はじめに
パフォーマンスの周辺には、多くの宣言が渦巻いている。
既成の文化状況を撃つ超ジャンルな表現、近代以降のあり方を見直す新しいパラダイム、
もっとも今日的なライブアート、アクションの自由化現象など、
多様な価値観が混在化した20世紀末にふさわしい拡がりをもっている。
まるで歴史の中のブラックホールのように、我々が取り残してきた、人類の未来に向う
さまざまな問題がそこには浮上している。
それは、時に芸術と生活の原点を、これからのコミュニケーションのあり方を、
時に周辺を取り巻く環境の問題を、ハイテク社会における人間の可能性の問題をも包み込む。
この厖大な拡がりを多様な宣言をもつ「パフォーマンスの場」を、
文化の流行現象として歴史の彼方に追いやるか、
その渦巻く坩堝の中から明日へと開かれたパースペクティヴを構築してみせるか-----
いま、この変革の予感のただ中から、パフォーマティヴな「行為」と「知」が結集した、
一冊の書物が生まれた。
パフォーマンスを見、考え、行為するための、もうひとつの宣言である。
(初出「肉体言語」第12号/1985年6月)