生態学こまば教室では、
主に若手研究者を招待して研究紹介をしていただき、議論を通して相互の交流を深めたいと思っております。
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今回は北海道大学の釜屋憲彦さんに、小型生物における構造物の構築・利用行動についてご講演いただきます。釜屋さんは、トビケラ幼虫や有殻アメーバを対象に、構造物の構築と利用を通じたニッチ構築や適応戦略を研究されています。生物が自ら環境を改変しながら生きる巧みな戦略を、ぜひお楽しみください。
生物は環境に受動的に適応するだけでなく、自ら構造物をつくり、それを利用することで、自身にとって有利な行動環境を形成している。こうした行動は、資源利用、身体性、ニッチ構築を考えるうえで重要である。本発表では、トビケラ幼虫と有殻アメーバを対象に、構造物をめぐる行動の柔軟性と適応戦略について紹介する。
まず、コバントビケラ(Anisocentropus kawamurai)幼虫の営巣行動を紹介する。本種は、水中の落葉を巣材と餌の双方に利用するため、資源利用にはトレードオフが生じうる。ブナ葉を用いた行動観察では、多くの個体が落葉後の乾燥期間が長い古い葉を巣材に、新しい葉を摂食に用いる傾向を示した。また、裁断時には側脈や主脈を避ける例が多く、葉の構造が切断方向や利用様式に影響している可能性が示唆された。さらに、営巣過程には、巣の一部を順次置き換える交互更新型と、古い巣をまとめて捨てて作り替える一括更新型の二様式が見られた。また、捨てられた巣材を他個体が再利用する行動も確認された。これらの結果は、幼虫が葉の状態や構造に応じて資源利用を柔軟に調整していることを示している。
有殻アメーバの行動についてもあわせて紹介する。有殻アメーバは、環境中から物質を取り込み、細胞外構造としての被殻を構築する原生生物である。近年、この被殻は乾燥や捕食者に対する防御にとどまらず、開口部に収まらない餌資源を、被殻と仮足の連携によって物理的に破砕し、摂食を補助する機能をもつ可能性も注目されている。われわれも殻の機能の多様性に着目し、行動学的観点から実験室内で観察と実験を進めてきた。その過程で、従来あまり想定されてこなかった機能的側面が見えつつある。とくに、殻が単なる保護構造ではなく、さまざまな課題場面において行動戦略の一部として機能している可能性を示唆する興味深い現象が観察されている。本発表では、こうした予備的知見を紹介しつつ、小さな生きものが構造物をどのように行動戦略へ組み込んでいるのかを議論したい。
当日は、コバントビケラの営巣動画や有殻アメーバの行動動画も共有する。構造物を「つくる」「使う」行動を進化・生態学的観点からどのように位置づけられるかについて、ご意見をいただければ幸いである。
参加申し込み締切:2026年4月29日(水)23:59 (対面参加者はお早めにご登録お願いします)