーい!!」
クレセントが豊満なバストでサヴィーを圧迫する。抱き締めているだけだ。
「こんな美人で色黒な、処女を」「しょ?!」
「仕方ないだろー!!あれしか方法がなかったんだし!ああんもうこれ!!」
資料を投げ渡すインサイト。
「ギャングのボスが実験されてた時の情報!目の位置頭に叩き込んで、クレセント姉さんにも手伝ってもらってね!じゃあ失礼するよ!!」
荒々しくでていくインサイト。サヴィーはきょとんとしていた。
「なんかさー、ハレンチさがないよねー」
「そ、そう言われても・・・」
「あんたの恥じらう姿はとんでもなく美味しいとは思うけど、時々はぐいぐいいかなくちゃー」
「でもぅ・・・」
「あたしだったらぶちゅーキス交わして完全に腕で相手の頭がっちり固定して、ブッ刺すけどねー」
「ぶちゅ?!!」
「ま、普通に考えて汚れたくないよねー。若いし」
「・・・」
姉さんは、そんな所作をなんでもない人に対して、やってきたんだよね。
「代わってあげよっか?」
「へっ?」
「こんな仕事したくてS.KILLERに入った訳じゃないでしょ?」
「・・・」
「やってもいいわよ?変装すれば男なんてぜんっぜん気づかないし!馬鹿なのよほんと、単細胞!」
「い、言い過ぎです」
階段から、単細胞で悪かったですねー!!とインサイトの声がした。
「有難うございます。でも、守られるだけじゃなくて。・・・かっこいい、仕事人になりたいです」
「・・・判ったわ、好きになさい」
ほっとため息をつきながら、笑うクレセント。サヴィーも、ぎこちなく笑った。
「あ、あんた笑顔も練習しなくちゃね。強ばってる顔は満天だから、そこやりましょーよ」
「ぅ、笑顔は苦手です」
いきなりくすぐらせるクレセント。やぁっと嫌がるがくすぐったさに動けなくなる。
「その顔!」「えっ」「その顔をキープできる訓練!一番いいのは素敵な思い出掘り起こしつつ頬をあげてみること」
クレセントとサヴィーのお色気作戦は続いた。インサイトはというと、急いで家を出た後、本社に直行してはサヴィーの承諾、本作戦の準備への施行を報告する。
「そうか、良かった」
ほっと一息をつくモウニング。IllLowは言い出した本人でも、やはり心配なものは変わりない。
「さて、サヴィーの顔が割れないような変装作りしようか」
インサイトはとある大きなコンピュータにアクセス。
「奴隷サイトのサーバーにアクセス。ここにサヴィーの偽情報を投稿。もちろん、国籍と名前、髪はヅラでも買ってつければいいよね。すべて偽装っと・・・」
「もう証明書発行してもらえたのか」
モウニングがインサイトの椅子にある背もたれに手をつき、後ろからその仕事っぷりを眺めている。ハスキーもその狭い事務所にくる。インスタントのスープものを、プラスチックのスプーンでかきまぜながら、壁にそわせてあるソファに座った。
「手作り、今までこれでばれたことないもんね」
「発行書のコードかぶったことねえのか?」
あちち、とスープを頂くハスキー。インサイトがくるりと椅子を回しては、ハスキーに言った。
「あんたさーまともなご飯くらい食べなさいよ」
「あ?いらねえよんなもん。ジョイだって仕事でほっとんど顔見ねえんだし、」
「男ってほんと、食べ物に疎いよねー」
「それお前が言えた台詞かよ?」
狭い事務所。ここで寝ずのサーバー潜りや、作戦の洗いだし、なんでもやってきた。より大きな部屋や訓練所は、知名度や仕事の質により投資できるようになった賜物なのだが。
「・・・懐かしいな、ここでの作業は」
モウニングが呟いた。その言葉にインサイトとハスキーがふっと笑う。
「心配ねえよ、モウニングさんよっ!」
ハスキーがソファから立ち上がり、肩をポンと叩いた。
「どんなにでっかい組織を相手してようが、俺たちは不滅だ」
「今までは3人で、それでもやってこれたんだし!」
「これからは、6人だな!」
「・・・ああ、」
3人は、同じ方向を見ている。
[9:18 バング・ラテージーダンスホール]
華やかな衣装。上品な音楽。美しい美女たち。そのなかで現場に到着した二人の影。一人はタキシードと、もう一人は真っ赤なドレス。肩がでていて、スカートがふわりと盛り上げられているタイプのもの。
「・・・ついたぞ、サヴィー」
タキシードの一人はその女性に声をかける。ガラス細工が輝くハイヒールの靴を鳴らして、降り立った。腕に手をまわし、高貴に歩いて行く。
「・・・」
手元が震えている彼女。手を握って耳打ちした。
「綺麗だよ」
彼女が頬を赤に染める。
「か、髪の毛っていいですよね。お洒落できて、可愛くて」
「サヴィーにそんなのはいらない、美人だから」
「止めてくださいよ・・・っ」
少し無邪気に笑う彼女。
『おおーーっ???』
無線から煽るような声を聴く。サヴィーが一気に不機嫌になった。
「隊長、俺の意図をちゃんと汲み取ってください」
『ほんと、ハスキーってデリカシーなさすぎ!!』
『こちら、モウニング。ハスキー、インサイトともに、それぞれポジションに立った』
「こちらIllLow。サヴィーともに、ダンスホール前に到着しました」
『ギャングはまだか?』
「今のところ、目撃しておりません」
『多分ダンス前に来るんじゃないかな?品定めだけをしに来る。じゃないと、いろんな奴隷が飼い慣らされたくて赴いちゃうし』
『金の亡者だな・・・』
『奴隷なんてそんなものだよ。体売るだけで好きなものがなんでも手に入るなら、バケモンだろうがなんだろうがお相手してるよ』
『女ってつえーなー』
「会場が開いた。これより潜入する」
『空から見てるからねサヴィー!』
「兄さんも黙ってて」
無線が切られた。ハスキーとモウニングは、フリーの警備員として建物内に潜入。インサイトは後輩にヘリを操作させ、そこから射撃援護を行う。もし不審な動きがあれば、直ちに通達することも彼の仕事に含まれる。そして、華やかな舞台に客を装って潜入しているのは、IllLowとサヴィー。
『でも仕事の話はさせてね?モウニング、ハスキーは警備員役。彼らのサポートと監視をします。特にサヴィーがどこに隠されてしまうのか、GPSを追って、もしくは立場を利用して施設の探索をお願い』
『『ラジャー』!』
『IllLow、貴方は彼女の恋人役。ダンスホールのど真ん中で、踊って、奴の目を惹く。もし奴の咎め叶わなかったら、作戦変更の通りに』
「了解しました、泣かせます」
『サヴィー!しっかり踊って、あたしかわいいよのと演じなさいよ?!』
「わかってる・・・」
『もし声をかけられなかったら、派手に喧嘩してIllLowから離れる。追っかけられたところで、あのギャングに助けてと持ちかける』
「無理です」『やるのよ』
「・・・はい、」
『大丈夫!ぜったい奴は食いついてくる!男の好みを充分に把握している俺のコーディネイトを信じて!』
「切って良いですか」
『以上!でも命優先。未知数のモンスターを相手に無理は禁物。出動!』
無線が切られた。と同時に、耳に入ってくるのは上品な音楽と変わる。ホールのなかでは、シルクに隠された丸い机に、銀色のお皿が料理をアピールしている。丸くて指紋ひとつもないグラスには、半透明で泡をたてているシャンパンが音を鳴らす。何処かではもう話がわき、グラスを交わしている顔見知りの集団ができている。が。
「おい、なんだあの娘は」「素晴らしいではないか。上品な衣装にしたたかな香り。黒い肌に輝くのはアメジストの瞳・・・!」「社交場の参入か?」「奴隷で買えやしないか?」「危険だぞ、出所の判らない品物は」「しかしよく見たまえ、あの美人!相当値のはる人材ではないか?」
「食いついてるぞ」
噂がサヴィーのことで持ちきりとなった。後からあとから、名刺交換を繰り返すIllLow。
「もしよろしければ、私のもとに下さらないでしょうか?傷物にはしません!お嬢さんに、満足のいくような生活を差し上げましょう」
「稼業は?」
「写真です!私はマダムに高価なドレスを広告するのでして、モデルを探しております。あなたの」
「どうかな、貴様のことは既に把握済みだ」
IllLowのスマホから出てきた写真を見て、その男は愕然とする。サヴィーは目を剃らした。
「貴様の本当の仕事は、国籍ごと買い取った美女たちのスプラッター写真を高値で売りさばく闇企業だ」
それからその男の顔を片手で持ち上げ、半笑いで声をかけた。
「悪いが、貴様のような雑な暴行愛狂者なんぞに手渡す義理はない」
どしゃ、と派手に音をたてて落ちる男。慌てて後退り、そのまま帰ってしまった。
「ああいったものに騙されて、みすみす売ってしまったところもいるだろう」
「・・・IllLowさんのような、売り手がいるとは思えません・・・」
「それもそうだな。俺たちの相手する奴隷買収者はそんな輩しかいない」
『でも大概、そういったところは潰れてくよ』
なんで兄さんが混じってくるの・・・。
『ちゃんと飼い主を選ぶところは伸びるし、人脈も広い』
「詳しいのですね、」
IllLowがそう言うと、ナレーションが入り。
「・・・来た」
ダンスホールの入場口には、3本の植物のような尻尾をはやしている、派手な服装をしている男がやってきた。隣に背の高い、仮面を身につけたボディガードをつけている。サングラスで目を隠している割には、いかつい雰囲気がでてきている。女性たちが一気に彼に詰め寄った。
「・・・」
なんでも買って貰いたい世帯主と、金まみれな奴の手中に収まりたいごろつきの集まりだ。サヴィーはかなり気落ちする。
「あんなのに、私は買われちゃうのですか」
「気を付けろ。姿かたちは我々と同じだが、耳や目は、野性動物並みのものだ」
こちらにもちらと目配せしている。ギャングのボスは奴隷バッチをつけている女性を把握しているらしい。視姦されているようで、気分が悪い。
「・・・時間だ」
ナレーションが響く。IllLowとサヴィーはホールの中心へ赴き、向かい合わせになる。
「・・・本番だな」
「衣装も決まっていると、違いますね。その」
手をとる彼。驚いて見上げる。
「この役を、俺が乗っ取れてよかった」
音楽が流れ始める。ともに、ペアとなっているそれぞれのタキシードと華が踊り始める。真っ赤なドレスがふわりと舞い、上から見ても一番の優雅さを纏っている。薄い生地の上から腰を持たれ、引き寄せられるサヴィー。胸が熱くなり、彼から目を離せなくなる。
「・・・どうした?」
「・・・頭がくらくらして」
「大丈夫か?」
「平気です、IllLowさん。でも、」
「でも?」
なんだか、ずっとこうしていたい。
「・・・惜しいか?」
「今度は、」
音楽が終わってしまった。長いようで短かった。インサイトたちは、それと平行して、ボスの様子を伺っていた。
「・・・ほう、あの子」
ボスが立ち上がった。真っ直ぐに向かった先は。
「いやあ~!素晴らしかったよ!君たちのダンス」
拍手しながら、サヴィーたちの所に真っ先に向かってきたのだ。
(食いついた・・・!)
監視役のベテラン3人が、心のなかでガッツポーズをした。ボスはそのまま会話をする。
「ところで、この子商品なんだね?」
「丁重に扱えるマスターでないと売れません」
「あーあー判ってる!見たよ?スプラッタカメラマンさんをバッシングしてたねー?」
IllLowは偽物の名刺を渡した。
「ふーん、聴いたことないな。どこから来たの?」
「名刺にも記名していないのは、口外できないからです。我々は買っていただいたものに対しては、お客様の責任に則って、窓口も電話も明かしておりません」
「そんだけ売り物に自信があるのか、それともクレーマー防止か?」
「一期一会です」
「・・・いくら?」
「おや、興味がございましたか」
本物の請求書がでてくる。
「今晩限り、彼女とお過ごししてから飼うかどうかは決めてください」
「ほーう、レンタル料は無料なんだね?」
彼女の手が取られる。サヴィーの緊張がマックスになった。彼らの話はまだ続く。
「んじゃあ一晩借りる。借り物なら傷物にはできないなー」
「よろしくお願いします」
それから、サヴィーを一度だけ見て、その場を立ち去った。充分にボスと彼女から離れてから、耳につけている無線に呼び掛ける。
「サヴィーを引き渡しました」
『お疲れちゃん!』
ハスキーが第一に返事をする。その次にモウニングが話しかけた。
『よくやった。ここまでは順調だが、問題なのは彼女との連絡方法がないことだ。無線の音を万が一ボスに拾われるわけにはいかない』
『それと、このホールの奥は個室だらけで、かなり風俗な場所もあるぜ。それで壁も厚い。どこの部屋で二人きりになるのか探索の仕様がないぜ』
「セキュリティは?」
『かなりがっちがち。その個室に通じる廊下一本に、見張りの警備員がいるけどギャングの手下みたい』
「ここの催しに、奴も関与していたと?」
『だな』
『周りに奴の手下もいるかもしれない』
「・・・個室に赴くのは、サヴィーのGPSが途切れてから、もしくは30分立っても連絡が途絶えていたなら、ですね」
彼女の身に付けているものは、ガラス細工のネックレス。それがGPS探知できる唯一のアイテム。これがなんらかの形で壊されるのならば、彼女の身に危険があったと同じだ。
『焦るなよーIllLow。お前が一番ダッシュしそうだぜww』
「ええ、それはもちろん」
俺より先にベッドインされたことは目の敵にさせてもらうぞ。
『お前悔しいんだな??』
『サヴィーをそんなふうにしか見てないの?!さいっていハスキー!!』
『だーって!かわいい年下の後輩だぜ?意識しないわけねーだろあんなナイスバディ!』
IllLowは無言で無線を切った。
[10:23 バング・ラテージープライベイトルーム]
「Fの1453で」
カウンター前。ガラスの棒にそれと同じ文字が掘られている。鍵がぶら下がっていた。それを女性に持たせ、自分のボディガードに声をかける。
「おい、」
ボディガードは近づいては話を聴く。
「お前はここの廊下から、怪しい奴は一切近づかせるな」
「怪しいって、二人組じゃないやつです?」
女性は耳を疑った。仮面をつけていた男性を見る。
「二人組なら、男同士だろうが通せ。俺が言いたいのはそういう意味じゃねえんだよ」
「ボスはそいつとヤっちゃうんです?俺の忠告全部無視じゃないですかー」
ボスのバラの茎のような、針だらけの尻尾がそいつの頬をひっぱたいた。仮面が裂け、反動で顔をそらすボディガード。
「うるさいぞ。今度は首落とすからな」
「・・・!」
女性の手が震えた。そのボスの態度より、もっと恐ろしい事実を知ってしまったからだった。殴られたボディガードは目だけを泳がせて、女性とボスに目を向けた。
「・・・顔に傷つけんなって、何度も言ったでしょう?」
「てめえは少しでもそのくそ生意気な態度を改めろ。彼女のようにな」
ボスは彼女の手を優しくとり、部屋へ向かった。
「あの人、は」
「ああ、一番よく使えるガードマンだ。こういった所でアイツは洒落てて、置いても問題ない。態度が気にくわないけどな」
このことを一刻も早く、兄さんたちに伝えないと・・・!でも、今は無線にスイッチを入れられない。きっと耳も人より聴こえるだろうし、目だって・・・。
「すみません、トイレはどちらに?」
「個室にあるよ」
「はいっ」
手段がない、どうすれば。その気にさせて、早く討ってしまえばそれで良い。失敗すれば、その分虐げられる時間が増える。でも。
「はーい、ここがお部屋だよ。サヴィーちゃん」
「お、お洒落・・・!」
ベッドの広さに驚いた。
「ここ本当は3人以上の部屋なんだけどね」
さ、さんぴー・・・?新たな扉をノックした気分だ。相手は特にすぐにことを始める様子もなく、上着をハンガーにかけて、そのまま布団に座る。携帯をつついては電話をかける。サヴィーはトイレに一度入り、深呼吸をした。
「・・・ふぅ、」
どうしよう。今実際に目の前にしてみると、怖い。怖くてたまらない。でもここで私が仕留めないと、計画に支障がきたされる。例え一緒にいるだけで、相手の位置情報が解るだけでもいいと言われたとしても。
「んんっ」
わたし、かわいい。落ち着いて。お姉ちゃんの教えてくれたわざ。兄さんが教えてくれた、やつの目の位置の情報。思い出して、落ち着いて。
私は、あなたのかわいいペット。
「ただいま戻りました」
「おかえり小鳥ちゃん」
ベッドにぐったり倒れているボス。
「お疲れですか?」
「サヴィーちゃんはマッサージできるか?」
「ええ。奴隷の名前、呼んでくださるのですね」
「まだ借りてるからさ、君は」
「嬉しいです」
ボスは背中を裏返すこともなく、仰向けに寝そべっていた。
「触れ、」
「やだ、えっちなんですね」
「えっちwwww んるせえよお前みたいな美人さん手に入ってちょいまいあがってんのwwww」
ちょろ。
「さあその手で俺を弄べ」
「んもう、しょうがないですねぇ・・・」
股間は触れない。絶対。
「おっほ、」
またがって相手に馬乗りをする。サヴィーの衣服に、やつの尻尾が切れ目をいれた。バラの針が逆立ち、衣服をずらしていった。
「せっかくの服がっ」
「うっほーやらしい下着だなあサヴィーちゃんやぁ♥」
「これ、高いんですよ?」
「もっと良い下着も服も、なんだって買ってやるぜ??俺のことを今晩で満足させられたらなあ」
配属決定、という意味か。
「私はわがままですよ?」
「金が枯渇することなんてねえからな!俺は5つの闇市のボスと、それを牛耳るマフィアン抱えてる政治家さんと関係もってるからな!」
詳しく聞きたい。
「そんな難しいお話、興味ないです」
「サヴィーちゃんには難しいかなー?」
「マフィアンくらい知ってますっ」
「良い子だねーぇ」
ボスが起き上がってはサヴィーの髪の毛に手をつける。
「お前みたいな美人さん初めて見たよ。どこから来たの?お母さんは?」
「覚えていません」
「薬漬けされたのか?あの紳士面してる男がなー。こわこわ」
「・・・」
今が一番のチャンス。サヴィーは腕を相手の脇下から通し、背中を直に触った。
「って、」「あっ、お目目潰ししちゃいましたか?!ごめんなさいっ!」
「いや皆そうするから良いけどさ?」
「胸板にもついてるんですね。・・・辛かったでしょう」
「色んな角度からサヴィーちゃん見れるから悪くないよ?」
ほんと、視姦のプロかしらね。サヴィーは身に付けている手袋を、相手の背中側から外した。相手はサヴィーの胸をむんずり掴んだ。顔を一瞬しかめるサヴィー。
「痛かった?」「痛いですっ」「ごめんよーう、」
表面を撫でるように揉み始める。感じてる場合じゃない。
「あっんっ!」
相手の指がサヴィーの股間を刺激し始めた。サヴィーにとっては、初めての快感。
「んんっ・・・!」
IllLowさん。助けて、早く。
「・・・やあっ」
相手が覆い被さってくる。その隙に、針を手元で準備しては背中を針が当たらないように撫であげ、肩まで到達した。
(いける!)
相手の背中にある目に写らないように、針を構える。
「・・・?」
ボスの行為がストップした。
「ほーう、サヴィーちゃん」
針を逆立てた尻尾が、サヴィーの両手首を掴んだ。今度は激痛に悲鳴をあげた。
「データで俺の目から避けて、しかも正確に構えてることは誉めてやろう?でもその情報、古いんじゃなーい?」
「ひぃ、あっ」
骨に食い込まれるほど、手首を締め付けられた。針を落とすサヴィー。ボスはサヴィーの衣服をぼろぼろに引き裂いてから、頬をつかんでは呟いた。
「実はなあ?・・・首の真後ろにも目玉組み込んでたんだよなー」
サヴィーの唯一身に付けていた、ガラス細工のネックレスが壊された。
「サヴィーのGPSが途絶えた、失敗だ」
『サヴィー!!』
「俺は裏からプレイルームを探り当てます」
『俺とモウニングは正規ルートわたってくぜ!!焦るなよIllLow!』
「解っています・・・!」
IllLowは上品な人たちの人だかりをすり抜け、ダンスホールの裏口に飛び出た。すると黒い衣服を着ている者が数名追いかけてきては、仮面を外した。
「っく!」
は虫類の顔をした生き物が、舌を伸ばしてきた。IllLowは足元を取られないように避け、ルート変更をした。ステンドグラスの窓に飛び込んだ。
「ぐえっ!?」
敵は喉を鳴らして立ち止まる。IllLowはというと、そこから手元に忍ばせていたフックつきの丈夫なゴムのロープをとばし、ガラスの壁に足をついていた。は虫類は始末したかと安心して戻っていった。
「・・・何故だ、」
『おい、大丈夫かIllLow!』
「ええ、落ちてはいません。しかし、どういったことか、ガードはたったの数名と聞いたはずなのですが」
『こっちにもその刺客はきてるぜ!今個室に繋がってる廊下から侵入しようとしてて、食い止められてる!どこ行ってもやつの手先がうろちょろしてる!』
無線側から、銃撃戦の激しい音も聞こえている。
『そんなはずはない!俺が調べた情報に間違いはなかった!それが全てだったなずなのに・・・!』
インサイトも無線に混じる。インサイトは遠くからの遠征しかできないため、今の状況がわからない。
『スパイか、』
モウニングが一言、そう言った。
『ごめいとーう♥』
低音な声、高貴な靴底を鳴らす人物。左腕には刃物を露出させ、ネクタイを緩めてはくらい廊下から顔をだした。ハスキーとモウニングは、その男と対面した。
『・・・る、な?』
ハスキーの声が無線から聴こえる。インサイトは嫌な予感がした。
「ま、って?今、なんて」
『ルナあああてめええええええ!!』
ハスキーがつっかかると同時に、ルナと呼ばれた男は廊下の壁を利用して高く飛び、左腕を降り下ろした。腕から延びていた白い刃物が氷柱のように大きく伸び、カーペットに刺さっては道を阻んだ。ハスキーは間一髪で止まった。そのまま突っ込んでいれば、串刺しだったろう。
「てんめえ裏切ったのかよ?!!おいサヴィーはどうしたよ?!」
「あー?今頃遊ばれてるとおもうぜー?かわいそうにそのうち舌を切られ、足を潰され、五体不満足にさせられてからお遊ばれるだろうよ?だるまプレイなんて云ってるぜ、ボスは」
モウニングが氷柱の間を一瞬で掻い潜り、ルナの首に刃物をいれた。が、そう簡単にやられてはくれまい。身を後ろにそらしては間一髪で避けられた。
「おおっとアブねえ」
モウニングが、低い姿勢の構えでじわりじわりと近づいてきた。
「貴様のざれ言はいらん。今ここで死ね」
ハスキーが冷や汗をかいた。モウニングが本気で切れている。彼が死ねと言うことは、本気で殺しにかかるという宣告だ。
「俺をだるまにしてくれるってーのな?モウニング」
「望むならそうしてやろう。だが死んでもらうぞ」
「そいつは厄介だなあ・・・」
ルナは闇にとけた。逃げたのだ。
「追うぞ、」「サヴィーちゃんのほう、いけよ」
ハスキーはそういった。モウニングの肩を持ち、ルナの追跡を阻止する。
「俺にまかせてくれ、モウニング。俺も許せねえけど、あいつに・・・まだ失望したくねえ!」
ハスキーは、本気だった。しばらく考えてから、答えた。
「・・・ならハスキー。お前に、任せよう。逃がすか仕留めるかは、お前で判断せよ」
モウニングは、サヴィーのGPSが途絶えた部屋へまっしぐらに進んでいった。ハスキーは深呼吸をしてから、ルナを追いかけた。
「くっそお待てやルナ!てめえミントのこと裏切るってのかよ!?」
広いホールにでた。ただそこも真っ暗闇で、真ん中にぽつりとライトがついている。
「はーん?俺がミントを裏切るわけねえだろー!」
ホールに響く声。姿が見えない。ハスキーはルナがでてくるのを待った。
「・・・じゃあ、サヴィーはなんだよ?」
「べつに俺は、どんな組織が攻めてくるのかは言ってねえぜ?」
闇からでてくる黒ずくめの男。タキシードがぴったりと体にあっている、一番かっこいい姿だ。左腕はオーダーメイドで作られたのか、半袖で作られている。
「ただ今日は厄介な敵さんが来るかもですよーって、伝えただけだぜ?全く相手にしてもらえなかったけどなw」
刃物が鋭い形に成形される。
「んで、俺を裁く?それとも見逃してくれる?裁くってんならやろーぜ?」
かつての、孤独の殺し屋らしい毒々しい笑顔を振る舞っている。両手を拡げ、洒落たように構えもせずに立っている。
「・・・殴る」
ハスキーは武器をおいた。これはある意味賭けに近い。ルナは眉毛をひそめた。
「てめえの鋼相手じゃ敵わねえ。なら、素手でてめえとやりあう!お前と俺、体力がどっちが上か!」
「・・・くはははっ!」
ルナが目頭を抑えて軽快に笑った。刃物をしまい、上着を一枚脱いでは手首をぼきぼきならし始める。そして呟いた。
「体力も技術も、俺のほうが上だっつーの」
ハスキーは突っ込んだ。ルナは構えたまま動かずに、相手の出方に会わせて抜け打ちをくらわす。ことごとく食らうハスキーだが。
「っしゃあ!」
瞬間的に、地に手をついて足を顔もとへ食らわそうとするハスキー。腕でガードするルナ。ハスキーは怯まず、腕ごとルナの腹筋に食らわした。後ずさるルナ。
「かってえなてめえ!」
ハスキーのボディビルドに、ルナのパンチはそうそうきつい訳でもない。対してルナは能力戦での戦いが多いため、ハスキーの拳に何度も耐えられるほど強くもない。本場の殺し屋と、フリーの殺し屋の差か。
(溝内でも狙うかー・・・)
心のなかでぼやきつつも、ルナは隙を狙おうとするが、ボクシングの構えからスタイルを外すことはないハスキー。半身がガードに固いのなら。
「狙いっ」
足元にフェイントをいれ、ハスキーの体勢を崩すルナ。
「っ・・・ぶ!」
ルナの重い拳が、ハスキーの溝にくいこんだ。それでも立ち上がっているハスキー。追い討ちをかけるように背中から蹴り落とすルナ。長い足が弧を描いてハスキーの背中に投下される。
「がはっ!」
ハスキーはそのまま地べたに伏せた。
「・・・ふはー!これで手柄もたてられたかなっ?後でボスに給料もらおーっと」
ルナが立ち去ろうとした。
「・・・んだよ、」
ハスキーが、ルナの片足の首を掴む。そして離さない。
「後始末は、ちゃんとしやがれよ・・・!」
ハスキーは起き上がれる状態ではない。だが、体力のことを考えれば、ものの5分床寝そべっていれば、また起き上がれるタフガイだ。
ルナはここでとどめを刺さなければ、侵略者の駆除をしたとは言えないのだ。
「・・・っせえよ、今回は見逃してんだ」
手を無視してどかそうとするが、握力が尋常じゃない。ほどけない。
「から、邪魔すんな!!!」
ルナの容赦ない蹴りが、ハスキーの腹を狙う。固い。汗まみれになりつつも、何度も蹴りまくった。だんだん、手の力が抜けてゆくのが解る。
「離せよっ!!」
解放された。ルナはぜえぜえ息をきらしつつも、動かなくなったハスキーに罵倒した。
「俺はてめえを殺したくてこんなことやってんじゃねえんだよ!・・・クソが!!」
言葉を吐き捨てて、そのまま消え失せた。
「へへっ、」
ハスキーの笑い声がこだました。
「くっそ痛え・・・ちくしょう」
しばらく 寝そべって動けなくなるハスキーの無線に流れてくる声。
『ルナって、ルナだったの?!あいつが?!なんでよ!』
インサイトだ。ハスキーはぼやいた。
「知らねえけど、俺を殺す気は・・・なかったぜ」
『じゃあなんで・・・?』
「理由は、わからねえけど・・・聴くしか、ねえじゃん」
『そっちにロボット行かせたから、あんたは救出されろ!それよりモウニングとIllLowは?!』
「あ?」
『IllLowと、連絡がつかないの・・・!』
ハスキーに、悪寒がはしった。
[12:08 バング・ラテージープライベイトルーム]
「きゃあ!」「誰だよ!?」「侵入者か!!」
ダンスホールの裏口。すぐに個室にたどり着く。サヴィーが恐らく居るであろう部屋に潜入。
「さ、」
紅い血。体に複数の切り傷。衣服をぼろぼろにされた愛する人。充分に強姦されたようでぐったりと倒れ、もはや生きているかも解らない。
「・・・は、」
IllLowのスコープ・アイが作動した。今までにない情報を広く集める。背中から音を聞いた。
「悪いけど、そいつは返品だ」
ギャングのボスが針だらけの尻尾を逆立て、IllLowの背中に突き立てる。
「俺を殺そうとしてたんだろ?どこの?お前だけでも見逃してやるよ、死にたく」
IllLowが無視して、奴の顔に刃物を突き立てた。
「俺も、大概だな」
そのまま相手より先手に突き刺した。右の目玉をくりぬいたのだ。相手の悲鳴がこだまする。
「てんめえ!!てんめえええええ!!!」
からだが固いバラの針でおおわれるボス。体型も大きくなってゆく。IllLowのスコープ・アイが熱を持ち、奴の体のすべての情報をすかして見た。持っているものは刃物一本のみ。
「てめえも八つ裂きにして」
IllLowが相手の台詞を聴く前に、今度は左目をくりぬいた。相手の顔には、空洞がふたつ。その空洞に、近くにおいてあったあつあつの酒をぶっかける。激痛に金切り声を挙げる化け物。
「聴け、」
刃物の血を降って落とす。
「貴様の体にある目は、全部で18。背中に7つ、胸板に1つ、右手の甲に1つ、両腕に6つ、うなじに1つ、足裏でそれぞれ2つだ」
「て、てめえ」
相手も、ただの敵ではないことをじわりじわり自覚した。全ての目の位置を、見せてもいないのに把握された。そして、この行為は。相手を指差して、こう宣告した。
「今度は背中の左肩、だ。じわりじわり、視界が捕られる恐怖に溺れるが良い」
生け捕りのことは、もう彼の頭からは消え失せていたのだった。
「・・・聴いたぜ」
建物と建物がお互いに寄りかかる場所。大規模のバラック。誰も住んでいない訳ではない。ここはサヴィーが最初の試験で、舞台となった街。その周辺の場所に、青い羽を閉じては、腕に戻す人影。もう1つの人影も、その人物に歩み寄る。
「裏切ったんだってな、ルナは」
「おいおい人聞きの悪いことをてめえw 」
ルナと呼ばれた男はけろっとした態度で、自分自身がなしていたことをなんとも思っていない。ミントは頭に来た。
「俺たちが、あんな奴等に負けてもいいってのかよ!!」
ルナの表情に真剣さがでてくる。深いため息をついてから話した。
「あのよ。モンスターギャングは俺の故郷だ。当時俺はガキで、その時のボスは俺を拾ってくれた。俺の種族は侵略されて、すむ場所を終われた。でも、そんな俺を孤児として引き取ってくれた、良い組織だったんだ」
ルナは鋼族。地下に住んでいて、本当は地上で生きることが難しいとされていた種族。地下デパートや地下電車。さまざまな理由により、彼の種族はもう僅かしかいない。それはミントも、同じ立場だった。
「だからって、チャムさんのことは?ギャングのボスがあんたの親だったなら、話つけて救出できたろ!」
「いやいや、今のボスは俺の知ってるボスじゃねえ。完全に、当時の感覚は薄れちまってる。弱いもの、異種と呼ばれた生き物たちの味方だったのが、だんだん勢力をつけはじめて。今じゃ怖いもの知らずだ。俺がそんなこと言っても、もう届きゃしねーよ」
「力ずくで従わせれねえなんて、ルナも知れたもんだな」
ルナの眉がひっそり動いた。
「で、じゃあ俺がギャングに食われてもいいってことなんだな?」
ルナがミントを囲むように壁に手をついた。背が低いミントを見下ろして、さっきより声のトーンを落として話す。
「俺はミントを守りたくて無茶してんだ」
「は?何処が守ってるんだよ?俺とあんたは今敵対関係で」
「ギャングは今いる異種達を集めようとしてる。力ずくでな。俺がやつらのす穴にいれば、お前を一番に守れるんだっての」
「・・・俺が弱いから、なんだな」
「違う。弱い強いの関係じゃねえ。組織の問題だ」
ミントは唇をかんで、涙をこらえた。
「ルナなんか、嫌いだ」
「嫌われようが、俺はお前を愛してる。守りたいんだ、わかってくれよ、」
彼の顔がミントに近づく。
「ミント」
と、ミントの携帯がなる。ルナの顔に手のひらをべちっとあわせた。
「街ん中で色気付くな!!」
「ここ廃墟じゃん、誰も来ねえよ」
ニヤニヤしながら答えられる。ミントは一度にらんでから、電話にでた。
「はい、俺です。・・・えっ?サヴィーさんが、失敗っ・・・?!」
ルナは相手がS.KILLERのメンツだと知る。回りを警戒しようと思ったが、ここに来ることは知られていない。
「・・・ええ、ルナのことは。・・・話しても無駄だと思いますよ。単細胞だし!」
「言うね~」
「・・・あいつが、あっちに寝返るくらいなら、」
深呼吸して、答えた。
「俺が阻止します」
「っ!!」
ルナは後ろからくる気配に、気がつかなかった。背中からけりを食らわされ、そのまま倒れた。鋼を出そうにも、何か特殊な注射を打たれたのか。
(鋼が・・・出せねえっ・・・!)
上から乗っかってくる奴に腕を包囲され、地べたに顔を押し付けられた。
「ってんめえ、ミント・・・!」
ミントは冷静な目で見下ろし、それからスマホを閉まった。
「悪いけど、俺がここにくると、モウニングさんたちに最初から予告しておいた。ルナは俺を信じて来てくれるだろうから」
ミントの後ろから、モウニングが表れた。無線に呼び掛ける。
「こちらモウニング。hi0のお手製鋼化不能の薬、聴いているぞ。これで重要参考人を捕獲できた」
トラックが近寄ってくる。
「重えなあルナ!わりいけど、しばらく本社で寝泊まりしてもらうぜー?」
押さえつけ、トラックの後ろにルナを誘導するハスキー。ルナはミントを見た。
「てんめえ、」
ルナが怒り狂ったように吠えた。
「裏切りやがったな?ああ!??」
ハスキーに加え、他の体力が高い後輩もルナを押さえつけながら、トラックに載せる。
「ミントおおおおおお!!!てえめええええええええ!!!裏切りやがったなあああああ!!答えろミントおおおおおお!!!」
トラックの後ろの扉が閉まった。
「・・・ご苦労だった」
モウニングがミントの肩に手をおく。ミントはぼろぼろ涙をおとした。
「・・・俺が弱いから、ルナは・・・俺が強かったら、こんな行動には・・・!ルナはっ!!」
「己の弱さを責めることは容易い。だがミント。お前はルナを信じる強さを持っている」
「・・・」
「私もまだ、ルナのことを信じたいが故の確保だ。・・・協力してくれて、感謝する」
モウニングはバイクに乗る。ミントは涙をむぐって、はいと返事した。
「だから、今度のギャング潜入のときは・・・呼んでください」
モウニングはその事に関して、苦い顔をしつつもミントに切り出した。
「実はもう、ギャングのボスは死んでしまった」
言葉を失った。ミントが何か言葉を返そうとする前に、更に話しかける。
「反省会を開く予定だ。ミントも出席するか?」
[2時間後S.KILLER本社-会議室]
「見事な失態だな」
会議室には、ハスキー、インサイト、hi0hit0how、モウニング。そこにミントも足を運び、席につく。モウニングは淡々と話した。
「ギャングのボスは生け捕りと言った筈だ。なぜ殺した、IllLow」
彼は黙ったまま、だが言葉を選んで話した。
「返す言葉もありません」
「それに加え、サヴィーの失態による後輩の痛手。ルナと対戦によりハスキーは怪我をした」
「怪我くらいどうってことねえよ。心よりはな」
ハスキーはふてぶてしく話した。辛気くさいのが嫌いなhi0は、ボリューム大きめに声を挙げる。
「まっ!ギャングが死んだとしても、ビーストの目は生命力があるからねっ!幸い、IllLowが綺麗にくり貫いてくれた から、瓶保管で今も生きてる」
「口がないのにどう聴くんだよ、ただのメンタマだろが」
ハスキーが噛みついた。
「君に説明して判るか知らないけど、ビーストの目は脳に代替する部分がある。そこに何が蓄積されていると思う?」
「知るかよ!」
「画像だよ」
辺りがhi0の話に耳を傾ける。
「しかも、拡大するだけ詳細が劣化する倍率は約400000倍。画像をつなげれば、最大185fpsの動画を作れる。データとして抜き出しできるよ」
「・・・奴が今まで歩いてきた場所、出会った人物、全てが解るのだな?」
モウニングが言葉を返した。
「人の記憶なんて曖昧で、嘘もつけるだろー?ビーストの目に頼ったほうが確実だと僕は思うんだけどねーっ★」
兆しが見えた。インサイトはまだ、落ち込んでいる。
「・・・俺と、hi0で画像解析をすればいいんだね。口の動きで、大抵の音は再現できるし・・・」
インサイトはそう呟いた。そのなよなよとした答え方に、ハスキーが苛立った。
「てめえ覚悟してたろーが?妹の失敗が想定外だったってのか?」
逆上して立ち上がるインサイト。
「うなじに目があったなんて想定外だったもんなあ?」
「あんたに何が解るっていうの??家族なんていない、あんたなんかに!!」
「インサイトさん」
IllLowが、初めて名前を呼んだ。ビックリして彼の方をみる。目を会わせることなく、続けて話した。
「俺には、インサイトさんの悲しみを知る術がありません。しかし、共に高校生活を過ごし、教育にあたった後輩です。可愛いことは存じております」
インサイトに、落ち着きがみられる。モウニングがしばらく間をおいてから、
「ハスキー。ルナのことで少々頭が煮えくり返っているのは判るが、インサイトに当たることは辞めていただきたい」
と、声をかけた。ハスキーは一度モウニングを伺って、冷静に返した。
「・・・だわな。頭冷やすわ」
ハスキーは一時退席した。インサイトも静かに座る。
「そだ、画像探索もかなりの膨大な情報量になることは目に見えてるけど、問題は妹さんのことだね~」
hi0はテンポを変えずに、淡々と話していった。手元にはサヴィーのカルテを持っている。
「妹さんの皮膚の炎症、ぶよぶよのは虫類みたいな病気になる事例がなくてねー。おそらくギャングたちはその感染病に耐性があったんだろうけど、それが今回の件でかかってしまった」
インサイトの落ち込んでいる理由が、それだった。
「似ている症状が、これまで発見されたウイルス、病原菌とあわせて15こ。しかもどれも事例が少なく、薬も特効薬らしきものが開発されておらず。ほとんどが何らかの形で、跡が残る」
hi0はニヤニヤしている。
「彼女の容姿に傷が残るのは、覚悟しといたほうがいーかもね★」
「画像探索、俺一人でやれないかな」
「は?あー別に。画像データをサーバーに一括落としてやって、そっちにデータを渡すことはできなくはないね~」
「俺一人でやる。サヴィーの炎症を直す薬の開発に、専念してほしい」
インサイトは本気だった。hi0は仕事が増えて嫌だなーといった顔つきで、ぶっきらぼうに話した。
「あー、いーよ。で、どこの目の情報がほしいんだ?」
「手の甲と、うなじの目」
「背中はいらないの?」
「裸族じゃなかっただろ?もらったって、ベッドシーンしかとれないでしょ」
インサイトにユーモラスが戻ってきた。hi0が舌打ちする。
「あーはいはい、やるやる。不眠不休の研究対象に、なりそーだね!」
hi0は立ち上がる。それから部屋を去ろうとして、立ち止まって補足した。
「あ、あと妹さんの感染病は問題ないよ。粘液からしか感染しないから、普通の看病していーからね」
ハスキーが入れ替わりに入ってきた。どかっと座り、話かける。
「で、ルナはどうするよ。椅子に縛ってそのまんまにしてるけどよ」
「壊されそうだな。逃げられる前に、何か良い情報を抜き取らねばな」
モウニングはそう答える。
「チーム編成を考えよう。サヴィーはしばらく休養をとってもらう。ハスキーはルナにアタックしてもらう。ミント、次は参加するか?」
「出ます!」
「頼んだ。インサイトは、ビーストの目が所持する膨大なデータの洗い出しを頼んだ。くれぐれも、睡眠はとりつつな」
「任せてよ」
「IllLow」
モウニングが声をかける。
「しばらく反省しろ。今度の潜入には、キャビットを代わりに使わす」
任務から外された。IllLowは肩をおとし、了承した。
「・・・ラジャー」
「罰として、サヴィーの看病を貴様がきっちり果たすんだ、いいな」
・・・・・・。
「師匠、」
「なんだ」
「それでは罰になりません!」
むしろ報酬です。
「何か問題でも?」
「大有りです」
しばらくそのやり取りは、ハスキーの腹を攻撃する。
「やめろやwwww腹筋、今リアルに力いれるとつらいんだからよお!!wwww」
「?、??」
ミントはわからなかった。
「病気もらっちゃうんじゃねーのっ?!」
ハスキーの言葉にインサイトが顔を赤らめて全否定した。
「ちょっとぉ!!IllLowに限ってそんなバカなヘマなんかしないから!あんたじゃあるまいし!!」
「人聞きが悪いじゃねーかよ!!」
IllLowはしぶしぶ、了解したのだった。
S.KILLER本部には、治療室もあれば保健室のような機能を果たす部屋もある。そこのふかふかのベッドの上で、苦しんでいる人物がいた。
「・・・!!!!」
悪夢に起こされる。体を突き抜けそうな痛みと、感じたくもない快感。切り傷が増えるだけの抱擁。喉を潰され、助けも言えず、ただ子供のように泣きじゃくる自分。
「・・・」
悲鳴のような声で泣いた。右の頬が、蛙の肌のようにぶよぶよしている。左の太腿もだ。切り傷はなんとか肌に傷跡が残らない程度に治ったにもかかわらず、この炎症は原因が判っていない。試験用の薬一週間分のものしか、頼れるものがない。
「・・・もう、嫌ぁ・・・」
膝を立てて、顔を埋めた。その時、ドアのノックオンを聴く。慌ててお布団にすっぽり入った。
「入るぞ」
IllLowの声だ。安心と共に、顔を見てほしくないと心のなかで葛藤が始まる。返事はしなかった。
「・・・サヴィー」
声なんか出したくなかった。寝ているふりをする。
「・・・今回の任務から、俺とサヴィーは外された」
どうして貴方も外されるの?
「だから、俺はサヴィーの看病にあたることになる」
「・・・兄さんは」
やっと声をだしてくれた。が、布団はかぶったままだった。
「死んだギャングが所持していた、ビーストの目から情報を抜き取る作業があるらしい。手を離せない」
「私のこと、なんとも思ってなさそうですね」
嫌みがでてくる。IllLowは至って真面目に答えた。
「hi0博士に、薬の研究に集中してもらいたいが故だ。けしてサヴィーのことを、どうとでもいいなんて思っていない」
正論なんて、今の私に聞く耳があるとでも思ってるの?
「・・・サヴィー」
IllLowの声に、はりがなくなった。
「顔を見せてほしい」
「嫌です」
「炎症のことか」
「・・・」
「世話が焼けるな」
足音が聞こえる。それは遠ざかっていった。最後に扉の閉まる音。
「・・・っ」
部屋からでて行ったらしい。サヴィーはまたぽとぽとと涙を流す。
「だって、こんな私・・・かわいくなんかっ・・・ふえっ・・・」
扉の開く音。サヴィーは気にも止めないで、ただ泣いていた。
「・・・薬はこれか」
「へっ?」
布団の隙間から、ちらと彼の方を見た。手には水を汲んだコップに、サヴィーが飲むべき錠剤。
「な、なに」
IllLowはそれを一回分、服用した。
「な?!なにやっているのですかっ?!!」
思わず布団から飛び出しては、彼の手を持っていた。
「あ、」
顔を見られた。右のほほを触られる。だがIllLowは顔色ひとつも変えないで、こう言った。
「その炎症は、粘液からしか感染することはないらしい」
「だ、だから何を・・・ひゃっ!!」
彼に押し倒される。布団がきしむ音。
「サンプルは2つ有ったほうが、医者も捗るだろう?」
サヴィーは悟った。激しく抵抗しようとするものの、IllLowの腕に手を取られて全く動けない。
「やめてっ!その薬だって、効果があるのか解らないんですよっ!?」
「これ以上苦しんでいるあなたを見ていられない」
顎をもたれ、唇を唇に重ねてきた。しかも、それに留まらず、舌を這わせてサヴィーの舌を探ってきた。
「んんっ、んんぅ・・・!」
フラッシュバックもなく、嫌な気分でもない。優しく、手厚く、弄ばれている。口を離すと、どちらかの唾液かわからない糸が弧をつくっていた。
「や、だ・・・病気、うつっちゃうの、にっ・・・」
涙がとまらず、ただ心のなかで苦しかったものが解れていくのを感じていた。サヴィーが一番恐れていたこと、彼と距離が開いてしまうという不安から、解放されたのだ。
「病人が二人いれば、其々に服用させる薬を変えられる。2倍の速さで、特効薬の薬の研究に挑んで貰える」
「・・・どう、して」
IllLowは言おうか悩んだが。
「俺は・・・あんなゲスに寝取られたことが悔しくて仕方がない!」
サヴィーの思考回路が止まった。顔を真っ赤にして、頬を手で覆った。IllLowが間が悪そうに顔を反らした。若干、火照っている。
「すまん。・・・大人げないことを、忘れてくれ・・・」
手短に去ろうとするIllLow。サヴィーは無意識に彼の服の裾を摘まんでいた。
「・・・?」
「・・・ちゃんと、感染したのですか」
私、何言ってるのかわからなくなってる。
「私は、キスだけはされなかったのですよ。だから、もっと違うところ。・・・わ、私が、めちゃくちゃにされちゃったとこ、ろを・・・」
声が震える。顔も赤くなる。例え右の頬が炎症を起こしていたとしてもサヴィーはかわいい。IllLowは戸惑った。
「待ってくれ」
電話をかける。
「司令官。率直に言います。サヴィーを俺の家で看病させて貰えませんか。・・・本社で万が一俺が感染したら、博士の読みは外れており、皆が危険に晒されるリスクがあります」
最もらしい話をする。
「ありがとうございます。ええ、食事は問題ありません。サヴィーに指導していただきます。では」
深呼吸をして、電話を切った。
「・・・司令官から承諾をもらった。拉致、させてもらうぞ」
不埒なだけに?なーんちゃって。
彼の家に訪ねるのは、今回が初めてだ。彼の家は、モノクロテイストの家具だらけ。そのためか、よく武器も背景に馴染んでいる。
「す、すごい徹底ぶり・・・」
「サヴィーほどおしゃれにできなくてな」
「十分お洒落ですっ!」
と、IllLowがおでこに触ってきた。
「体調は?」
「え、ええ・・・見た目が酷いですけど。体の症状は特に問題ありません」
「なら良い」
サヴィーが冷蔵庫を漁ってくる。何もほとんど入っていなかった。帰る前に買い物をして正解だ。
「今日はカレーですよ!」
「本格的だな。ルーを買わないで本場のパウダーを購入するとは」
「嫌なことが有ったときは、好きなものを食べて解消です!太るとか気にしないです!」
顔はそうでもなさそうだ。IllLowは台所に立っては料理を進め、サヴィーがソファーから指示をだす。かなり的確な指示だった。調味料も曖昧に返さないで、分量をすべてサラで言える。かなりの記憶力だ。
「すごいな、サヴィー。暗記は得意か?」
「えへへっ・・・国語とか、社会科とか・・・言葉で表すものは基本的に大好きです。でも、計算とか公式とか。そういうのはすごく苦手なんです」
「そうか。解らないところがあるのなら、訪ねてくると良い。解る範囲でなら、すぐに答えられる」
「手順を全部日本語で落とせますか?」
「もちろんだ」
「やった」
小さく喜んだ。カレーが本当に辛そうな色をしている。パウダーにはvery hotとしか書かれていない。水にはレモンを薄切りにしたものをつけている。辛い食べ物にはこれがさっぱりとした飲み物で調度良いらしい。
「・・・辛い」
「ほんとですか!わぁっ」
サヴィーが嬉しそうだ。
「・・・良かった」
「はい?」
「気持ちだけでも元気でいてもらえて」
IllLowが向い合わせで座ってくる。彼はまだそんなに笑うことは少ない。でもその分、真剣な表情で見てくる彼が好き。
「IllLowさんのお陰です・・・いただきますっ」
ご飯が進む。彼は辛いものに耐性がないのか、かなりゆっくり食べていた。レモンウォーターの減りが早い。
「はーっ、美味しかった!今日はごちそうさまでしたっ」
「お粗末様でした」
IllLowが片付けにはいる。サヴィーは彼のタンスをじっと見つめている。
「着たいものがあるなら、選んでくれ」
「あ、う、はいっ」
彼シャツ、憧れてたんですっ・・・!!
タンスをあけて、無難なワンポイントシャツを掘り出す。中身もきれいに整理されている。ここまで綺麗に畳んで入れられないサヴィーは少し気落ちした。
「私より几帳面ですねっ」
「暇なんだ。家にいると」
「暇でも、家事なんて真面目に出来ないです、私」
「それが普通だろう」
片付けが終わる。服が決まった彼女は、IllLowに先に入ってくださいと手で誘導した。先にお風呂に入らせてもらう。
「・・・あ、」
しまった、彼女の下着を買ってなかった。どうやって寝るつもりだ?まさかはかずに俺の布団に?とんでもない視線誘導ではないのか?
「手間が省けるか、脱がす楽しみが減るか」
いや違うだろ。・・・サヴィーはというと、そのつもりでシャツだけにしようとしている。
「丈が長い。これならぎりぎり隠せそう?」
と、選んでいる最中に、もう上がってきた。
「下着はどうする?」
「え、なくても大丈夫です・・・」
「それはいかん。俺が気が気でなくなる」
「み、見てみたいかなー、なんちゃって」
スコープアイの焦点をあわせる音。深くため息をついてから、良いだろうと了承した。
「2階で待っている。俺の個室で、一緒に寝てもらおう」
「は、はいっ」
今更ながら緊張してくるサヴィー。お風呂で自分の顔を見ると、やはりげんなりする。
「・・・でも、」
IllLowさんは、こんな私でも受け入れてくれた。嬉しい。
「んんーっ」
わたし、かわいい。
お風呂から上がる。2階へ向かった。彼の部屋には、1階でみかけた音楽プレイヤーよりも大きなスピーカーがついているものがおいてあった。かなりでかい。しかも幾つあるあたり、サラウンドになっている。
「ほとんどのCDは、これに対応していない。流せる曲が限られているのが現状だ」
「せ、切ないですね・・・」
兄さんの拘る並みに強いベクトル・・・。強い人って、皆極める癖があるの?
「本当にシャツ、一枚で来たんだな」
「だ、だって!」
顔を赤らめるサヴィー。IllLowはふかふかのベッドに腰かけている。準備万端。さあ来い、と言わんばかりの顔だ。戸惑って足も踏み出せないサヴィー。
「くしゅんっ」
「そんな格好なら風邪を引いてもおかしくないな。入ろう」
IllLowが手を差しのべてきた。サヴィーはとろんとした表情で、彼の手をとった。
「良い顔をしているな」
ほほに触れてくる。自然と彼に股がってのっかかっていた。ノーパンであるため、恥ずかしさはかなりのもの。
「サヴィー」
彼が優しく呼んだ。力強い腕で抱かれ、サヴィーは身動きすらとれない。大人しく彼に唇を奪われるしかなかった。耳から火がふく。彼の吐息が聞こえるだけで、心臓が跳ねあがる。
「・・・っぁ」
きもちいい。気がつくと、IllLowがサヴィーの服に手を忍び寄せては撫でている。胸を手のひらでおおきく撫でまわされている。体が震えた。
「やっ、」「・・・嫌か?」「んっ、そうじゃ、なくてっ・・・」
布団に隣どうしになるように寝かしつけられ、腰から左腕を通されがっちり片手で抱かれる。彼の固い胸板が、自身の胸とあたる。くすぐったい。
「やっぁん」
もう片手は、サヴィーのお尻を触っている。
「んっ」
掴まれ、揉まれ、指先は下へ。
サヴィーの股に指を這わせ、女の縁を撫でた。体がびくんと反応する。既に湿っている。
「欲しいみたいだな、」
「ちが、いますっんぅ・・・っ!」
何が違うんだ?と言われる。サヴィーは体をふるふる震わせながら、IllLowの指がいつ挿入されてしまうのか、ドキドキしながら待っていた。
「はっあん・・・い、やっ」
IllLowの太くてしなやかな指が、サヴィーのそこを圧迫したり、撫で回したり、口を開かせたり。不意打ちに指が入ってきた。ひゃんと声をあげるサヴィー。気持ちよさに敏感に反応している。
「まって、い、IllLowさんっ!」
「?」
「とっ、といれ・・・」
余計に包囲している腕に力が入ってきた。
「やっ!IllLowさんってば!」
さらに激しく指を中で動かしてきた。ピストンできるほどには、かなり滑りやすくなっている。
「ひぃっ、やだ、IllLowさっ・・・ああっ!」
IllLowは手で彼女が失禁してしまったのを感じ取った。息を弾ませて、ばかぁっと恥ずかしそうに言った。顔をおおっている。
「お布団、汚しちゃったじゃないですかっ・・・!んもぅ・・・っ」
「・・・っ、可愛い」
IllLowは自分の衣服を脱ぎ、その下で熱をもっていた物を露にした。サヴィーは見いった。
(お、おっきい・・・!)
「嫌なら今のうちだぞ」
と言っておきながら、IllLowの手際がよい。ローションを出しては自身のそれに塗りたくっている。サヴィーのその女の口にも塗ってくる。触れられるだけでも、快感が身体中に走ってくる。シーツを掴みながら、息を切らして耐えていた。
「んうぅっ・・・くだ、さいっ」
本来の目的も、自身の皮膚の炎症のことも、忘れていた。ただ、お互いが愛し合うだけでよかった。
「おいで、」
優しく声をかけられる。体をなんとか起こして、股がる。腰に触れてくる。彼が主。
「いいんだな?」
静かに、うなずいた。
「・・・っぁ、・・・はっ、あっ!」
ベッドの軋む音。繋がってから45分、ただキスを交わしてはタッチングしていた。それから、またサヴィーを寝かしつけ、腰を持ってはピストン運動をしはじめた。液体音が耳に入ってくる。ベッドも軋む。サヴィーは自分の声が出ないように耐えていた。だが、IllLowが突いてくる度に、振動で喉がどうしてもなってしまう。
「んっ、あっ、はっ・・・まっ、て!」
「待てない、良いところなんだ」
彼の汗が落ちてくる。彼にしがみついて、声をきゃんきゃんあげるだけで、この絶頂からは逃れなかった。
「んんんっ・・・!!?」
何か、中で。
「ま、って、IllLowさんっ・・・?!」
まって、これって・・・?
「妊娠はしない、俺はそう作られている」
「そ、そうじゃなくってっ・・・んぁっ」
中で彼がイッた。それがかなり気持ち良かった。どうしよう。もう一回、ほしい。
「ふぁっ、」
快感に耐えられず、またサヴィーもイッてしまう。IllLowが抜くと、液体が溢れてくる。それをじっと見ているIllLow。
「んやっ、見ないでっ・・・」
恥ずかしそうに手で隠す彼女。火がついた。
「やらしいな、サヴィー」
ちょっと誘ったつもりでした。
「んっ、は、あっ」
また入ってきては、抜き挿しを繰り返される。幸い、体力は普通の女性よりかなりある。恥ずかしさは忘れ、彼のやりたいように体を預けた。
「明日が怖いな、起きれなくなる」
「筋肉、痛・・・ですか?」
「司令官に知られたら、とんでもないお怒りを買う」
「ほっといてください、あんな兄はっ・・・」
2人は続きを楽しんだのだった。