意拳とは

1.意拳誕生のあらまし

意拳は、形意拳の達人であった郭雲深(かく うんしん)に師事した王向斎(おう こうさい)が、1925年前後に中国武術各派の精髄を研究・総合して創り上げた独創的な近代中国武術です。

王向斎は意拳の創始以前に、中国全土の多くの名人達と交流し、当時の第一級の資料を整理、研究をしました。意拳は技撃と健身の両面を重視しています。そのため、生理学、運動力学、心理学など各種の方面からの研究がなされています。迷信を廃し、科学的な方面からの研究がなされた拳法は中国で初めてであったので革命的であり、中国武術界に大きな影響を与えました。

意拳の誕生により、中国古来の民族分である“武術”はその本来の姿を取り戻したと言っても良いでしょう。

意拳は1940年代中期においては他派により“大成拳”とも称されましたが、後の1950年代後期、王向斎はこの呼称を正して、明確にこれを“意拳”と命名しています。

 

2.意拳の特徴

意拳は近年の中国武術界においては他の武術とは根本的に異なり、実に質朴で飾りのない新しい種類の拳法です。意拳には套路(型)や定まった構えというものはなく、また筋肉強化のためのトレーニングを必要以上に重視することもありません。

身体を動かすときは自然の規律に則り、特定の意念に沿って、練習中は高度に精神を集中することが要求されます。そして“全身協調”即ち全身が統一して動作することを重視し、ゆったりとした静かな動作を練習することに始まり、そこから素早く爆発的な動きへと至る過程へと進んでゆきます。

 

3.意拳の発展状況

意拳は1925年の成立以来、今日まで八十年余りしか経ていないにも関わらず、その発展には驚くべきものがあります。ことに近年においては意拳は北京を中心として中国大陸各地へと広がっており、現在北京だけでも数万人が意拳健康養生椿を練習しています。

そして意拳は広く世界各国の武術愛好家にも知られるようになり、今日ではアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ポルトガル、ドイツ、シンガポール、アルゼンチンそして日本において意拳を学ぶ団体が相次いで成立しています。

 

4.意拳の効用

①健康・養生 ②.技撃・自衛(護身)

意拳養生椿は人間の体質増強および各種慢性病の治療に効果があります。この養生站椿功は動作が簡単で、時と場所を選ばずいつでも練習ができるので、老若男女、身体虚弱者、病人等あらゆる人に適したものであり、慢性病に対する最良の治療法と言えます。

そして、技撃(実戦搏撃)もまた意拳を構成する非常に重要な要素です。意拳の技撃は各種站椿、摩擦歩、試力、推手、発力、試声などをある程度修得した上で行う相対実技練習の一つであり、程度に応じて初級・中級・上級の段階に応じて行われます。

初心者のうちはとにかく一生懸命練習を続けることで、比較的短期間に自分に対する自信を身に付けることができるし、またこの技術を護身に応用することもできます。意拳の技撃練習は、このように日常生活においても精神面、実用面の両方で意義を持つものです。

 

5.意拳の練習法

意拳の練習方法は、中国武術の練習法を基礎とし、これに現代の運動学を結合させたものです。初心者は、もっとも基礎的な段階と高度な段階とが互いに組み合わされた方法に基づいて練習を進めていきます。意拳の練習においては実践と理論が互いに強く結び付いており、練習者はまず理論を学んでそれを実践し、そして理論を把握した上で再び実践過程へ回帰するという方法をとります。こうして理論と実践とを交互に修得していくうちに練習者は螺旋を描くように技術を向上させてゆくことができるのです。